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ボクはまず、悟史のしてくれた話を思い返す。
えっと……魅ぃは変な動作はしていない、手は机の上からも下ろしてなく、ただドリルを解いていただけ。
一応悟史も時々目を離したことは離したけど、基本的に時計を見る一瞬だけ……あとは知恵と話した10秒くらいのもの。

うーんこれだけじゃなんとも言えない。わかるのはボクの予想していた机の中の物を見ることは難しい……くらい?
やっぱりこれではヒントが少なすぎた。
かといって、もう試合中でヒントが増えることは、……あ、そうだ。

「羽入、魅ぃの様子を観察してきてほしいのですよ」

「あぅあぅ☆任せてください。僕が行けばお茶の子サイサイ、即解決間違いなしなのです!今まで頼まれなかったのが不思議なくらいなのですよ」

羽入は満面の笑みを浮かべて、自分の胸をトンっと叩く、その勢いにボクは少し呑まれる。
「み、みぃ、期待してますのです」

「当然なのです!観察だけじゃなく魅音の不正まで、バーンッと解決して梨花の悩みを解消しますのですよ!あぅあぅあぅー!」

そう言って、ピュンと魅ぃの元に飛んでいく羽入……
あの様子だとあまり期待は出来そうもないけど、羽入はなんであんなにうれしそうなんだろう?さっき褒めたからかな……?あんまり褒めすぎないようにしよう。

羽入が戻ってくるまでの間も、ボクは漢字を解きつつ、推理を巡らせる。
今度は、魅ぃの様子だ。
今一度魅ぃの方を盗み見る。
さっき悟史が言った通り、淡々とドリルに向かっていた。変な所は特にない。

今は悟史や羽入も見ているから、ボクが見てても大したヒントにはならないだろう。
それなら、それは置いといて、過去の魅ぃの行動に思いを馳せてみることにする。細工を探すのではなく、いつ細工をしたか?ということと、出来れば細工のヒントを得たい。

1戦目の前に見たときは、頭の後ろで手を組み椅子に座っていた。
ドリルは閉めていたし、教科書も始まる前に閉めた。特に細工をする余地はない……あ。

突然頭の中に稲妻が走る!それは一瞬の閃めき、
1戦目の前に出来ないなら、1戦目の途中に細工をすればいい!
そう、1戦目は悟史もいないし、ドリルの答えは見放題書き放題!
細工をする余地は沢山ある!

でもそこでふと疑問がわく、細工……一体魅ぃは何を残したのか
いくら見放題書き放題でも、そもそも今の魅ぃは特に不正らしい動作はしていない。
書き放題に書いたとしても、悟史が見張っているのだ。果たして書いたものをどう残して使っているのか……
それと、見放題の方は本当に意味がない、1戦目結局魅ぃは4点だったのだ。見た答えはどこへ?これが、1戦目20点くらいとれてると分かりやすいけど……
不思議なのは、もし1戦目まともに20問を答えてたとすると、今度は2戦目以降の細工の時間がとれなくなること。
2戦目以降の問題は、40問くらいあるから、答えを書き写すだけでも4、5分はかかるだろう。1戦目の問題は魅ぃにとっては、2ヶ月前ので魅ぃも答えが曖昧だったことを勘案すれば、まず解ききることは出来ない時間だ。
かと言って、魅ぃは答え自体を空欄で出したわけではない。羽入が魅ぃは19問解いていると言ったことから考えると、空欄はなかったと考えた方がいい。
だから普通に考えれば、魅ぃは1戦目の答えを見てすぐに問題を埋め、残り時間で2戦目3戦目の答えを何処かに書き写したと考えないとおかしいのに、1戦目の点数がそれを否定するのだ。
……もしかして4点はダミーで思考を混乱させようとしてるとか?
何のためにかはよくわからないけど……

今はとりあえず仮定に留めておこう。不正さえ見つけられれば本当の事は知らなくていい、1戦目に細工をするチャンスはあった!これで充分。
あとは、どうやって悟史の前で自然に不正をしたかと、一体答えを何に書き写したか……
きっとそのヒントは魅ぃの2戦目の前と2戦目中にあるにちがいない。

魅ぃはボクに負けたあと、また頭の上で手を組んで、始まる前くらいに、あのソファーで寝そべるような格好になって、試合開始……
試合中は悟史の説明した通りだ。
やっぱりよくわからない……

羽入が戻ってきた。悲しげに顔を歪めている。ということは、ダメだったのだろう。

「あぅぅぅ、さっぱりわからないのですよ」

「みー、ヒントもないのですか?」

「あぅー、僕から見てもとても自然だったのですよ。机の下もくまなく探したのですが特には……あっただ、魅音は時々目を細めていましたです」

「みー?それだけですか?」

「ぁぅぁぅ、ごめんなさいです」

……目を細める、人が目を細めるのはどんな時?
答えは簡単、何か見えないものを見るとき……それも、視力が足りない場合……
魅ぃは何か見づらいものを見ようとしていた?
魅ぃの視力なら、ドリルの文字は簡単に分かる……とすると、別のもの?
床の上のとか……?
あっそうか、別に遠くなくてもいい、小さ過ぎても視力は足りなくなる。
魅ぃは小さいものか遠くの物を見ようとしていたということになる……。それも魅ぃの見える範囲で、ドリルをしてるから、机の上とか、床の上……

悟史の言葉が思い浮かぶ、机の上から手を下ろさなかった……
もしかして下ろさなかったんじゃなく、下ろせなかった?
魅ぃは手で答えを隠してるから、手を下ろせなかったんじゃ……?
だけど、悟史も羽入も魅ぃを監視している。どうくぐり抜けたのか……

あっだから、目を細めていたのか!ものすごく小さい文字で書いたから、とても見づらいにちがいない。
きっとそう。魅ぃは机の上にとても小さい文字で答えを書いた。それも手を少し動かすだけで自然に見れる位置に!だから自然に解いてるようにしかみえない。

あとは書いた場所だけど、そこまで分かればすぐに分かる。
あのソファーで寝そべるような姿、あれは、きっと答えを隠すため、だから悟史が来た2戦目の前にし始めた!3戦目の前も!当たってるかはわからないけど、多分合ってるはず!

「羽入!すぐに魅ぃの場所に行ってくださいです」

「あぅ!今度こそ期待に応えますです!」

そう言ってピュンと飛んで行こうとする羽入。
「みー、待ってくださいです!」

「あぅあぅ?」

「机の上の魅ぃの右腕辺りを見てほしいのです。それも左側から見ている悟史にとっての死角となる辺りを」

「ガッテンなのです!」






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