イケメン♂パラダイス
勝利の女神(終)
審判『協議の結果…、雨雲の様子から30分後に再開することに致しました。』
―30分後
予測通りに空は見事に晴れ、試合は再開された。
９回裏
英二がマウンドに立った。
英二「(マウンド……これは気をつけないと。)」
英二のウルトラ省エネピッチングに対し、本産打線はランナーを出しつつも、後続が凡打に終わる。
そして試合は延長戦に突入した。
穂織「よっしゃいくぜ！！！！」
気合いを入れる穂織。
バッターは８番･星馬烈。
烈「(このピッチャー、制球もおそろしく良い…。こんなのどうすれば打てるんだよ…。)」
穂織「でりゃああああああ！！」
ｷﾞｭｨｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰﾝ
ﾊﾞｼｨｲｲｲｯ
審判『ボール！！』
穂織「あれ、ちと力みすぎちゃったかな？次は…ここだぁあああああああ！！」
ｽﾞﾊﾞｧｱｱｱｱｱｱﾝ
『ボール！！』
烈「いきなりどうしたんだろう？」
穂織は烈、高橋と続けざまにフォアボールを与え、ノーアウト一、二塁とした。
徹「タイムお願いします！穂織、いきなりどうした？いい球はキテるんだけどなぁ…」
穂織「ん〜なんかわかんないけど投げにくいっていうか…」
穂織はマウンドがほんの少しだけぬかるんでいることに未だ気づいていなかった。
打順は一番の豪に戻る。
徹「とにかくもうお前しかいないんだ。やるぞ！」
穂織「おしっ！とぉおりゃあああああああ！！」
グチャッ
ズルッ
穂織「あっ！！」
豪「ど真ん中〜」
ｶｧｱｱｱﾝ!!!!!
ライナー性の打球はそのままレフトスタンドへ吸い込まれていった。
穂織「足……とられちまった…」
穂織と英二の決定的な違いは“経験”であった。
実力は球村と同等とは言え、普段の試合に登板するのは球村オンリー。
ましてや雨の日の登板など無いにも等しかった。
マウンドの微妙な状態の違い、それを体得するには三年間では短すぎたのだ。
―10回裏ツーアウト、ボールカウントツーナッシング
掛布「こい英二！！」
英二「だっしゃああああああああああああああああ」
ﾊﾞｼｨｲｲｲｯ!!!!!
コースいっぱい。
審判の手が上がった
審判『ｽﾄﾗｯｸｱｳｯ!!ｹﾞｰﾑｾｯﾄ!!!!!!』
英二「よっしゃああああああああああああああああ！！！！！！！」
島「うわぁあああああああああああああああああ！！！！！！」
我先にとマウンドに走る本学の選手たち。
英二を輪の中心に、No.1を示したみんなの手は晴天を貫いた。
審判『礼っ！！』
一同『ありがーっした！！！！』
互いに握手をする選手たち。
球村「孔子園…優勝しろよ。な！」
掛布「はい！球村さんたちの分まで俺たちがんばります！！」
男たちは熱い抱擁を交わした。
豪「よっしゃああああああああああああああああ！！夢の孔子園だぁあああああああ！！！鈴木さぁああああああああん！！！」
鈴木「あざっす。あざっす。ほぼイキかけました。あざっす。」
穂織「板東…。なんか情けない終わり方しちまってすまんな！ま、俺らしいっちゃらしいな！ははは」
英二「多馬さんと投げ合うって約束、果たせましたね。」
穂織「や…約束ってお前…覚えてたのか？？くそっ……泣かせんじゃねえよ…」
英二「ありが…ﾋｯｸ…ありがとうございました…！」
かたく握手を交わし、孔子園での活躍を誓った英二であった。
――その夜
ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ
鈴木「もしもし、鈴木です。おう、島！どうした？」
島「やっと孔子園に出れるんだなと思ったらなんか嬉しくてさ。」
鈴木「そうだな…。お前は三年一人だけだったのに、ここまでよく頑張ったよ。そういえば、あいつらも予選突破したらしいな。」
島「！！！」
鈴木「まぁ、あれだけのメンツがいりゃあ当然の結果だが。直接戦える、そんな可能性も見えてきたな。」
島「あぁ。奴らは本学を裏切った…。もし闘う時がきたら負けるわけにはいかない…」
鈴木「そうだな。じゃ今日はお疲れさま。今日明日ゆっくり休めよ、あざっす。」
島「お前もな。じゃな…」
島はしばらく窓の外の月を見つめた。
満月が美しい
島「天王寺…」
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