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My Beast
【1】



「うんむぅ〜…」

 洋館のような赤レンガ造りの建物を見ながら、顎に左手を添えて久内早紀は唸った。
目の前には、ぽっかりと大きな穴が口を開けている。
現在、その穴の奥…桜嘉高校内にある図書館の館内は、書籍が整然と並んでいた普段の様子を微塵も残しておらず、台風が通過したかのような有り様になっていた。
 何十とゆう本棚が倒れ、何千冊という本が散らばり、何百万枚という紙が破れて散乱している。
足の踏み場なんてあったものではない。
 早紀は視線を館内から外し、辺りを見回し始めた。
暫くそのまま歩きまわると、側に立っていた大きな桜木に近寄る。
 学園創設時からここで刻々と時を刻み続けてきた大樹は、あれだけの騒ぎが起きた後も変わらず木葉を風に揺らしてそびえ立っていた。
逞しく成長し、今も年輪を重ねているであろ幹に、そっと触れる。
 そこには見た事もないような円陣が刻まれていた。
何か古い言葉であろうか、その円陣の中に書かれている文字は現存するどの言語とも違うように思われる。
ともかく、早紀は生まれてこの方、この様な文字を見た事が無かった。


 幹に刻まれた線を指でなぞる。
幹特有の微かにザラザラとした感触。
そこに刻まれたた傷の凸凹の感触。

そして─その感触の奥に漂う魂波の残溜。





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あきゅろす。
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