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書物
1 綾+タカ

あ、つやつやしてる

ぼんやりと教室から空を見上げる綾部の後ろ姿を見て思う。
綾部の髪はふわふわしていて柔らかい。それでいて細いわけでなくしっかりとした太さをしているから、穴掘りでドロドロになっても大丈夫だ。
そんな髪だから髪結いは楽しいのだ。いろんな髪に出会える。
十人十色ならぬ十人十髪だ。

そんなことを思いながらまた綾部の髪を見る。

うん、つやつやだ。

毎日見てきたからわかるけど、この頃つやつやしてる。ちょっと前までぼさぼさだったのに。

あー葉っぱがからんでる。
多分穴掘りしてた時に髪に挟まったんだろう。
とってやろうと手を伸ばし一房手にとり葉っぱをとろうとする。
と同時に綾部が物凄い勢いで振り向いた。

「うっわぁ!」
「何、」
「ええ?どうしたの綾部」
「髪、掴んだじゃないですか」
「あ、葉っぱついてたから、」

とってあげようと思って
と言うと相変わらずの何を考えているかわからない表情で

「触らないでください」

と言った。
え、綾部俺に触られるの嫌い?嫌だった?
真顔で言われて焦る。自分でも情けない顔になってるだろうと思う。

「……どこですか」
「へ」
「葉っぱ。とってください」
「あ、うん」

触らないでと言われたのはショックだったけど、この様子を見ると許可があればいいみたい

「はい、とれたよ」
「ありがとうございます」
「ねえ綾部、髪綺麗になったよね。つやつやだし、指で梳いても引っかからなくなった」

無言の許可を貰ったことだしと髪をすくい上げ梳く。
言った通りふわふわした髪は引っかからずにとけて気持ちいい。長い髪は触り心地が良くて。

「貴方が」
「うん?」
「貴方が手入れしたほうがいいといったので」

いつの間にかこちらを向いた綾部とばっちり目が合う。深い色をした目に引き込まれ目が離せない。

「タカ丸さん」
「………、なぁに」
「今度髪整えて下さい」
「うん、いいよ」
「ついでに髪洗って下さい」
「わかった。綺麗にしてあげる」

それに軽く頷いた綾部はするりと俺の指から髪を抜き取り無言で教室を出て行った。




「綾部も髪を気にしてくれるようになったのかぁ。嬉しいな」

ふふっと笑いが漏れる。でも綾部の髪が綺麗になると、自分が一番美しいと豪語する彼や、自分がアイドルだと声高に主張する惜しくもサラストから外れてる彼が黙っていないだろう。そうすると彼らは自分のところに来て髪を結ってと言いにくるはず。結うばかりでなくトリートメントやその他のケアもやらなくてはならないだろう。
そんな彼らの女性にも負けない自分を美しく見せたいという精神は大好きだ。

賑やかなことになりそう。

にっこりと綾部が見上げていた空を見上げた。


fin









綾部+タカ丸。でも実は綾→タカなんです。気づいてないタカ丸。
綾部はタカ丸に誉めてさわられたくてつやつやにしました。が、いざいきなり触られるのは心の準備が出来ていないのでまだ無理です。
でもわざとぼさぼさのままの綾部でもいい。もーとか言われながらケアしてもらうのもいい!


あきゅろす。
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