小説 でんしゃ どっか行きたくったって、 僕はどこも行くことなんてできないんだ しってる、そんなの でも、別にそれも嫌じゃないとは最近おもう まぁ多分諦めただけだけど 日課になっている 漫画の音読を始めた 漫画を読んでいる時が一番楽しいのは 多分僕のところに昔トキワ荘があったから 漫画をよんでいれば、どこかに行けた気分になる 沖縄か、いいなぁ ため息を吐いたら目があった あいつと 「 どうしたの? 」 『べつに』 「 べつにっておもう人がため息を付くだろうか、深刻な何かが、うちあけられないような何かがあるんじゃないだろうか」 『 ふみちゃん、深い 』 「よく言われる」 向きを変えてカタカタとパソコンをいじり出したふみちゃん ほかのみんなはどこいったんだ 「みつぞうくん、」 『は?』 「みつぞうくん、今度」 『 は?だから光蔵ってよんでんじゃねえよ 』 「あぁ、ごめん。それでさ、今度僕のところで」 この人きっと本当にごめんって思ってない だから だから毎回訂正しても僕のことみつぞうくんって呼ぶんだ 今日はしっかりメイクだってして こんなにかわいいのに みみちゃんって呼んでくれないふみちゃんはやっぱり嫌い ぷい、とそっぽを向いても 彼は気にせず会話を続けた 「京都の物産展があるんだよね、前に京都行きたがっていたよね?」 『京都いきたい!伏見稲荷とか 』 「うん、流石に実際に行く事は出来ないけど物産展で少しでも気分を、と思ったんだけど」 『いく、六本木。いつ?』 「明日から」 『じゃあ明日』 明日の予定は決まった 漫画に視線を戻してお客様が来るのを待つ 「あ、みつぞうくん」 『は?』 「明日、午前中は少し予定があるから、お昼からでも」 『だから、みみちゃんって呼んでっていってんだろ?ふざけてんの?』 「あぁ、ごめん。でも名前って大切だと思うんだよね」 『だって、僕すごくかわいいじゃん!そこらへんの女の子より!だから、可愛い方で呼んでよ』 もう怒った だからふみちゃんは嫌いなんだよ 何度いっても 何度も同じようにみつぞうくん、って呼んで 名前は大事だからって 凛太朗のところ行こうと立ち上がった すると ぐらり、と揺れる 大江戸線はカーブが多いから バランスを崩した 『 わっ 』 「 つり革に捕まらないと危ないよ 」 と、さも当然のように僕の背中を支えて 僕の手をつり革に捕まらせたのは パソコンを座席の上に置いたふみちゃん むかつく、 だからこいつ嫌いなんだよ [*前へ][次へ#] |