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ボクの言葉に、魅ぃは苦笑いをして、木立の間を歩きながら鞄を一回大きく回す。

「うんまぁ、確かにそういう考えもあるんだけどね、ちょっとリスクが多いから、私は取りたくないかな」

「リスク……?信じてくれなくて、頭が変に思われるとかですか?」

「あっはははははは!!そっかそっか、頭が変かー!全く思いつかなかったよ。でもなるほどねぇ、確かにおじさんでもそう思うかもしんない」

なにが可笑しかったのかはわからなかったけど、魅ぃはさも楽しそうに笑い声をあげる。笑ったためか、魅ぃの目尻には涙が溜まっていた。
……ちょっと笑いすぎなのです……認めてくれたとはいえ、そう笑われると複雑な気分だ……
でもどうやら魅ぃの言うリスクは違うものらしい。

「魅ぃの言うリスクは違うのですか?」

魅ぃは目尻に溜まった涙を片手で拭いて、少し笑いの残った弾んだ声で答える。

「まぁね〜〜おじさん的にはさ、その友達の受け取り方が恐いんだよ」

「みー?やっぱり信じてくれるかどうかですか?」

「ううん、私にとって恐いのは梨花ちゃんの言ってることの後……信じてくれるのは前提にしてね」

「あと……?」

「そーそー、未来にある大きな不幸なんか知らされて、その子はどうなっちゃうのかな〜ってね」

あっそうか……魅ぃの言いたいこと何となくわかった気がする……ボクはその考えを魅ぃに伝えることにする。

「みー、確かに不幸が変えられる可能性は薄いのです。頑張っても変えられず絶望する可能性もあります。でもボクとしては戦うチャンスすらあげないのはどうかと思うのですよ」

魅ぃは、ん〜、と言いながら、困ったようにボクを見る……ちがったみたいだ。

「何か論点が違うんだよね〜、まっ簡単に言っちゃうとさ、大きな不幸と戦える人ばかりじゃないってこと」

「みー?」

ちょっと分からなくって小首を傾げる。

「あぁごめんごめん、分かりずらかった?……もう少し分かりやすくすると……そうだね〜……あっこれなら分かりやすいか……大きな不幸があったら梨花ちゃんだったら、未来を変えるために戦うよね?」

「みー」

「うん、でもね、世の中には戦う前に諦めちゃう人もいるものなんだよね。もうダメだ〜っこの世の終わりだぁ〜〜って感じで」

「諦めてしまうのですか?」

「そうだよ、未来を悲嘆して震えてみたり、捨て鉢になって自堕落に過ごしてみたりとか色々かな……まぁそういう人でも、ある程度の不幸なら戦えるんだけど、変えるのが難しいような大きな不幸だったら、苦しむだけってわけ。ん〜私もどちらかと言えばこのタイプに当たるね、変える方策が立てれればいいけど、そうじゃないと、ちょっと自信ないかな」

魅ぃはそう言うと自虐的に笑ってみせ言葉を続ける。

「で、そういう人にとっては、未来のおっきな不幸なんて知らされない方が幸福なわけ、教えられなければ、その時まで安心して過ごすことができるでしょ?」

なるほど、未来を教えても落ち込むだけなら、教える意味はないということか……うん、それならボクにも分かる。

「では、逆に言えば、落ち込まないような人になら、魅ぃは教えるのですか?」

「ん〜どうだろうね〜」

「みー?教えてあげないのですか?」

「あー勘違いしないでほしいんだけど、そりゃ私だって、梨花ちゃんの言うように絶対に落ち込まないって分かってんなら話すよ……でもね、それがまた難しいんだな〜」

それが難しい…?ちょっとよくわからなくて、羽入に小声で話し掛ける。

「ボクには魅ぃの言ってることがよく分からないのですよ。羽入はどうですか?」

「あぅ、僕にもサッパリなのです。何がなにやら」

羽入はそう言って肩を竦める。よかった。分からないのはボクだけじゃないみたいだ。
安心したところで、魅ぃの方に向きなおり先を促すことにする。

「魅ぃ、それで何が難しいのですか?」

「あ〜見極めるのがだよ、落ち込む人か落ち込まない人かの見極め」

魅ぃは楽しそうに答える、とても説明したいみたいだ。だけど、見極め……そんなに難しい気はしないけど

「そんなに難しいのですか?ボクにはとても簡単そうに思えるのです。落ち込みにくい明るい人なら見ればすぐにわかるのですよ」

魅ぃはチッチッチッと指を自分の口の前で振る。

「その考えが甘いんだよね〜、この場合、普段の様子はあんまり関係ないんだ、明る〜くバリバリと意志力の強い人でも、不幸を知らされたら落ち込んじゃって、昨日までとは別人みたいにシュンとしちゃったり、逆に普段は小さなことで落ち込んでいるのに、急に張りきっちゃて不幸に立ち向かって行ったり、これがまぁ変わっちゃうの何のって」

「みー、外から見て分からないなら、本人に聞いてみればいいのですよ。未来の不幸なことと戦うかどうか」

「いやいや、こういうことってのはさ、本人すらも分からないもんなんだよ。大体の人は自分では大丈夫だと思っているだろうけど、実際になった時には全然べつもんでさ、本人の言葉くらいじゃ危険だと思うんだよね〜、まっ梨花ちゃんの言ったように、頭が変だと思われる可能性もあるし、おじさんは怖くて言えないかな」

魅ぃはそう言うとカラカラと笑ってみせる。

……なるほどそういう考えもあるのか。
ボクは、未来が変えられるのかどうか、もしくは教えてちゃんと信じてくれるかどうかだけで悩んでいたけど、沙都子たちの反応の方は考えていなかった。
……未来が変えられるかも分からず、信じてくれるかも沙都子たちの反応も分からない、今はまだ分からないことだらけ、そうすると未来を教えるのは、しばらくはやめておいた方がいいだろう。

結局は振り出しに戻ったことがわかり、心に落胆の思いが広がる。
羽入もボクの思いを察したのか、心配そうにボクの顔を覗き込んでいた。

「みー、大丈夫なのです。沙都子たちにしてあげられることが無くて、がっかりしただけなのですよ」

「……それなら梨花、僕は一つだけ、沙都子にしてあげられることを思いついたのです」

「どんなことですか?」








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あきゅろす。
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