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■SS
■11月24日
忘れ物に気がついたのはワゴン車に戻ってきてからだった。

会社(と言っていいものか迷うが)の真下をねぐらにしているのも考えものだ。
いつでも呼び出し可能だし、忘れ物だってすぐに取りに行ける。
すなわち、四六時中「仕事しろ」と言われているようなものだ。

それをさほどイヤだと思っていない自分も考えものだが…。
ヒカルはもう一度、ミーティングルームへと戻るためにエレベーターへと向かった。

「カゲミツって…皮モノとか似合いそうだな?」
「皮?」
「レザーとかのアクセ」

扉を開けると、ソファに並んで座っているカゲミツとタマキの姿が目に入った。
他のメンバーの姿はない。
自分がミーティングルームを出た時にはまだ残っているメンバーもいたが、早々に帰ったのだろう。

ということは、今まで二人仲良く残っていたということだ。

「お、ヒカル、どうした?」
ヒカルの姿に気付き、カゲミツが声をかける。
「ちょっと忘れ物」

本棚へと向かうと、再びタマキがカゲミツに話しかける声が聞こえてきた。
最近、二人で話していることが多いと思う。
カゲミツにとっては嬉しいことこの上ないだろうが、更に仲を発展させたいと思っているのかどうかが疑問だ。
タマキと話せて嬉しい、この程度にしか思っていないだろう。

普通なら、そこからどう行動するかを考えるものだが…、生憎カゲミツにその思考回路はないらしい。
時々「カゲミツって頭いいけどバカだよな」とヒカルが思うのもその辺に由来する。

ヒカルが見たところ、タマキもカゲミツを憎からず思っているようなのに…。
相手の出方を伺っているような…、決定打が欲しくてカマをかけているようにも取れる。

さっきから聞いてると・・・カゲミツが欲しそうなものを聞いている感じだが・・・。

「なんで皮もの?」
「いや、何でってことはないんだけど・・・、カゲミツは好きなブランドとかってあるのかなあって・・・」
「皮もので?」
「いや、皮にこだわらず・・・」

ヒカルは思わず失笑した。
相手がど天然だと、なかなか上手くはいかないものだ。

「皮の小物…?とかで縛って欲しいとか?」

ゴッ!!

カゲミツの目の前に火花が散った。
タマキが頭突きを食らわしたのだ。

そのままタマキは憮然として出て行った。

「…なぁ、カゲミツ。お前がタマキと始めたいのは本当に恋なのか?」

成り行きを見守っていたヒカルが溜息をついた。

「いってぇ…!冗談のつもりだったのに…」
「だったらもう少し空気読め」

幸い鼻血は出ていないようだが、カゲミツは鼻筋を押さえ涙目になっていた。

「お前、本当にタマキが好きなの?」
「・・・なんだよ、いきなり」
「タマキと話せて嬉しい、だけじゃ何もならないってこと。そのうち他の奴にさらわれるぞ。そうなってから後悔しても遅いだろ?」

わかってるけど・・・とカゲミツは呟いた。

「でも、怖い」

拒絶されるのが。

拒絶されるくらいなら、今のままでいいとも思う。
だから、タマキと接していて期待しそうになる自分をもはぐらかしているのだ。

ヒカルは再度溜息をつき、

「お前・・・、自分のことばっかりで何にも見えなくなってないか?」

と言った。

「タマキが何で仕事終わってからまで話し込んでるんだよ。今日話してた内容聞いて何も気付かないわけ?」

「な・・・なにがだよ」

「お前が何が好きかとか、まるでリサーチじゃん。レザーアクセだって、もらってどう思うか聞きたかったんじゃないの?」

「・・・リサーチって、なんの」
「プレゼントとか?」
「なんでプレゼント?」
「予約したいんじゃないの?」

ポカンとしたままのカゲミツを見て、ヒカルは「お前これで行動起こさないならもう諦めた方がいいよ」と前置きした上で、

「来月の今日って、何の日だよ」

カゲミツがはじかれたようにヒカルを見た。

「・・・タマキ、追いかけてくる!」

カゲミツは乱暴にドアを開けると駆け足で出て行った。
廊下にバタバタという足音が響く。

エレベータに乗り、バンプアップへと続くドアを開けると・・・、タマキがいた。
息を切らせ、タマキに近付く。

「タマキ・・・、ごめん。俺、冗談のつもりで・・・、」

タマキは顔を伏せたままカゲミツを見ない。

「いや、謝るのもそうだけど、もっと大事なこと・・・、」

カゲミツは頬を掻き、しばらく呼吸を整えていたが、

「ら、来月の今日、空いてる?」

と、声を絞り出した。

タマキは少し泣きそうな瞳でカゲミツを見ると「・・・空いてる」と言った。

「じゃあ、予約させて。その日のタマキ。その・・・一緒に飯でも・・・」
「・・・・・・うん」

果たしてその日までに二人の仲は少しは進展するのか。

物陰から様子を伺っていたヒカルはとりあえず安心しつつも、新たなもどかしさを覚えた。


・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。

ヒカル視点とダメなカゲミツ。
バカな子ほど可愛いw

本当はもっと前に書いていて、本当に11/24にUPしたいと思っていました。
おっかしいな〜(汗)

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あきゅろす。
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