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小説
14


「 じゃあいきなりだけど、不二の所、全部瞳くんで歌って見て」


『 は、はい』


いきなり、
きめるさんが歌がプロだから
不二から始まる曲やパートが多かった

だから自主練はしてたし先生にも個人的に聴いてもらって確認だってしてもらってる

先生は大丈夫だ、後は慣れだ

と言ってくれたが


やっぱり不安で

きめるさんの歌声に慣れているみんなに
自分の歌声が受け入れられるか心配だった



でも、ここまできたら歌うしかなくて


イントロが流れて


始まるタイミングで大きく息を吸った

きめるさんには相当劣る

きめるさんのような重厚さが自分には無いとわかっている

コンプレックスだった女にしては低めの声でも本物の男の人にはかなわないから


声震えそうだけど
お腹から思いっきり力を出して歌った


シン、と周りが静まりかえったあとに

青学のメンバーが私に続いて歌い出す


やっぱり、私だときめるさんと違うから入りにくいんだ

実際そう言われたわけじゃないけど
落ち込む

セリフもがんばって覚えて来たしダンスも
歌も練習して来たけど
やっぱり私じゃダメかも知れない


うわ、なんか泣きそう


でもここで泣いたらもっと嫌がられることだってわかっていた

だからなくわけには行かない


先生は止めなかったからそのまま演技や歌を続けた



「不二、そこもう一回」


『はい』


もう一回、
さっきより丁寧に
声を出して


けど

「もう一回」


『 は、い』




なんども、同じ所を繰り返しやる


次もっと、優雅さ意識して
次はもっと大胆に

など、
多少の指示は加わり変わるものの

同じ所を何度もだ


自分のせいで進まない


結局20回近く同じ所をやって一旦休憩となった


最後の方は自分が迷惑かけているという申し訳なさから声が震えそうになるのを必死で耐えていた



「すごいうまいね、瞳くん」



『いや、迷惑かけて申し訳ないです』


と、つっちーさんが励ましの声をくれたけど
褒められても謝ることしかできなかった


歌いすぎてどこを改善すればいいのかもよくわからなくなった


休憩中は仮歌としてもらったものをひたすら聴いた


休憩が終わり今度はきめるさんが入ってから次のシーンに進んでいく


私と違ってどんどん進んでいくし
馴染んでいる



これは落ち込む、とずっしりと
心に負担がかかる



そのまま稽古は終わって
きめるさんはこれから打ち合わせがあるからと早々帰ってしまった

アドバイス、聞きたかったな
明日、聞こう


先生に聞いていいかな

怒られないかな、そんなこともわからないのかって


でも、わからなきゃ練習もできないから

と、腹をくくって先生に話しかけにいく


『あの、』


「おぉ、なかなか良かったぞ、後は慣れと最後の方が声でてなかったからひたすら稽古だな」


『え、でも、もっと、』


「あぁ、直す余地もあるが、お前の良さを出していけ。お前はキメルと違うからな」


違う、きめるさんと違うとかじゃなくて…

『 自分の声が、浮いていた気がしたんです。馴染めなかったんです 』


「あぁ、異質だったな、お前の声。そのせいか俺も色々試してみたくなって何回もやらせちまった」



先生は最後に自信持て、と私の頭に手を置いて帰ってしまった


自身なんて、持てるはずなかった




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あきゅろす。
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