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■SS
■夏の風物詩?
「カゲミツ・・・今日空いてるか?」
定時に近づいてきた頃、タマキから声をかけられた。
タマキからの誘いなら、空いていなくっても空けるに決まってる!
飲みの誘いかと思ったが、タマキから発せられた言葉は意外なものだった。
「一緒にTVみないか?」



「タマキ、こういう番組好きなの?」
コンビニで会計を済ませ、タマキの家へと並んで歩く途中にカゲミツは聞いてみた。
何やら今日は心霊特番をやるらしいのだが、それを一緒に見ないか・・・ということらしいのだ。
「うん、夏の風物詩って感じじゃないか?でも一人はさすがにキツくてさ」
よくいるよな、怖いのが苦手なくせにホラー映画好きというか・・・。
他の人間だったらこう答えるところだが、カゲミツは笑って頷くだけだった。
もちろんそれは、はにかみながら言うタマキの可愛さにノックアウト寸前だったからだ。

買ってきた弁当やつまみを並べてビールで乾杯をする。
ソファに並んで腰かけ、準備は万端だ。
「呪いの動画100選」とおどろおどろしいタイトルがつけられたその番組は、視聴者から寄せられた心霊動画をメインに、芸人やタレントの女の子が心霊スポットなどに出かけ、その様子をレポートすると言う番組構成のようだった。
カゲミツ自身は今まであまり見たことのない・・・というか、興味のない分野だったのだが。

「おわッ!タマキ見えた?今の!」
「確実に見えた!」

投稿されてきた動画には、普通ならありえないものが映っている。
それがどれも一般の視聴者の日常を映した動画に入り込んでいるのが余計に背筋を寒くさせる。


思いがけず番組に夢中になってしまっていたが、気がつけばタマキはぴったりとカゲミツにくっつき、更には腕まで掴んでいる。
そんなおいしい状況に改めて気付き、カゲミツの胸は高鳴った。
「うわ!・・・今のはやばい!」
ギュッとカゲミツの腕を掴む手に力が入る。
カゲミツは、そっと自分の腕を掴んでいるタマキの手に空いている自身の手を重ねた。
タマキに変化はない。
ジッとTVに見入っている。
これ幸いと、カゲミツは重ねた手をそのままにしていた。
ブラウン管からはアイドルの悲鳴が聞こえてくるが、カゲミツの耳には届いていなかった。

「あ〜怖かった!」
という言葉とは裏腹に、タマキの顔は晴れ晴れとしていた。
怖いもの好き、というのは本当らしい。
「けっこう面白かったな」
カゲミツはリモコンを手に取り新しいチャンネルへと変えた。
途端にバラエティ番組特有のけたたましい笑い声が響く。
カゲミツはタマキの隣で何本目かのビールを開けた。

重ねた手は離れてしまったが、タマキの隣にいることに幸せを感じる。
そんなカゲミツにタマキは笑顔を向けた。

「カゲミツ、今日泊まっていかないか?」



後日。

「やったな、カゲミツ!」
飛び切りの笑顔で祝福してくれるヒカルにカゲミツは苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「やってねぇよ」
あの時、タマキはこう続けた。
「お前は帰ってもヒカルはいるけど俺は一人なんだからな!」
結局は一人になるのが怖かったから・・・というのが本音らしいが、その時にはカゲミツの思考は完全に停止していた。
タマキと二人の夜は楽しいけれど理性との戦いでもあった。



けれどこれは大いなる一歩。



・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。

もし本当に怖くて一人でみたくないだけだったら誘うのは誰でもいいと思うんです。
カゲミツを誘った、というところがポイントで。
まだまだ無自覚です。うちのタマキは(笑)
でも、これは俗に言う「吊橋効果」も期待できるのでは?
ちなみに私も心霊特番大好きです!(笑)

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あきゅろす。
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