愛が積もる箱
世話
食事、入浴やらなんやらをすべて世話され、先ほどまでいた、寝室に姫抱きで再び戻された。
この年で、老人や幼子のような扱いを受けるのは今となっては慣れているが、少し気恥ずかしくていたたまれない。
「あの…」
「何だ?」
「毎回言ってますが、入浴くらい自分で出来ます///」
入浴は、連れてこられてから基本彼と一緒だ。
恋愛経験のない僕は、他人と一緒に自宅風呂に入るという行為は一度もない。
そのため、一緒に入るという行為はとても気まずい。
それなのに、彼は無表情でシャンプーやらボディソープやらで体中を洗うので、思わず肩がビクついてしまう。
浴槽に入る時も、彼は僕を膝に座らせて向かい合わせにする。
この時がもっとも恥ずかしくていたたまれなさが滲み出そうになる瞬間である。
髪を洗ったせいか、ワックスなどで固めたのとはまた違う湿ったオールバックに切れ長の目は、男の方から見ても、ドキッとする。
ただでさえ向かい合わせにされ見つめられてるのに更に追い討ちをかけるがごとく至近距離で微笑まれる。
何故だか甘さを感じてしまう。
誘拐されたはずなのに…
切ないような甘いような気持ちになる。
嫌になる…
自分の誘拐されてるという現状を忘れて、甘いのに溶かされそうで、
怖い…
堕ちてしまいそうなそんな感じ。
だから毎回入浴だけでも一人でって言ってるんだけど、
「お前の世話は俺の義務だからダメだ」
の、一点張り。
世話って、飼い犬かよ‥
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