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小説
2007.12


けんくんがアイスを買ってくれた

一緒に食べようってけんくんは俺の部屋に寄って行ってくれた


インスタントだけどコーヒーをいれて

甘くしたくてミルクと砂糖を入れる

けんくんはそのままブラックで飲んでいた


「 あー、眠い 」


『眠いの?』


「 眠い、ひざまくらー 」


『 ひざまくら? 』


「 つかれたー、ひざまくらー」



まじかよ、けんくん

つかれちゃったのね
酔っ払ってるのね


しょうがない、とベッドでひざまくらしてあげると

「 つかれたよー 」

『 つかれたねー。笹原さんとなにお話したの? 』


「んー、瞳をよろしくとかね」

いいこいいこ、とけんくんの頭を撫でた



「ごめん、なんか酔いさめてきた」


冷静にもどったのか
起き上がって煙草に火をつけた


『 そうだね、よかったよ 』



「部屋帰ろうかなー」


『帰っちゃう?』


「 うーん、明日もあるしそろそろけんけん帰ってくる 」


『 そっか、 』


「 瞳、寝れる? 」


『寝なきゃだめだから、がんばる』



「 がんばって寝るっておかしいよね 」


『 がんばらないとねれない 』


「寝れなかったらおいで、俺らの部屋」


『 笹原さんに怒られちゃうよお 』


「 じゃあちょっと瞳のこと寝かせてから帰ろうかな 」


『 寝かせてくれんの? 』



「おいで」


タバコを消して
ベッドに寝て、ぽんぽん、と隣を叩いた


『 え、なに? 』


「 おいで、寝るでしょ? 」


『 寝る。眠くない 』



「ほら」


ベッドのシーツをめくって
ベッドに寝かせてくれて
携帯でリラックスするような音楽を流してくれる


「 睡眠用のやつだから、眠くなるんじゃない?他の音とか気にならないでしょ? 」



他の音、冷蔵庫の音とか
空調の音とか

けんくんはそれをわかってくれてるんだ



音楽に合わせるようにぽんぽん、と背中のあたりを軽く叩いてくれる

普段はうつ伏せで寝たいのに
今は骨が折れているから仰向けか
右側を下にしての横向き

仰向けは本当に落ち着かないから
右向きにねると思ったよりけんくんが近かった


「 ちけーな 」


『近くしたのけんくんだよ』


「ほら、寝なよ」


顔が近いのは恥ずかしいから
ちょっと丸まってけんくんの胸の辺りにうずくまる

そうすると一番聞こえるのがけんくんの心臓の音で
それが一番落ち着く


『んー、寝れそう』


「そ、寝な」


けんくんいれば、すぐ寝れるんだよね


『 あー、けんくん 』


「どした?」


『けんくん、けんけん?まってる、あー』


「うん、部屋でね」


なんて言っているのか
眠くて自分でもよくわかってないけど

けんくんも、はやくお部屋に帰らなきゃいけないことを伝えたかった


『 だから、けんくんも、お部屋でねなきだけど、 』


「うん、瞳が寝たら帰るよ。オートロックだし」


『 うん、オートロック 』



それなら安心だ、とようやく完全に寝ることができた






ごしょごしょ、と何かの音が聞こえる

けんくんかもしれない
けんくんまだいたのかな

結構よく寝た気もする
けどまだ眠い
多分3時間とか寝たんだろう


布団がめくられて寒くて


『や、だぁ、』


布団を取り返して丸まって再び寝ようとするけど


『い、たぃ…』


寝る前に飲んだ痛み止めが切れてるのか
肋と腕が痛くて泣きそうになった


けんくんの、足音する
けんくんいるんでしょ?



まだ全然覚醒できてない頭でけんくんを探す



『 ん、ー、 』


でもやだ、ねむい、と
再び意識を落とそうとすると

布団をめくられて
寒い足になんだかくすぐられているような感覚

くすぐったい


『け、んくんー、や、ぁだあー』


やだ、やだと顔をまくらで覆った



するとしゅ、という音と共に枕を抑えている手が冷たくなった
なんだろ、水?


『 んー、けんく、んー 』


「 瞳?どうした?起きた? 」


と、けんくんの声と共に枕を取られた
やだ、まだ眠い


『い、たい』

やだ、眠い、痛い
泣きそうになった


「 痛い? 」


寝させてよ、と思ってもこれ以上寝るのなんて無理で

ゆっくり目を開けるとやっぱりけんくんがいた



「 起きた? 」



『 んー、 』


おきたけどさぁ

眠いし痛いしで涙が滲んできた
ぐしゅん、と鼻をすすりながら顔を上げる

すると目の前になんだかパネルが出されて
そのパネルには早口言葉が書かれていた


「読んで!」


『え?え、えー』


まだ頭が動き出してないからよくわからないけど


『 なまむぎなまもめなままま、なまむぎなまもみなまままぁー、あー、ぐす、やだ、もうやだ 』


「 あと1回 」


『なまむみなまもめなまままま』


「はい、しゅうりょーう」


カンカンカンと大きな音がなって
あれ、なにこれ、カメラじゃん


ドッキリ大成功、というパネルを持ったけんけん


『なんですかこれは』


「瞳ちゃん目覚めたかなー?」


とけんけんは小さい子をあやすようにいう


「瞳」


『 やだ、 』


うつされたくない、と枕を取り返して顔を隠した


「 瞳のタイムは、 」


1分13秒、とストップウォッチを見せてくる


やばい、寝起きドッキリってやつかこれ

うつされてる
しっかりしなきゃ、とようやく頭が回ってきた


「瞳、おはよう」



『おはようございます』


「 起きたねー。夢見てたかな? 」


『 いまなんじですか? 』


だめだ、滑舌がまったくない
そして痛い



でも痛がっているところ写して欲しくない、と痛いのはがまんする


「 朝の4時5分です 」


『 はやおきー 』

そういいながらも乱れた浴衣の裾を整える
やべえ、脚はともかく
胸元のサポーターとか見えそう


と、そこで一度カメラが止まった




「 はい、じゃあ梶くんのところ行くから瞳くんもちょっと見なり整えてきてもらって大丈夫? 」


『あ、は、はい』


だめだ、朝早すぎて頭もなんにも回らない



とりあえず顔だけ洗おう、とゆっくりベッドから起き上がる


「瞳、痛いの?骨?」


『やばい、いたい、けんくん』



いたい、とけんくんの胸に顔をうずめて呼吸を整えた


「 大丈夫?まってる? 」


『やだ、ぼくもいく』


さすさす、とけんくんが背中をさすってくれるからちょっと痛いのもマシになった気もする



すぅ、と肋に負担をかけないようにゆっくりと
けど深く息をすった


よし、いける、と自分に気合いを入れる



「 大丈夫? 」


『うん、いける』


まだ寝起きで滑舌よくないけど
いける





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