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「魅音さん聞いてくださいまし、梨花が…きゅうに、わたくしを抜くんですの、ひどいと思いませんこと!?」

「あーごめんさすがのおじさんでもわかんないや、誰か状況説明をお願い!」

魅ぃは今の沙都子じゃ説明できないと気づいたんだろう。他の人に説明を求める。すぐに悟史が手をあげた。
「じ、じゃあ僕がするよ」

「オッケー悟史にお願いしよう」

悟史は簡単に今の状況を説明する。
説明は要点がまとめられてるわけではなくちょっとわかりづらかったけど、流れは間違えてなかった。多分今の沙都子が説明するよりもいくぶんマシにちがいない。
魅ぃもそれでわかったんだろう、納得したようにうんうん頷く。

「なるほどなるほどぉ、授業中にそんなことがねぇ、それでおじさんも納得だわ」

「み?何をですか?」

「あー沙都子の推理のこと、急になんで始めたのかなーって思ってたからね」

沙都子があわてていう。
「み、魅音さんも聞いてらしたんですの」

「そりゃ、あんなに大声で言ってたらねー、知恵先生どころかクラスのはじからはじまで沙都子の推理の独壇場!みんな興味津々に聞いちゃってさ、いやー見せたかった。ま、おじさんは優しいから耳を塞いであげたんだけど、それでも少しは聞こえちゃうわけ」

魅ぃが一番笑ってたのによくいう、あの爆笑っぷりは絶対に一番興味津々に聞いてたにちがいない。
沙都子は真っ赤になって顔もあげられないみたいだ。あ、目が潤んで来てる、魅ぃはそれに気づかず追い討ちをかける。

「特に最後、沙都子が椅子に立ち上がったときなんて、おじさんも耳を塞ぐのを忘れて魅いっちゃてねー、クラスの皆もあれには度肝を抜かれたんじゃないかな、授業中に椅子に立てる猛者は沙都子しかいないっ!って思わずおじさんも心の中で拍手を送っちゃったよ、いやーあの沙都子の勇姿をみたら見てる人は絶対笑い転げ、コホン、褒め称えずにはいられないね。やっぱり沙都子はおじさんにとっての」

「……わ、わたくしだって、好きで……め、目立ってたんじゃ…ありませんわ」

「いやいや、多分違うねー、あの堂に入った姿、沙都子は目立つのが大好きとしか」

「ち、ちがいますわ……」

魅ぃも沙都子が泣きそうなのは気づいてるみたいだ。それでもからかうのは魅ぃゆえにだろう。悟史はどうしたらいいかわからず、あたふたしてる。ボクはボクでもう沙都子が泣いたあとどう慰めるかに心を奪われてるから、誰も止めようとはしない、沙都子にはかわいそうだけど、ほぼ泣くことは決定だ。

「ちがわないちがわない、心に手を当ててよーく考えてごらん沙都子の心が目立ちたい〜目立ちたい〜」

「…ち、ちがうもん…ちがうもん……き、気づかなかっただけだもん………魅音さんのバカーうわああぁぁあぁん…あぁぁあぁぁん……」

やっぱり泣いてしまった。すぐにボクは沙都子の頭を撫でつつ、もう片方の手を……
「沙都子、魅ぃにからかわれて、かわいそかわいそなのです。代わりにボクが沙都子の仇をうってあげますです」

魅ぃに突きつける!
魅ぃはボクの手を見るとニヤリとする。沙都子も泣きながらこちらをみる。手をぐっと握ってボクに見せるあたり、容赦なくやってくださいまし、という意味だろう。
「ほほぅー、となると、沙都子を泣かしたおじさんを、梨花ちゃんが倒そうってわけだね」

「そうなのです。魅ぃに正式に決闘を申し込みますです!」

「面白い!受けて立つよ!うーんでも梨花ちゃんだけじゃおじさんとは年齢の差があるから公平な戦いとはいえない。何だったら悟史もつけてもいいけど」

しゃがみながら沙都子をあやしていた悟史が立ち上がって答える。
「むぅ僕だって魅音と同学年だし男だから、それじゃあ今度は魅音が不利だよ」

……確かに悟史がいうことも一理ある。
「あははは、その心配は無用だよ、おじさんには圧倒的な実力があるからね、二人がかりでもハンデが足りないくらいさね、じゃあ種目はねー…」
「……むぅ……」
……哀れ悟史、プライドを傷つけられたみたいで、意気消沈してる。撫でてあげたいところだけど、ボクはこれから傷ついた悟史に更に塩を刷り込むことをするから、撫でられない。

「みー、悟史はいらないから、変わりにボクが種目を決めますです」

ガタン……あぁ力なくしゃがむ悟史の後ろ姿が切ない。その切なさがボクの胸をキューキュー締め付けて、頭を撫でてあげようという思いに駈られる。
魅ぃはボクの提案が少し不満なようだった。

「えーでも梨花ちゃんとだと力の差が有りすぎるしな……うーん、まあいいや、種目聞いてからにする、でもおじさんが力の差がありすぎると思ったら悟史をつけてもらうよ」

「みーそれでいいのです」

「それで種目は?」

「国語での頭脳比べなのですよ」

「国語……?次の授業の?」

「みー、そうなのです漢字ドリルで勝負なのですよ」

魅ぃの顔が驚愕に見開かれる!落ち込んでた悟史や泣いてた沙都子も驚いたみたいだ。
「えええーーーーーっ!!ほ、本気ー!?、お、おじさんこれでも五年生なんだよ!?」

「り、梨花ぁー!いくらわたくしに勝ったからって無謀にもほどがありましてよ」

「むぅ確かに魅音は勉強ができないけど、さすがに2年生には負けないと思うから、やめといた方が」

皆が驚く姿を見るのはいい気持ちだ。
「本気なのですよ」

「いやいやいやっ!絶対ないないないっ!さすがのおじさんでも2年生には負けないって!」

悟史と沙都子は顔を見合わせてる。さっきの算数ドリルの件があるから、もしかしたら……とでも思ってるのかもしれない

ボクは不敵にニヤリと笑ってみせる。
「みー、それが負けてしまうから世の中は面白いのです」
魅ぃは勉強の成績はそんなに良くないむしろ同学年から見たら悪いくらいだ。
確かに2年生と戦えば勝てるだろうが、今のボクは六年生の学力をもっていて、魅ぃと違いちゃんと勉強していた。
となれば、勝てる可能性は高い

魅ぃは今のボクの笑いを何か作戦があると見たらしい。
少し考えてニヤリとする。

「ははぁーなるほどぉ、梨花ちゃんは点数勝負に持ち込もうとしてるのか、危ない危ないあやうくそのまま勝負するとこだったよ」

「み?点数勝負?」

「もう知らないふりしても無駄だよ。おじさんには作戦がぜーんぶわかってるんだからね、そんな不利な試合おじさんが受けると思う?」

魅ぃがどんな推理をしたにせよ、勝負を受けられないのは困る……まず理由を聞かないと。
「みー?」

「ほぅ、さすがは梨花ちゃんだね。見破られたとわかっていても、答えを聞くまでは演技をやめないか……じゃあ聞いてもらおう!梨花ちゃんの隠してる作戦を!」

「何だかさっきのわたくしみたいですわね」
「しっ言ったら魅音にわるいよ」

沙都子と悟史に言われて、顔を赤くする魅ぃ
「が、外野は黙ってて!これはおじさんと梨花ちゃんとの闘いだよ」

「みーじゃあ聞かせてもらうのです」






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あきゅろす。
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