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木立の中ボクと魅ぃを乗せた自転車は下り坂を疾走していく、次々に風が髪を靡かせ後方へと過ぎ去っていく!みぃ〜〜☆みぃ〜〜〜☆
「さーて、飛ばしていくよ〜〜っ!」
言うが早いが、魅ぃは更にペダルを踏み込む!下り坂なのに、ブレーキという言葉は微塵もかんじられないっ!
みぃ〜〜☆危険なのです。みぃ〜〜〜☆
「魅ぃ〜!魅ぃっ!」
「ん〜〜?なに〜梨花ちゃん、恐い〜〜?でも急いでんなら、我慢我慢っ!あっはははは」
魅ぃは一瞬こちらを振り向いて、また前を向く!声は風の音に負けないくらい明るく大きい。
「みぃ〜〜っ違うのですっ!アクセル全開にしてほしいのです!」
「え〜〜っ!?ペース上げろってこと〜?」
魅ぃは前を向いたまま声を上げる。
「そうなのです。みぃ〜〜〜☆」
「いいの〜?おじさんの本気あり得ないほど早いよ?」
「それの方が楽しいのです」
「かぁ〜〜まったくとんだ命知らずがいたもんだよっ!!後で文句は聞かないよっ!!」
「魅ぃがいくらペースを上げてもぜ〜んぜんへっちゃらなのですよ〜!」
「了解!!じゃっいっくよ〜〜!どりゃああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
魅ぃの気合いとともに景色が怒濤のように流れ消えていく!視界に映った端から次々に!
みぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜☆
下り坂なんかあっという間!まばたきするくらいっ!
りゃあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!
平地なのにペースは変わらず!みぃ〜〜〜〜〜〜☆景色がまるで早送りなのです。魅ぃすごいのですよ〜〜
あああぁぁぁぁぁあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
電灯や田畑がピュンピュン横目に過ぎる!ピュンピュンピュンピュンみぃ〜〜〜〜〜…………み?……何か下り坂のときよりスピード上がってる気が……?それは心を揺らす不安な感覚。
風の音がバタバタと耳を打ち、心臓が後ろにとばされそうな圧力を感じる、坂の時には感じなかったのに………片手を試しに魅ぃの背中の外に出してみる。
みみみみみみみみみみみみみみみみみみっ!!みいいぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!
風っ!風がとんでもないのですっ!!手の感じた感触はまるで濁流!!油断したらすぐにでも自転車から振り落とされてしまいそう!
ボクは慌てて手を引っ込め、目を瞑って魅ぃの背中の服を両手で掴む!!
「魅ぃっ!!魅ぃ〜〜!もっとっ!もっとゆっくりお願いしますですっ!!」
「オッケー!もっとねっ!頑張ってみるよ!」
「みっ!?ちがうので」
「おりゃあぁぁぁぁぁぁああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
景色がスピードがぼ、暴力的なのです!みいいいぃぃっみいいいぃぃぃぃぃぃっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜みぃぃ〜〜………
「ほいっ到着〜!」
魅ぃの声とともに自転車の速度を徐々に落としていき、最後はブレーキでキィーーーッととまる……
境内へ上がる階段の前。ボクはバックをもってフラフラと自転車から降りた……心臓がまだパクパクなのです……
魅ぃは自転車からにこやかな笑顔で声をかける。
「どう梨花ちゃん?満足してくれた?」
「みぃ…路線のないジェットコースターに乗っている気分だったのですよ」
「そう?まぁ喜んでくれたならよかったよ。またいつでも乗せたげるから」
魅ぃはにこやかに笑う。ちょっと遠回しに言いすぎたのです。
でも、もう喋る元気もなくて、みぃ〜と一回鳴く。
魅ぃはそのまま、沙都子によろしく〜〜と言って走り去っていった。もちろんスピードは普通のスピード……
あんなことを頼んだボクがバカだった……もう二度とごめんなのです。……みぃ
そんなことを思いながら、階段をフラフラ登っていると、後ろから梨花〜梨花〜と声がする。振り向いてみると階段下から羽入がフラフラと飛んできていた。
「梨花ぁ〜、置いてかないでほしいのですよ……」
羽入はゼェゼェと息を荒げている……急いで追ってきたらしい……あのスピードについてくるのは、さすがに疲れたのだろう。
「みぃ、お疲れ様なのです」
羽入が横に並ぶのを待って声を掛ける。
「お疲れさま〜じゃないのですよっ!あんなにスピードをあげてっ!もし転んだら傷くらいじゃ済まないのですよっ!?」
「…とても怖かったのです……」
「まったく、二人ともブレーキが壊れて……あぅ…?梨花…今なんと言ったのですか…?」
「み…ぃ…怖かったのです、とてもとても怖かったのですよ…っ景色が景色じゃないのです、ボクの周りをヒュンヒュン飛びます。違う世界みたいに!落ちたら死んでしまいそうなのに、風がボクを落とそうとしますのです!ボクを落とそうと耳でゴウゴウ唸って脅かすのです……落ちるのが怖くて、魅ぃの服を必死に掴んでも…今度は地面がガタガタ揺れて自転車を倒そうとします…倒れたら死んでしまうのにガタガタ笑いながら自転車を震わせるのです…!ガタガタガタガタッ!ボクは目を瞑って堪えるしかできないっ………はにゅう…羽入っもう早いのは嫌なのですっ…イヤなのですよっ…」
羽入は涙をこらえるボクを見て、嬉しそうに顔を輝かせる。
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ〜〜〜〜☆梨花ぁやっとわかってくれたのですね、そうなのです。スピードという魔獣は梨花なんてパクっと爽快にミンチにしてしまうのですよ。あぅあぅあぅあぅ〜〜〜☆」
羽入は満面の笑顔……羽入はあの怖さを知らないから笑って居られるのです…
「羽入…笑いごとじゃないのです…本当に…本当に怖かったのですよ…笑わないでほしいのですよ…」
「あぅあぅ☆ごめんなさいです。でも今まで僕が何度注意しても聞かなかった……あんなにあんなに口を酸っぱくしても、僕が泣いてみせてもこれっぽっちも効果がなかったあの梨花がっ!!まさかスピードを怖がる時が来るなんて!!頬が緩むのを抑えきれないのです!!」
確かに今まで注意を聞かなかったけど、今日のは本当に怖かったから、慰めてほしいのにっ…慰めるどころかそんなに笑うなんてっ。
「みー羽入は人の不幸を笑うひどいやつなのですっ」
「あぅあぅ〜☆これに懲りたら二度とスピードを上げないようにっ、梨花ぁとても怖くてかわいそかわいそなのですよ。あぅあぅあぅあぅ〜☆」
そう言って、羽入は古手本家の方に逃げ去っていく……
「みぃ〜〜〜っ!!信じられないのです!」
追いかけたかったけど、どうしても走る気力がなくてボクは歩いて本家に向かう。
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