■SS
■12月24日
タマキとの待ち合わせ場所へと足早に歩く。
もうタマキは来ているだろうか。
いや、そもそも本当に来てくれるのだろうか。
あの約束は夢だったんじゃないだろうか。
12月24日。
待ち合わせの時計台の下にタマキを見つけた時、空は曇っていたけれど、俺の心は晴れ晴れとしていた。
街中赤と緑の色合いで溢れ、カップルがそこかしこにいる。
この日にタマキと一緒にいられるなんて夢みたいだ。
俺の隣にタマキがいる。
いかにもなんてデートコースは俺には考えられなかったけど、とりあえず飯食って、ダーツバーに行って・・・。
タマキがプレゼントと言って渡してくれたのはカシミアのマフラーだった。
結局皮モノのアクセはやめたといって小さく笑った。
「ワゴン車、冬場は寒くないか?…風邪ひかないようにな」
家を出るまで、たくさんのプレゼントをもらった。
それこそ、高価なものなんて数え切れないほど。
でも・・・、
「ありがとう。タマキからのプレゼントが何より嬉しい。マジ、今までもらったどんなものよりも一番だ」
タマキは大げさだよと言って焦っていたけど。
俺からはシンプルな純銀のネクタイピン。
いつも身につけていられるように。
本音を言うと指輪・・・なんてベタなものも考えたけど。
まあ、最初から指輪なんて重いかも?とか、これから先プレゼントする機会なんてたくさんあるだろ・・・と考えて思い当たった。
俺、まだタマキに自分の気持ち伝えてないんじゃ?
日はすっかり落ちて、街のイルミネーションが眩しい。
特にイルミネーションの有名なスポットへと移動しようと並んで歩いている最中も、俺は告白のことで頭が一杯だった。
願わくば。
イブに二人でいるんだし、俺の気持ちなんて言わなくてもわかるだろう?
・・・ということを期待したい。
言わなくて済むことなら。
ここまで考えた俺の脳裏にヒカルの「行動起こさないならもう諦めた方がいい」という言葉が蘇り、ふるふると頭を振った。
途端、すれ違った人にぶつかりそうになり、慌てて周りを見渡した。
人の多さはピークに達している。
「タマキ、はぐれないように・・・」
言いかけて振り返ると、タマキが俺のジャンパーの裾を掴んでいるのがわかった。
ああ、もう。
俺はバカだ、大バカだ!
「ごめん・・・」
小さく呟くと、俺はタマキの手を取り指を絡めた。
自分のことばっかりで、全然タマキを思いやっていない。
タマキの手は、冷たく、冷えていた。
鼻の頭も赤くなっている。
可愛いなあと思って見つめていると、タマキはきょとんとして「カゲミツ?」と聞いてきた。
うわぁっと歓声が上がり、何事かと思ったら、辺り一面に白く舞うものがある。
どうやらビルの屋上から人口雪を降らせるイベントが始まったらしい。
タマキ含め、その場にいる人間が夜空を仰ぎ見ている。
「タマキ、」
囁いて、軽く手を引き寄せ、タマキの唇へと俺のそれを重ねた。
「好きだよ。俺、タマキのことが、好きだ」
告げるとタマキは破願して俺の胸へと顔を埋めた。
そこかしこで流れるジングル・ベルの音にかき消されそうになりながらも、俺も・・・というタマキの声だけはしっかり耳に届いた。
Merry Christmas・*:..。o○☆*゚
゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜
前回の「11月24日」の続きです。
mizukiさんの高等テクにまんまとやられた香山ですw
イブにUPできてよかった・・・。
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