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愛が積もる箱


「っ……!」


ヤバいと思った最中、彼の唇が近づき、僕の唇が塞がれた。
唇の先を彼の舌がノックしてきた。
口を開けろという合図なのだろうか。

わかってはいるが、自分から快楽の穴に入っていくほど快楽主義ではないからその合図を無視して、頑なに拒んだ。

すると、彼の機嫌を損ねたのか眉間にシワがよる。

「……希梛」

「えっと、時雨さん来てるのにこんなことしちゃだめだよ。それに、天音さん飲みすぎて具合悪いんでしょ?」

「お前が気にすることじゃない。お前は俺が攫ってきた。俺のものだ。誰に見られたってそれは変わらない…」

カッコイい顔をして何言ってんだかまったくもってワケがわからない。

でも、

何となく必要とされてる気がして、

少し嬉しくなった。

監禁されてる立場なのに、変だ。けれど、犯罪が起きてるというのにここは充分すぎるほど平和だ。緊迫した空気というか、なんというか、恐怖がない。
暴力も暴言もない。ただここにあるのは、彼が発する、優しい束縛の言葉だけ。

「すいません」

「っ!?」

一瞬、時雨さんの存在を忘れていた。


「社長を送り届けたので、私はこれで失礼いたします」

時雨さんは軽いよりも深く、深いよりも軽く、会釈をして帰ろうとした。

「あっあの!」

後ろ姿を向けて去る背中を俺は慌てて呼び止めた。

「?」

天音さんのことを知りたい…


「何でしょうか?」

時雨さんは帰ろうとしていた体をドアの方向から俺の方に向け、あまり表情が読み取れない顔で俺を見た。

「…少し聞きたいことがあるんです」

「聞きたいこと?」

「天音さんのことで」

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あきゅろす。
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