愛が積もる箱
2
「!」
目の前にいたのは、黒髪を綺麗にまとめた、男の人だった。
「?…こんばんは」
黒髪の男性は、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな顔になった。
「見たことない顔ですね。…っと言っても、この家で社長以外の人を見るのは初めてです。失礼ですが、あなたはどなたですか?」
「へっ?!えっ…と、希梛です」
彼のひょうひょうとした返答と、穏やかな笑みに、思わず希梛は自身の名前を口にしてしまった。
「希梛さんですか。…私は、篠崎時雨です。時雨と呼んでください。ちなみに社長の秘書をしております」
社長?
秘書??
「社長が少々飲みすぎたようなので、ご家庭までお連れしたのですが、寝室はこちらですか?」
「あっ、あの!…社長って…」
「ご存知ないのですか?天音公明(アマネ キミアキ)は、当社、クライム・エンターの社長ですが」
「クライム・エンター?」
「ブライダル関係の大会社です」
ブライダル?
ブライダルって、結婚式の?
…の、前に、あの人公明さんって言うんだ。
「…失礼ですが、社長をこちらに運んでもよろしいですか?」
「はっ、はい!!」
彼はそう言うと、どこかに行ってしまった。
[back][next]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!