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魅ぃは時計を見るとこちらに向きなおる。次の授業開始まであと8分残ってる。
「うーん休み時間ももったいないし、チャッチャッと言っちゃおう」

「みー」
さてどんな推理が飛び出すことか。

「おじさんの読みはこれ!梨花ちゃんの出そうとしてたルールは、梨花ちゃんは2年の問題、おじさんは五年生の問題を解いて、採点し合い点数の高い方が勝ち!ってところだね」

「みー?」
……なるほどそれなら、ボクにも魅ぃにも公平だし、ボクが2年生でも何ら問題ない。でも魅ぃにとって何でこの条件はダメなんだろう?どうやら沙都子も同じ感想をもったみたいだ。

「あら、聞いていると特に問題はないように感じるんですけど、何がいけませんの?」

魅ぃは甘いねぇと言いながら指をふる。
「二人とも忘れてない?おじさんの学力を!確かにおじさんは何でも出来る、家事全般から出版・華道・果てはヘリの運転まで!そんなS・S・Sクラスのステータスの中で唯一のDクラス!それが勉強なのさ!そんな戦う前から負けが決ってるルールなんておじさんは願い下げだね」

「あ……」
……そうか、さっきボクも六年生の学力があれば魅ぃには勝てると踏んでいた。
それと同じことなんだろう。魅ぃの場合勉強において言えば、同じ土俵にたつということは負けが決まるのと同じこと、だから受けれない。

「み、魅音さんそこまで断言しなくても……聞いてるこっちが恥ずかしくなりますわ」

「へん、笑いたければ笑えばいいさ!おじさんはもう開き直ってるからね、とにかく受けないったら受けない!」

「魅ぃ、それなら、ボクも五年生の問題をやると言ったらどうしますですか?」

「あははははっそりゃ受けるに決まってるよ。さすがのおじさんでも2年生に負ける気はしないからね」

「じゃあそうしましょうです」

魅ぃの顔が驚愕にうち震える。
「えええーーーーーっ!お、おじさんは確かに勉強出来ないっていったけど、0点じゃないよっ!?ちゃんとわかって言ってる!?」

「わかってますです。ボクの学力があれば、魅ぃくらいなら一捻りなのですよ。にぱー☆」
ボクは更に勝負に誘うため魅ぃを挑発する。

「あ、あのさー……もしかして梨花ちゃんっておじさんのこともの凄くなめてるでしょ?」

「みー?今ごろ気づいたのですか?もうとっくに気づいてると思ってたのですよ」

魅ぃは拳をパキパキならすと怒りを宿した瞳でボクをみる。作戦通りだ。
「ほほぅいい度胸だ、この園崎魅音をここまで怒らすたぁ梨花ちゃんもやるねぇー、でも喧嘩を売る相手の力量は測るべきだったね、今さら後悔しても遅いよ!」

「魅ぃがちゃんとドリルで戦ってくれるなら、ボクの勝ちは揺るがないのですよ。にぱー☆」

「うぐぐぐ、よしわかった!勝負しよう!終わったあともその小生意気な態度が出来るか見ものさね!」

「魅ぃの方こそ、2年生に負けてショックのあまり寝込まないでほしいのです」

「はん、相手の心配より自分が負けた時の心配をした方がいいよ」

ボクと魅ぃはバチバチと火花を散らして見つめ合う。
悟史と沙都子はもうほとんど傍観者の感じで成り行きを見ていた。
ボクと魅ぃは簡単にルールを話し合う。決まったルールは、試合は授業中に行う。
お互いが五年生の漢字ドリルを使う(ボクは悟史のを借りる)全試合が終わるまで試合時間以外はドリルは開かない。
勝負は計三回で一回につき20問。点数が高い方がその試合を取り、二回先取した方の勝ち。
やるページは二人の合意の上すでに決めてある。
採点するのは悟史と沙都子で、悟史は魅ぃを採点する。ボクの方は沙都子が採点する。
試合は1試合目は授業開始5分目から10分間、2試合目は授業開始20分目から10分間、3試合目は授業開始35分目から10分間とする。始まりの合図はないけど、終わったときには悟史と沙都子が止める。
知恵の妨害が入った場合も基本的にはそのまま続行とする。
ボクが悟史のドリルを借りてる都合上、ボクだけ答案用紙は別に作りそれに答えを書く、魅ぃは自分のドリルに直接でいい。こんなところ。
採点のとき悟史が魅ぃを採点するのは、悟史なら普段から魅ぃを教えに移動することもあるからバレにくいだろうという単純な理由だ。

「じゃあおじさんが、梨花ちゃんの分の用紙を作るよ」

「ありがとうなのです」
魅ぃは自分の机に戻るとイソイソと作業し、結構な時間をかけ、ボク用の三枚の用紙を作ってきた。時間を掛けた割りに出来はよくない。……答えの幅も適当だし、線もよれよれ……せめて定規くらいは使ってほしい。魅ぃには悪いけど、やっぱり自分で作ろう。
時計を見ると授業開始まで残り30秒くらい……作り直す時間はなさそうだ。
もしかして……この用紙を使わせるためだけに、5分間も時間を潰してたのか……、勝つためには手段を選らばないと言っても、ちょっと小さすぎるのです……
仕方なくボクはそれを受けとると自分の机に座り悟史からドリルを借りる、魅ぃも自分の机に座ると精神を研ぎ澄ませてるようだった。
悟史と沙都子もいつも座ってる位置(ボクの前の席)に戻り準備完了だ。授業開始をまつ。

校長の海江田のならすベルがなり知恵が授業の開始を告げた。

最初の試合は5分目だ……始まったら魅ぃを揉んでやるとするか。

「あぅあぅ、梨花が自信満々なのですよ」

羽入だ、魅ぃと同じく楽しそうな匂いに釣られて来たらしい。
「みー☆勉強なら魅ぃに負ける気はしないのです」
一年前にやってうるおぼえの問題とはいえ、相手は魅ぃ、負ける気はしない。

「僕も魅音に勉強で梨花が負ける気はしないのですよ」

「みー☆」

「ただ一つ心配なのは相手があの魅音ということなのです」

「みー?」
……魅ぃだから、簡単に勝てそうな気がするのだけど、これが悟史なら勝てるかどうかわからない。

「梨花忘れてしまったのですか?およそ勝負と名のつくものには意地でもズルでも勝ちにいく!それが魅音の恐さなのです」

「あ……」

……確かに、部活中の魅ぃは勝ちに異常にこだわる。
だから部活でも優勝する確率は断トツで1位!引き分けによる灰色決着すら認めない徹底ぷり、勝負と名のつくものなら、例え苦手な種目でも手段を問わず優勝を目指す。それが我が部の部長、魅ぃの恐しさなのだ。

……でも、今は部活中じゃないし、この魅ぃは部活をやったこともない。
第一魅ぃの目からみたら、今のルールはほぼ勝ちは見えてる。
だって2年生が五年生の問題を解くのだ。それもボクの昨日までの実力は2年生の沙都子と同じくらいで、それは魅ぃも知ってるはずダーティプレイに走るとも思えないのだけど……
……それでも一抹の不安を感じて魅ぃの方をジッと観察する。
頭の後ろに手を組み椅子の背に寄りかかっている、多分勝ちを確信しているのだろう。口笛くらいふきそうな雰囲気。
一応机の上にも視線を走らせてみるけど、ドリルは開いてないし、知恵に対する目眩ましようの国語の教科書が開いてるだけだ。
……あの教科書が怪しい?
いや特に答えを書き写す時間はなかったはずだし試合中に開かないと意味はない……考えすぎかな。
その後も何度も確認したけど、ドリルを開くことはなかった。

「あぅ梨花そろそろ5分目になるのですよ」
「みー始めますのです」

ボクは5分目になるのを待って一回目の試合を始める。
魅ぃも同時に始める、教科書はちゃんと閉じて、ドリルを開いていた。
やっぱり、ダーティプレイに走るつもりは無いみたいだ。





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