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頂話
夢心地


「RW.」
ちのさまより
*相互記念*




















「おい、そんなにくっつくなよ!」
「いいじゃない、夫婦なんだし」

一つの布団に、私と犬夜叉。
普段ならば就寝時には部屋の隅に座り番をしてくれているはずの犬夜叉が何故隣に居るのかというと、私が我儘を言ったのだ。
一緒に寝たい、と。
最近は妖怪退治で忙しく、犬夜叉とゆっくり過ごすことが出来なかった。
それに今日は雪が降っていて、いつもより気温が低い。
だから、無性に人肌…というより、犬夜叉が恋しかったのだ。
始めは嫌だと言っていたが何度もお願いすると、今日だけだからな、と渋々了承してくれて、今に至る。

「犬夜叉暖かい」
「ばっ…!」

顔を真っ赤にしている犬夜叉が可愛らしい。
これ以上のことだってしたことあるのに。
いつまでも照れ屋なところは変わらない、そんな犬夜叉に笑いながら広い胸板に顔を埋める。
一つの布団に大人が二人、というのは少し窮屈な気もするけど、その分犬夜叉を感じられて嬉しい。
犬夜叉の匂いを嗅ぎながら、ふと思いついた疑問を口に出してみた。

「ねえ犬夜叉」
「何だよ」
「もし桔梗が今も生きていたら、私達はどうなっていたのかしら」

この質問に深い意味なんてなかった。
嫌味とかではなく、純粋な疑問で、明確な答えを求めたわけではない。
でも犬夜叉の困惑した表情を見て、私はなんて軽率な発言をしたのだろう、と酷く後悔をした。

「ご、ごめん!今のなし!忘れて?」
「…」
「犬夜叉?」
「…」
「…えっと…」
「…」
「ね、寝ようか!もう遅いし!」

犬夜叉の沈黙が気まずい。
こんなこと言わなきゃよかった。
折角我儘を言って一緒に寝てもらったのに。
自分で台無しにしてしまった。
犬夜叉の顔を見るのが怖くて、布団を頭まで被り目を瞑る。
その状態から暫く経った後、布団の上から犬夜叉の声が降ってきた。

「…俺は」
「え?」
「多分、桔梗が生きていたとしても、お前に惹かれたと思う」

布団から顔を出すと、真剣な眼差しを此方に向けていた。
その綺麗な飴色の瞳に吸い込まれてしまいそうで、視線を逸らすことは難しい。するりと犬夜叉の手が優しく私の頬を撫でる。
その仕草が妙に大人っぽく感じて、少しだけ緊張してしまった。

「あ…えっと、ありがとう。嘘でも嬉しい」

犬夜叉の手を掴んで笑ってみるが、心の中は複雑だった。
桔梗は犬夜叉の中から消えることはない。
消してはいけない。
私も忘れてなんて言えないし、言うつもりもない。
きっと桔梗が生きていたら私はこの世界に来ることは無かった。
私達は出会うこともなく、犬夜叉は桔梗と、私は誰かと一緒になっていただろう。
でも今、一瞬でも犬夜叉が私を選んでくれたことが嬉しい。
もしかしたら本心ではなく、私に気を使っただけかもしれないけど。

「…」

沈黙に耐えきれず、俯いてしまった。
馬鹿みたい。
自分で聞いておいて、勝手に傷ついてる。
犬夜叉にも気を遣わせて、何をしたかったのだろう。

「かごめ」
「…うん」
「今の、嘘じゃねーからな」

掴んでいた犬夜叉の手が私の頭に回り、腰に腕が絡みつく。
そしてそのままぐっと引き寄せられた。
驚いて犬夜叉の顔を見ようとするけど、押さえ付けられていて動くことは難しい。
だけど視界の端に映ったのは、真っ赤な犬夜叉の首。
…照れてる。
照れ屋なくせに、照れ隠しは下手なんだから。
くすりと笑い、犬夜叉の背に腕を回した。

「じゃあ、もっと嬉しい」

そうか、と小さい声で返事をするのも、きっと照れ隠しなんだろう。
思わず笑ってしまうと、笑うな、と言いながら大きい掌がゆっくりと私の髪の毛を梳いた。
ああ、どうしよう。好きだ。
優しいその声も、手付きも、いつもより早い心臓の音も、高い体温も。
全部、愛おしい。
好きが溢れ出しそうで落ち着かない。

「好きよ、犬夜叉」
「かごめ?」
「大好き」

大きく深呼吸をすると、犬夜叉の匂いで胸がいっぱいになった。
全力で抱きついてみるけど、きっと犬夜叉はこれぐらい何ともないんだろう。

「どうしたんだよ、今日はやけに素直じゃねーか」
「いつもでしょ?」
「どうだか」

小さく笑う犬夜叉の行動一つ一つが優しい。
素直なのは犬夜叉も同じじゃない。
口調だって、いつもよりずっと穏やかだもの。

「明日も妖怪退治行くの?」
「あー…そういや近くの村で妖怪が出たって弥勒が言ってたな」
「そっか…」

寂しいけど、寂しいなんて言ってはいけない。
だって、困ってる人を助けに行くんだから。
たまには2人で出掛けたりしたいけど、これ以上我儘なんて言えない。

「寂しいのか?」

からかう様な犬夜叉の口調にむっとする。
こういう時だけ、やけに勘が良いのだから厄介だ。
別に、と顔を背けると、嘘つけ、と口付けが降ってきた。
こんな時に、こんな優しい口付けをするなんてずるい。

「出来るだけ早く帰ってくるから」
「…うん」
「んで、時間あったら一緒に近くの花畑でも行くか」
「うん」

犬夜叉の笑みに、優しさに、蕩けてしまいそうだ。
髪を梳く犬夜叉の手が心地良くて、段々瞼が重くなってくる。
まだ寝たくない。
寝なくても平気だ、なんて滅多な事がないと一緒に寝てくれないから、今寝てしまうのは勿体ない。
もっと話して、触れ合って、笑いあいたいのに。
眠気を払うように目を擦るが、瞼の重さは変わらない。

「…眠いのか?」

声を出すのも億劫になって、代わりに小さく頷いた。
それを合図に少しだけ腰に回っている犬夜叉の腕が緩まる。
その優しさが、今は少しだけ寂しい。

「まだ、ねたく、ない…」

上手く声が出ただろうか。
嫌だと犬夜叉に擦り寄るが、身体が重たく感じてちゃんと動いたか怪しい。
頭の上でふっと犬夜叉の笑い声が聞こえる。
考えることも難しくなってきたから、本当に笑ったかどうかは定かではないけど。

「また、一緒に寝てやるから。だから今日はもう寝ろ」

夢かもしれないけど、犬夜叉はそう言った。
何となく、唇に柔らかいものが触れた気もする。
また、が出来るだけ早く来ることを祈って、そのまま夢に身を投じた。


END


くろ様へ捧げます。
相互リンクしてくださって有難うございました!
『夫婦犬かごで、ほのぼのと会話しながら眠りに就く』という素敵なリクエストを頂いたにも関わらず、少しシリアスが混ざってしまったので、ご期待に添えたか怪しいです(^^;)
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです!
こらからも仲良くしてくだされば光栄です(^∀^)


――


ちのさまから頂きました!
相互リンク、本当にありがとうございます!!

二人の間の優しげな雰囲気が伝わってきて、幸せな気持ちになれました…´`*
かごめちゃんの一言に、真剣に応える大人な犬くんに吐血です。(真顔)

シリアスな二人も好きなので、希望以上のお話を頂き、本当に恐縮です!

ちのさま、これからもどうぞよろしくお願いします!

くろ

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