頂き物
2
「……本当に何も、」
「…して欲しい事でも命令でも、何でもやるよ、ヒナ。」
浩也の本気の目に、逃げられなくなる日向。
「……ぇ、えと…じゃあ」
「…ん、」
「と、とりあえず…座ろう?」
部屋の真ん中でくっついている2人。
日向の言葉に、浩也が軽々と日向を抱き上げた。
「え…わっ、……こ、浩也くん!?」
当たり前のように日向を抱っこしてソファに向かう浩也。
日向は浩也の肩に掴まる事しか出来ず、ただ慌てているだけだ。
浩也がソファに腰をおろすと、日向は浩也の膝の上で頬を赤く染める。
「こ、浩也くん…わざわざ、あの…、」
「座ろうって言ったのはヒナだろ?」
「…だ、だけど……」
抱っこして運んでくれなんて、言ってないのに…
この状況と、甘えているみたいな自分が恥ずかしい。
命令って難しいな、なんて思いながら俯こうとすると、浩也の声が降ってくる。
「……それだけか?」
「……え? え、あの…うん、」
浩也を見上げると、なんだか困った顔をされてしまう。
それが少し可愛く思えて日向が笑うと、今度は浩也が不思議そうな顔をする。
「…ヒナ?」
「あ、ごめんね…浩也君、可愛いなって、」
「……可愛いって…そんな訳無いだろ、」
ますます困った顔をする浩也に、日向が楽しそうに微笑んだ。
「…可愛いよ、浩也君は……あ、あ……」
「…それはヒナだろ、……どした?」
何か思いついたような日向の顔を見つめる浩也。
「あ、お、お願い思いついたんだけどね…、」
「…何でも言って、ヒナ、」
言いにくそうに、顔を赤くする日向。
えっと…と迷う日向を愛しく思いつつ、日向の言葉を待つ浩也。
「……明日、あの…一緒に出かけて欲し、かったり……、」
「………いいけど…、今日は良いのか?」
「あ、今日はね……あの、あの…一緒に、ゆっくりしたくなっちゃったから…」
「ヒナ……、」
浩也の胸あたりを見つめて恥ずかしそうに言葉をつなげる日向。
「こ、浩也くんがいいなら…」
「…俺もそうしたい…駄目な訳無いだろ、」
「…あ、ありがとう……、」
嬉しそうにはにかむ日向の頬に、キスをする浩也。
小さな背中に回された浩也の腕によって、段々と距離が近くなる。
ぴったりと平らな胸がくっつくと、日向の首筋、うなじ辺りを浩也の唇がなぞりはじめて…
「っ、ん…こ、浩也くん、ま、待って…あの、なんで……っ、」
「……え? なんでって…」
お互いに顔を見合わせる。
違うのか?と言う浩也に日向が小さく頷く。
「ヒナ、ゆっくりしたいって…」
「……え、し、したいって…そういう事じゃ無くて…、」
こんな時間からなんて…と焦る日向。
「ごめん、ヒナ…イチャイチャしたいって事か、」
「えっ…そ、そういう……、」
いちゃいちゃ、と言われるとなんだかニュアンスが……
でも、恥ずかしいけれど、そういう事なのかもしれない。
否定出来ずに目を逸らすと、再び浩也に引き寄せられて、
浩也の胸にぴったりくっつくと、優しく髪を梳かされる。
「あ、う…浩也くん、」
「ヒナのお願いは、お願いじゃないな…」
「……え?」
「俺がしたい事ばっかりだから、」
そもそも日向は、浩也のしたく無い事は強要したく無い訳だから、そうなってしまうのはしょうがない事なのだけれど……
それでも嬉しくて、きゅ、と自分からも浩也に抱きついた。
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