愛が積もる箱
暴走
しばらくして、時雨さんがドアを開けて入ってきた。
ぐったりしている天音さんを支えて。
ベッドに近づき、天音さんをベッドに下ろした。重さでベッドのスプリングが軋んだ。
天音さんは、少し顔が赤らんで寝ぼけたようになっていて、ぼーっとしてた。
「社長、家につきましたから、私は帰りますね」
ぼーっとしている天音さんに、時雨さんはベッドの側に立って、声をかけた。
「んーー、」
「…天音さん、大丈夫?」
僕も、天音さんの隣で顔を覗き込み、声をかけた。
「ん゛ー、希…梛?」
彼は微かに目を開けて、僕の顔を見る。
「うん。大丈夫?頭とか痛くない?」
僕は、天音さんのおでこに手をやって撫でようとした。
おでこに触れそうな距離まで右手が動いた瞬間、右手を掴まれ、ベッドのスプリングがきしんで、僕の視界がもの凄い速さで変わった。
あっという間の出来事。
視界には見慣れている天井と少しけだるそうな天音さんの顔があった。
いつもの押し倒されている状態。
「あっ、天音さん?!」
「希梛‥」
まっ、まずい。
この人のこの目は今正に、僕を抱こうとしてる時の目。
いつもなら、されるがままだが、今はまずい。時雨さんがこの部屋にまだいる。
しかもこっち見てるし。
「寝てないとダメだよ。具合‥悪いんでしょ?」
とりあえず優しく丸め込めばなんとかなるだろう‥
彼の胸板に両手を添え、優しく押し返した。
けど、
びくともしなかった。
「?」
むしろ、何故だかその両手を片手で掴まれ頭の上に置かれていた。
「……だ」
「へっ?」
「いやだ」
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