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小さな頃から(↑で読めない方用)
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「おはよう、亮くん……あれ?佑樹くんは?」


「おはよ……風邪引いたって。」


学校へと向かう途中、後ろから掛けられた声に極力普通に笑顔を返すと隣を歩き始めた友人、矢田部日向(やたべひなた)が少しだけ首を傾げる。


家が隣同士の亮と佑樹は通常二人で学校へと通っているが、通学路が途中から日向と同じになる為、こうして偶然タイミングが合えばそこから一緒に登校していた。







自分達が通っている私立白鷺学園は小学校から大学迄の一貫教育を行う、いわゆるエスカレーター式の男子校で、佑樹と亮は初等部から入学したいわゆる持ち上がり組……隣を歩く華奢な体付きに可憐と言える容姿をしている友人は、学園始まって以来の奨学生で高校から入学して来た。


入学式の時、知り合いもいなくて心細いだろうと思った亮が声を掛けたのがきっかけで……すぐに友達となった日向も交え、学校では大抵三人で行動している。


佑樹は人見知りだから友達になるには時間がかかると思っていたから、最初から打ち解けてしまったのには驚いたけれど、日向が纏う裏表のない素直な空気を敏感に感じ取ったからなのかもしれない。





「昨日は元気だったのに……大丈夫かな?」


心配そうな日向の声に、亮の心がチクリと痛む。


今日佑樹が休む事になったのは間違いなく自分が……あんな事をしてしまったせいで……。


「メールには、風邪だとしか書いてなかったからなぁ……。」


朝、佑樹に設定されているメール着信音が鳴った時には、心臓が壊れるんじゃないかと思う程一気に心拍数が上がったけれど、震える指で確認ボタンを押した亮の瞳に映った文章は、通常と変わらない簡素な内容で、『風邪引いたから、学校休む』と一言書いてあるだけだった。



「明日には、元気になってるといいね。」


平常を装った亮の返事に、心配そうな面持ちをした日向がコクりと頷き口を開く。


純粋に心配を滲ませている日向の姿に、本当の事を言える筈の無い亮の心はジクジクと痛み出すけれど、それを口に出す事は絶対に出来なくて……。


「ああ、そうだな。」


そう言葉を返すだけで、今の亮は精一杯だった。





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