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雨天予想時決行必至


みぃさま

企画・捧物



























囲炉裏の火も消え、小屋の中は外と同じ夜の色に染まる。
そんな静かに訪れた宵の口、布団の上ではヒソヒソと口論が繰り広げられていた。


「なーに不貞腐れてんだよ」


「別に」


「何だその嘘。この口が言ってんのか」


「っひゃへへよー!!」


ムスッと膨れている頬をむにむにと引っ張ってやる。何故かごめが不貞腐れているのか。原因は昼過ぎのやりとりである。















『雨天予想時決行必至』















我慢はしていた。
でももう無理だ。

俺は長男を背負いながら洗濯物を干している彼女を恨めしげに呼んだ。


「…おい、珊瑚」


「はいはい。コラー、耳は止めなさーい」


「いーぬー」


「みーみー」


「……」


きゃきゃきゃと楽しげな奇声をあげてよじ登っては耳を引っ張ってくる双子に、俺は大きな溜め息をついた。

最初はちゃんと止めさせていた珊瑚も、俺の耳で遊んでいる間はやんちゃな子供が大人しくなると分かってからは放置である。


「…おい、七宝呼べ、七宝」


「今朝早くから修行行っちゃったよ」


「……かごめを呼んでくれ」


「かごめちゃーん、犬夜叉が助けてってー」


「はーい」


近くの小川から笑いながら返事を寄越してくれた妻に、とりあえず早く来てくれるように祈るのだった。





――





「…なんか変な感じがする」


いいようにつねられ、引っ張られ、触られ、何やら耳にものすごい違和感。

洗濯物を済ました俺たちは珊瑚に別れを告げ、家へと帰ってきた。少し遅めの昼食を取りながら、俺は耳をパタパタと動かす。


「双子ちゃん、耳好きだもんねえ」


「いい迷惑だぜ」


「あら、「いい」んじゃない」


「…揚げ足取んなよ」


まったく、と言いながら箸で大根を摘まもうとすると隣りから感じる視線。

ハッと彼女の方を見ると、キラキラした光を惜しみなく俺に向けていた。


「…なに企んでやがる」


「なによー。何も企んでないわよ」


「何も企んでない奴がニヤニヤするか」


「ニヤニヤなんてしてなーい」


なんだかすごく楽しそうだ。箸と器を床において、じとっ、とした目を向けると何か感じ取ったのか、彼女は大きな瞳を右へ左へ動かし始める。


「…ねえ、」


「ん?」


その瞬間、バッと俺の方へと突き出された彼女の両の手を反射的に掴まえる。

そんな俺に彼女はいたく心外な表情を浮かべるもんだから、白い指先の向かった先を辿っていけば、そこにあったのは。


「……おい、かごめ」


「えっ?」


「なに触ろうとしてんだよ」


「だって、久しぶりに…ね?」


「ね、じゃねえよ。ぜってえ触らせねえからな!」


彼女の指先が目指したのは、俺の耳だった。


「ねえ、お願い!」


「だめだ!」


「双子ちゃんはいいのにっ!?」


「おめえはガキか!!」


「子供だもん!まだ18だもん!」


「だもんじゃねえっ!そりゃ立派な大人だっつの!」


どうやらかごめはどうしても触りたいらしい。しかし俺としても、ハイそーですか、と触らせるわけにはいかない。

何故か。とにかく俺は耳に触られるのが嫌いだからである。何で嫌かって、嫌なもんは嫌なのだ。

ガキのすることならまだ許せるが、かごめにされるとなると……話は別だ。


「オラ、この話は終わりだ」


「……」


そしてその時のかごめのモヤモヤが夜まで続いて、冒頭に戻るのである。


「言いたいことあんなら言えよ。ほら」


「ひゃなひへー!」


「ん」


パッと手を離せば、間を置かず伸びてくる腕をはいはいと捉える。


「諦めろっつの」


「こうなったら意地でも触ってやる!」


「おめえも頑固だからなあ…」


こうなってしまったかごめを宥めるのは非常に時間がかかる。最近それの対策案として、三つあることが分かった。


そのいち、


「あー分かった分かった。いつかな、いつか」


はぐらかす。


「本当に?」


「おう」


あまり熱心でないときには大体これで収まる。


「いつっていつ?」


「…いつかはいつかでい」


「やだ。無理。今!」


が、今回はそんな簡単にいかないらしい。俺は駄々をこねるように頭を振るかごめに布団を掛けた。


そのに、


「ダメだっつの。オラ、ガキはねんねの時間だぞ。さっさと寝ろ」


強制終了。


「子供扱いしないでよ!大人なんだから!」


「お前、さっきと言ってること違えぞ!」


「さっきはさっき。今は今!」


「ずっりい…」


「お願い!一回だけでいいから!」


何故かかごめは俺の耳にかなりご執心である。ひとつ溜め息をついて、布団から顔を出して睨んでくる彼女の鼻をつまむ。

仕方ない。今回ばかりは奥の手を使うしかないらしい。


「…しゃあねえな。触らせてやるよ」


「え!ホント!」


「おー。ただし、」


「へ…」


布団にくるまる彼女を布団ごと引っくり返して、その上に覆い被さる。

そのさん、


「お前が最後まで気絶しなかったらな」


実力行使。


「え…ええ…?」


「んだよ、自信ねえのか?」


「う…そ、んなことない…けど」


「止めるか?俺は別にいいけどよ」


「……絶対触らせてくれる?」


「かごめ次第だな」


そう言いつつ、掠めるだけの口付けを落とす。

嫌がるわけでもなく、逃げるわけでもなく、寧ろ唇を受け入れてくれたっつーことは。


───案外、乗り気なんだろ


「ぜった、い…だからね!」


「へいへい。ま、せいぜい頑張れ」


彼女の細い顎の線をなぞって唇を落としていき、首もとで軽く歯を立てれば、ピクリと強張った華奢な肩。


「んだよ、やけに敏感じゃねえか」


「なっ…そ、そんなことない!」


「おっと、」


この期に及んで、まだ耳を狙ってくる辺りがかごめらしい。
そんな姿を見せられては、こちらも本気を出させてもらうしかないではないか。


「お前も大概しつけえな」


笑いを堪えながら、捉えた両手首を彼女の頭上に片手で縫い付ける。


「しかも約束が違えし」


「しらない!」


「っほおー」


空いているもう片方の手を彼女の目の前に突き出して指を三本立てる。


「な、なに…?」


「三回我慢したら触らせてやる」


「ええ!ちょ、多、んむむ…」


文句を飛ばしてくる口を唇で塞ぎ、俺は彼女の白衣に手を掛けた。


辺りの空気の湿気具合からして明日は雨だ。かごめはそんな日、村に特別なことがない限りは家にいる。


───…思う存分させてもらうぞ


ニンマリと口で弧を描き、息継ぎをしようと口を開けたかごめの呼吸を深く、長く奪った。


かごめが俺の耳に触れたかどうかは、その日の俺の「思う存分」を想像してもらえば、特に説明はいらないであろう。























むりやり微裏というジャンルに突っ込むことにしました(*´ω`)←

みぃさま、この度は企画への参加ありがとうございました!!

休日の二人、というより休日前の二人ですね…お題に沿えてるか微妙ですが、楽しみながら書かせていただきました!!

これからの展開がどうなるかは、ご想像にお任せいたしますね!笑

それでは、みぃさま、これからもどうぞよろしくお願いします!

ありがとうございました!!^^*

20120228


あきゅろす。
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