■SS
■瞳を閉じておいでよ(mizukiさんより頂物)
(カゲミツグッドエンド後)
どうしてこんなことになったのか──。
狂おしい抱擁を受け。
眩暈がしそうなキスを交わしながら。タマキはぼんやり考えた。
「……カゲミツが、冷たいんだ」
始めは沈黙を守り続けたタマキだったが、何杯目かのカクテルを飲みほしてようやく口を開いた。
「まさか…。タマキの気のせいだろ?」
トキオがタマキのピッチを気にしつつ、答える。
「そうだといいんだけど……」
都内のバー。
久しぶりにバンプアップに立ち寄ったら、いつもと様子の違うタマキが気になった。
トキオが飲みに誘って、話を聞いてみると、どうやらカゲミツとうまくいってないようだ。
(そいつは、願ったり叶ったりだけど……)
と思いかけ、あわててそれを否定する。
(一瞬でも、タマキの不幸を願うなんて…)
でも、本当のところそんなことを思っているのではない。
(カゲミツがタマキにそんな思いさせてるなんて…)
恋敵への憤りと、かすかな期待と、純粋に慰めてやりたい気持ちが混ざったような複雑な気持ちを抱きながら。
隣に座る想い人へともう一度視線を移す。
タマキはさらに注文を重ねている。
そろそろ止めたほうがよいかもしれない。
「どんな態度が、そう感じるの?」
「俺のほうから抱いてくれって言って…。抱いてもらった感じで」
(タマキに、そんなこと言われて抱かない方がおかしい)
「その後、全然抱いてくれないし」
(…というか、そういうこと一回あれば十分舞い上がる奴だよ…。カゲミツは)
「それに、俺は…カゲミツの初めての相手じゃないし」
(そんなこと気にする必要ないのに…)
「それに…、俺…カゲミツに『タマキって、ベッドの上だと、すげぇやらしーのな……』って………うっ……」
(あいつ! そんな事言ったのか!)
「お、俺……。カゲミツにすっげー淫乱だと思われた。……腰とかも動かしちゃったし……。声も……」
(腰を動かすなんて……素面のタマキには言えない台詞だよな…)
タマキの酔い加減が分かるというものだ。だけど、おかげでようやく話せるのなら酒の力も悪くない。
「そんなの……。好きな相手にされたら当たり前の反応だろ。俺だったら好きな相手に反応してもらえたらすごく嬉しいし。声だって出して欲しいよ…」
「それは一般論だよ。実際、目の当たりにしたらお前も引くよ…」
「引くわけないだろ…。それに一般論じゃないよ」
「え?」
「やだな…わかんない? タマキだったら、どんな姿でも、声だって……俺は嬉しいよ」
「トキオ」
「俺だったら、そんな事言わないし、そんな思いもさせないよ……」
「ホントに…?」
「証明してやろうか……」
「…………」
酔った、頭のままトキオの胸に頭を傾ける。
「……してくれる?」
「ああ…いくらでも」
そのまま、ホテルの部屋に連れられて……。
今こうやって、キスしているわけだけど。
「んっ……」
靴を履いたままベッドに押し倒される。
トキオの長い指が、タマキの髪の毛を掻き揚げながら頭を抱える。
もう片方の手は頬から、首筋、それから、ネクタイに掛かる。
その間も、口づけが止むことはない。
──自分に自信がなくて。
──カゲミツに愛されてる自信もなくて。
──自分の身体に、自己嫌悪していて。
トキオの言葉は嬉しかった。
こんなふうに肯定してほしかった。
そんなふうに愛されるのが望みだった。
だけど……
それは、本当にトキオでいいのか──?
自分が愛されたいのは──。
「駄目だ…トキオ。俺…お前の事を……」
「………」
「判ってる……。だから…瞳を閉じておいで」
濃厚なキスは、ますます深くなっていく。
「んん……」
舌を絡め取られ、思考もすべて絡め取られていく。
「トキ…オ…」
いくら瞳を閉じたとしても──
「やっぱり駄目だ!」
両手でトキオの胸を押しのけようとする。
「こんな風にしちゃ…駄目だ」
トキオはタマキを押えていた腕を緩め、上半身を起こした。
沈黙の中に、2人の荒い息づかいだけが響く。
「タマキ! ……いるのか! タマキ!」
そんな、沈黙を破ったのは、ドアを叩く音と、カゲミツの叫び声。
「カゲミツ!?」
「おっと……ぎりぎりセーフかな」
「なん……で?」
「部屋へ来る前に、俺が電話した『タマキを放っておいたら、俺がもらうよ』って。……場所もしっかり教えてね」
「トキオ…」
「あんだけ必死で駆け付けたんだから、許してやりなよ……。それに、自分の気持ち、もうわかってるだろ」
「うん……」
「……お前たちの仲直りに、一役買えてよかったよ」
「ごめん。……ありがとう」
駆け出すタマキ。
ドアを開けて、カゲミツの胸に飛び込むタマキの姿が見え──。
抱擁とキスシーンの手前でドアが閉まって見えなくなる。
「あれ以上見せられなくって幸いだな……」
そう呟きながら、仰向けにベッドに寝転がる。
「あー、…俺ってホントお人よしだな」
とんだ茶番劇だと思う。
はじめから結末は分かってるのに。
だけど……。
せずにはいられなかった。
「一瞬でも、身を預けてもらえたなら…それが本望かな」
この熱い抱擁と、口付けを、きっと永遠に忘れない。
トキオはそう思った。
(END)
・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。
mizukiさんとのメールのやり取りから図々しくリクエストしたお話です!
私の為に書いてくれました〜うふふ。
バービーボーイズって・・・知ってる人どのくらいいるでしょうか?
youtubeとかで拾えるかな?「瞳を閉じておいでよ」やんらしい曲なので是非聞いてみてくださいw
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