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「えーとそれはですね……」

予想通り知恵は少し困ってる。
今回の場合沙都子の推理はハズレている、そしてそれはボクと知恵にだけわかること。
知恵もそれを普通に伝えればいいと思うけど、あのキラキラした顔を見てると言いづらいにちがいない。……だからボクは知恵にそっと後押しをしてあげる。

「知恵、言ってしまっていいのですよ。例え知恵が言わなくてもボクがいいますです」

「なんですの梨花?先生は何か知ってますの?」
沙都子はボクが言った言葉が気になったみたいだ、それを聞いて、知恵も覚悟を決めたようだった。
「いえ私がいいます。沙都子さん、先生は沙都子さんの知らないある情報を持っています」

「わたくしの知らない情報?」

「はい」

「それはどんなものなんですの……?」

「実は今日古手さんにドリルの範囲を教える時に、ドリルの中を見せてもらったんです」

「中を……?」

沙都子は、考える素振りをしてすぐにハッとする。

「ではもしかして中には何も……?」

「ええ、その通りです。少なくとも指定するときにその範囲内には何も書かれていませんでした。古手さんはちゃんと授業中に終わらせたんです」

沙都子は戸惑いに目をパチクリしていた。
「えっと、わたくしの推理は梨花は家でドリルをした。そうですわよね、にーにー」

「うん、確かに沙都子はそう言ったよ」

「じゃあ何故書いてないんですのよ。先生が見た時に書いてないなんて変ですわ、梨花は一体どうやって答えを最初に見せるときだけ消してしまいましたのっ!?」

沙都子はまだハズレてることを認める気はないらしく、頭をうんうんひねってる。
必死に考える沙都子もちょっとかわいい。でも知恵はそんな沙都子を見かねたのか、優しく介錯してあげることにしたみたいだ。

「沙都子さん、大変言いづらいんですが、古手さんが私に見えないように細工したというよりも」
そこからはボクが引き継ぐ。
「沙都子の推理がハズレていたと考えた方が自然なのですよ」

「二人とも、わたくしの推理がハズレてると言いますの!?そんなこと認めませんわ!にーにーはちがいますわよね?」

「むぅ僕も沙都子の推理を当てさせてあげたいけど、知恵先生や梨花ちゃんの方が正しい気がするよ……」

「にーにーまでー!いいですわ!わたくし一人でも絶対見破ってさしあげますわ。見ててご覧なさい」

知恵はチラッと時計を見た。授業終了まで残り五分。さすがにここにずっと居るわけにもいかないのだろう。
「じゃあ先生はもう行きます、では沙都子さん、もし分かったら先生にも教えてくださいね」
「任せられましてよ!」

「楽しみにしていますよ。ではあとの時間は静かに問題を解いていてください」
「はい」
「わかりましたわ」
「みー」
そう言って立ち去る知恵、ボクたちも机の方に向き直る。さっきの知恵の雰囲気で考えると、そこまで沙都子の推理を当てにしているかんじはしなかった。
まあ最初の推理を捨てないと解けないのに、それに沙都子が固執してるのだから当てにしないのも当然といえば当然だけど、このまま沙都子に解けない問題を解かせ続けさせるのも酷だ。
でもどうやって教えよう……沙都子は口で言ったくらいじゃ信じないだろうし……あ、そうか、だったら直接見せればいい。
ボクは前の席でドリルも解かずに頭を抱え続ける沙都子に小声で声をかける。

「沙都子」

「なんですの梨花、今トリックを見破ってる最中なのでしてよ」

「みーボクが何のトリックも使ってないことを沙都子に信じさせようと思うのです」

「あら、そんなこと信じると思いまして?犯人はやってないと必ずいうものでございましてよ」

「大丈夫、そんなかわいい迷探偵の沙都子も信じざるおえない方法なのですよ。にぱー☆」

「何か引っ掛かりますわね……まあいいですわ、それでどんな方法ですの?」

「みー簡単なのです。ボクと沙都子が授業終了までドリルを進めるだけなのですよ。それで差が沢山あればボクがトリックを使ってないことがよくわかると思うのです」

「逆にいえば差があまりなければトリックを使った証拠にもなりますのね……」

沙都子はちょっと考えてから勢いこんで言った。
「ええ受けて立ちますわ!」

「みーそれでこそ沙都子なのです」

「ただ2つだけ条件があるんですの」

沙都子の目が光る。
「み?条件……?」

「梨花の解く場所はわたくしが指定する。それが一つ目、二つ目はにーにーが梨花の監視をする。それでようございましょう梨花?トリックを使われたらかないませんもの、それともこんな条件は受けられませんこと?」

沙都子が勝ち誇った顔をしている。多分この提案はボクが受けられないと思ってるのだろう……でもおあいにくさま、ボクはトリックを使ってないのです
「みー☆もちろんいいのですよ」

沙都子は提案をのんだことを意外に思ったようだったけど、すぐにまた勝ち誇った顔に戻る。それはそうだ、もし昨日と同じ学力なら互角の条件で沙都子に大差はつけようがないのだ。だから沙都子の有利は覆らない、ボクに六年生までの記憶がないかぎりは!

「ほっほっほっ、いい度胸ですわね。それじゃあ勝負開始ですわ、いつもより早く解いて絶対に梨花にトリックを認めさせて差し上げますわ!にーにー!梨花の監視と審判をお願いしますわ」

「わかったよ。沙都子」と悟史は苦笑する
「ボクも迷探偵さんの迷いを断ち切ってあげるのですよ。にぱー☆」



校長先生が廊下で授業終了のベルを振って、知恵が授業終了をつげた。結果は……

「みー☆ボクの圧勝なのです」

「うぐぐ、信じられませんわ。一体いつの間に梨花はこんなに勉強が出来るようになったんですの……にーにー本当にちゃんと見てましたの?」

「う、うん、ちゃんと見てたよ。梨花ちゃんはスッスッと解いていたから文句のつけようもないかな、もしかしたら沙都子が答え見ながらやるよりも速かったんじゃないかな」

「わ、わたくしが答えをみるよりもですって!納得がいかないですわよ!そうですわ!きっと梨花の頭に全部の答えがはいってるんですの、そういうトリックにちがいございませんわ」

「沙都子……それって、トリックって言わないよ」

「あぐ、そうですわよねにーにー……まるで悪夢をみているようですわ」

「沙都子はボクにお勉強で負けてしまってかわいそかわいそなのですよー。にぱー☆」

そういってボクは沙都子の頭をなでなでする。沙都子の髪はふさふさしてて気持ちいい。ちょぴり涙目になるところもボクのハートをくすぐる。

「やっぱり納得できませんわ、ぜったいぜったい負けを認めてなんてあげないもん、梨花なんてべーですわ」

と言いつつも素直に撫でられてるあたりが沙都子らしくて可愛い。
「みー☆またの挑戦をお待ちしてますです」

「へーい、梨花ちゃんたち、なーにやってんのさ」
魅ぃだ。楽しそうな匂いにつられてやってきたんだろう。



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あきゅろす。
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