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そうだ…未来のことを教えてあげたら……?それはボクにしか出来ないことだし、きっと沙都子の役にも立つ……例えば…………えっと……例えば…………………………………………………ん〜〜ダメだ、何も浮かんでこない。
よく考えたらボク自身、何月何日に何が起こるかはよく覚えてない、実際に起きてから、あっこんなこともあったっけ、という感じだ。まぁそれでも一応、誕生会とか印象に残った日なら覚えてるけど、それじゃ教えても大した役には立たないだろうし。
となると、あとは本当に大きな事件くらいか…例えば…2年後、悟史が居なくなるとか……
頭を振って、すぐに考えを追い出す。
ダメダメこんなこと沙都子に言えるわけない……それに例え教えたとしても……そのくらいじゃきっと結末は変えられない。
……悟史がいなくなった原因は、悟史が叔母を殺害してしまい、疑う警察から逃げるための高跳び……だったはず。
……悟史が叔母を殺害したことの確証はないけど、でも、その当時の悟史の様子を考えるとまずまちがいないこと。
……叔母の殺害のあった綿流しの当日にも、悟史は何故か用事があるとかで来なかったし、何よりその前日までの悟史の様子には鬼気迫るものがあった。
普段の物静かな彼からは考えられない、叔母を殺害をしてもおかしく無いほどの……殺意…一応叔母殺しの犯人は他に捕まったって言ってたけど、魅ぃの様子から察するに、園崎家が手を回してくれたのだろうと思う。
だから悟史が犯人にまちがいはない。
そしてそれに悟史を駆り立てた原因は叔父と叔母によるひどい虐めだから……虐めをなくさないと悟史は居なくなってしまうということになる。
その当時者である沙都子や悟史に未来を教えても、変えることはとても難しい、もちろん部外者に過ぎないボクにも………
自分の無力さを悟り心にまた落胆が広がる。その時視界の前で手が振られる。

「おーい梨花ちゃん、ちゃんと見えてる?」

「みぃ」

「まーったく、急に止まって動かなくなるから焦っちゃったよ。声掛けても反応しないし」

魅ぃはちょっと怒ったような口調だ。考えごとして悪かったかもしれない、素直に謝ることにする。

「ごめんなさいです。魅ぃ」

「沙都子の入院で悩むのはわかるけどさ、梨花ちゃんは悩みすぎだって、一人であんまり悩んでも解決策なんて出ないんだからさ、とっとと誰かに相談すればいいんだよ。それでね…いい?もし、相談できないような悩みならなるべく外には出さないようにするっ、周りに心配掛けるだけだからね。わかった梨花ちゃん?」

「みー」

頷くと魅ぃにバンバンと背中を叩かれる。

「素直でよろしい!おじさんだって今ちょーっとだけ悩んでるけど、全然見えないでしょ?そういうことだよ、悩んでもしょうがないときは笑顔笑顔ってね」

そう言って、魅ぃはまたボクに笑い掛ける、その表情からは確かに悩んでる雰囲気は感じられない…魅ぃの言うとおりボクは表情に出しすぎてるのかもしれない。

辺りを見渡すと、いつの間にやら、畦道は終わって水車小屋のところに着いていた。魅ぃの家まではそろそろの地点だ。
水車小屋の隣には小さな川があり、そこからもれでるサラサラと清らかな音が鼓膜を包み、ボクの気持ちを落ち着かせてくれる。
………相談か…、ボクは魅ぃの方を見る。
魅ぃはさっき説教染みたことをしたのが恥ずかしくなったのか、小さな石を照れ臭そうに蹴っ飛ばしていた。

「魅ぃ、もしも未来が分かってたら、魅ぃならどうしますか?」

「えっ?突然なに?」

「いいから教えて欲しいのです」

「うんまあいいけど、私だったらね、未来が分かるんなら、そりゃあ、馬券でも買ってパァーーっと大儲けかな〜もう未来が分かってる訳だし簡単簡単っ」

あっ質問が悪かったかも、もう少し詳しく話すことにする。

「みぃーそういう良いことが分かるわけではなく、友達や自分の大きな不幸しかわからないとしたらどうしますですか?その友達に伝えますですか?」

「うーん、その前に2つ聞くけど、それって梨花ちゃんの話?実は未来が見えるとか?」

「ち、違いますです。もしもの話しなのですよ」

「あははは、そりゃそうか、そうだったら面白かったのに、んで、もう一つの質問なんだけど、未来が分かるって言っても、その未来は変えられるわけ?」

未来は変えられるか……?その質問に戸惑ってしまう。
そんなこと考えたこともなかった。羽入の説が正しいなら、この世界は前の世界とあまり変わらない流れを辿るらしいけど、その流れを変えることはできるのかな……
普通に考えたら、変えられそうなものだけど……でも、沙都子の両親はあれほど低い確率を突破して死んでしまった。しかも日にちまで同じなんて無茶苦茶な確率でだ。
確率論だけで言ったら、そんなことにはまずならないはずなのに……それでもなったということは、未来は変えられない?
とはいえ、反証もある、それはボクがこの世界に来たとき起きた、裏山のトラップがボクの親に見つかったこと……
前の世界では、そんなことは起きなかったはずだし、見つかった理由にはボクが関わっているから、変えることができると見ることもできる。
でも……この世界には前の世界と違う部分があるのも事実で、もしかしたらこの世界では、最初からボクに関係なく、トラップが見つかることになっていた可能性もある。
……そうなると、やっぱりよくわからない、とりあえずそのまま伝えることにする。

「変えられるかどうかは、よくわからないのです。それにもしかしたら、知っている未来と違ってしまう可能性もあります」

魅ぃはうーん、と言ったあとしばらく考えてから口を開いた。

「そうだね〜、私だったら、自分の中に閉まっておくかな」

「友達に不幸の内容を伝えずに…?」

「うん、未来を変えるまではね、だって変えられもしない不幸な未来を教えられても、嫌なだけでしょ?ましてや、当たらない可能性もあるのに」

「……ですが魅ぃ、運命が変えられた場合、本人たちに伝えることで、変わりやすくなるかもしれないのですよ?」








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