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好きなだけ……そういわれても、これだけあるとどこから手を付ければいいのか……
室内をぐるりと見渡して、とりあえず背の低く横に長い棚に目星を付ける。
目を付けた理由は簡単、ボクにも簡単に取りだすことができて楽そうだから。大きな棚だと上のほうに手が届かないから、取るとききっと苦労すると思う。

棚からマンガを取りだそうとして、あることに気づき魅ぃを見る。

「魅ぃ、できれば……その…何かバックを貸してほしいのです…持ってくるの忘れてしまったのですよ。…みぃ」

「えっああ、そうなの?ごめんごめん気づかなかったよ。んじゃ、持ってくるね」

魅ぃ軽く承諾すると駆け足で部屋を出ていく、ボクはその間に沙都子に持っていくマンガを選ぶことにした。
 沙都子の好きなジャンルは……戦うもの…そういう物語を見ると、トラップ作りのインスピレーションがわくみたいで、よくボクに「こういう場所ではこういうトラップをこう仕掛けた方が良さそうですわね、梨花はそう思いませんこと?」という感じに楽しそうに話してくれた。まず沙都子が一番読みたいのはそれだと思う。
……でも、大抵その後は新しいトラップの試作を作りたがるから、動けない入院中はちょっと酷かもしれない……持っていくのは少しにした方がいいかな……後で設計図を書くようのノートも渡さないと…
手近な本棚から、10冊くらい戦う話のマンガをとりだす。シリーズものだから、完結するまでの分。
後の残りは、沙都子にとって次に好きな、コメディや恋愛マンガを持っていくことに決め、本棚から取り出していく。
……その時ちょっとだけ、イタズラ心が働いて、沙都子の一番苦手なホラーを持っていきたくなってしまう。
フヨフヨと手を伸ばしかけたものの、沙都子の精神状態を考えて、ちゃんと自制する……できれば持っていきたいけど……

そんな風にマンガを選別していると、すぐに魅ぃが戻ってきた。
手には青と白の爽やかな色合いをしたスポーツバックを持っていた。……それは結構大きくて大量のマンガを入れるには丁度良さそうなサイズ。……魅ぃいい仕事してるのです。

「ほい、梨花ちゃん、これ使って」

魅ぃからスポーツバックを投げ渡される。

「みぃー☆ありがとうなのです。丁度いい大きさなのですよ」

「いいっていいって、それじゃあチャッチャッとマンガいれちゃって、自転車で家まで送るよ」
魅ぃは笑顔でそう提案してくれたけど、マンガ借りた上に送って貰うのは何だか悪い気がする。

「そこまではいいのですよ。ボク1人でもちゃんと持って帰れますです」

「遠慮はなし、それにこれは見舞いに行かないおじさんが唯一沙都子にしてやれることなんだからさ、送らせてってよ」

「魅ぃはお見舞いに行ってあげないのですか?」

「まぁね、それで、梨花ちゃんの選んだマンガはその山?」

と言って、魅ぃはボクがさっき集めた山に近づいて中身を確認する。
あっさり流されてしまったけど……聞き返せる感じではないから、魅ぃの質問に答えることにする。

「みぃ〜、そうなのです。沙都子の好きそうなものを選びましたのですよ」

「へ〜、沙都子こういうの好きなんだ。でもこのジャンルなら、多分こっちの方が面白いと思うよ」

魅ぃはそう言いながら、大きな棚からマンガを数冊ずつ纏めて取り出し畳の上に置いていく、ボクの背の届かない位置からもヒョイヒョイと……
魅ぃの背の高さが何だか羨ましい、前の世界と合わせればボクの方が年上なのに……
ボクも六年生の時は、今の魅ぃと同じ高さだったのかな…?それとも……結局見上げていた…?自分の体を見渡してみても、昔より小さい三年生の体にしかみえない、到底魅ぃには届きそうもなくて、考えるのをやめた。

「うん、まぁこんなもんかな」

一通りマンガを取り出したらしく魅ぃは満足したように呟く、畳の上には魅ぃの選んだ本の山があって、確認してみると冊数は違うものの各ジャンルのシリーズ数は同じだ……魅ぃは純粋に作品のグレードを上げてくれたらしい、魅ぃの薦めるマンガならまず間違いはないだろう。このまま持っていくことにする。

「では、これを持っていきますです」

「え、いいの?中身確認しないで?」

「みぃ〜、魅ぃの選んだものならきっと大丈夫なのですよ」

「そっ、そお?」
魅ぃは、なぜかすっとんきょうな声を上げる。
「みぃー」

「ま、まぁ任せときなって、自慢じゃないけど漫画のことなら他の追随を許さないからね、面白さはおじさんが保証するよ」

魅ぃは顔を強ばらせながらも、胸を拳で叩いた、ちょっと照れてるのかもしれない。
そんな魅ぃから視線をはずし、漫画をバックに入れつつ、ボクは部屋の中を見渡す……確かに、この漫画の量ならそうそう他の人に負けないだろうと思う、ここまで漫画を読んでる人が、雛見沢どころか興宮を含めてもいるかどうか……
それに、見るだけじゃなくて、漫画も自分で書いたこともあるって言っていたっけ。
そう考えるとあらためて魅ぃの凄さがわかる。
お琴に裁縫、家事全般に、ヘリコプター…無線に漫画に出版に……あとは…まだあった気がするけど、ちょっと思い出せない、でもとても色々なことができる。
……翻って自分のことを考えてみる。ボクにできることは……神社の掃除に、料理に…トラップの設置……えっとあとは……頭を撫でてあげる…くらい…
……ボクの方が、精神的に年上のはずなのに、こうしてみると、まるでボクが年下みたいだ。
魅ぃを誇らしく思うのと同時に、自分の不甲斐なさをあらためて思い知らされる。
……みぃー、もっとボクも頑張るのです。

そう決意を込めて手元を見たときには、すでにマンガをバックに入れ終わっていた。
ボクは魅ぃに笑顔を向ける。

「魅ぃ、ではお借りしますのです」

「ん、じゃあバック貸して、わたしが持つから」

「ありがとうなのです。にぱ〜〜☆」

ボクはお礼を述べ魅ぃにマンガの入ったバックを手渡す。
魅ぃはバックを快く受けとると、じゃっ行こっかと言って、部屋の外に向かって歩きだした。ボクもそれにトコトコとついていく……
廊下を通って、玄関を通って、庭を通って、門をでて、魅ぃの自転車の置き場についた。
魅ぃは、自転車の後ろにボクを乗せてくれる。二人乗りの上バックまで持つと危ないからスポーツバックはボクが持つことにした。

「じゃっ、梨花ちゃんの家に向かって出発しんこ〜〜っ!!!」

「みぃ〜〜〜☆」

爽やかな木洩れびを全身に浴びつつ、魅ぃは颯爽とペダルを漕ぎだした。







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あきゅろす。
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