小説
浅葱
『 あ、 』
「 ぁ、っ 」
今日から学校だった
新しい学校だ
しかし、学校の目の前で彼に会ったのだ
昨日の彼に
ゆらり、と彼の目が揺れて一瞬黒くなる
彼の中の妖夢が暴れ出してしまう
「 君もこの学校だったのか 」
ぱちん、と片目を抑えて笑顔を作った彼
『 今日から、 』
「そっか、よろしく」
と、笑顔を作って差し伸べた彼の手をよけて門をくぐった
「 職員室まで案内しようか 」
彼の目からは黒い光は消えていた
一歩歩み寄ってくる彼から
一歩遠ざかった
『 いい、一人で行ける 』
「 場所、わかるかい 」
『わかる』
すたすた、と彼から一定の距離を保つように少し早めに歩くけど
もう、人間と同じようにもどった彼は
私の後ろを着いてくる
「 ひとつ忠告しておくと、君がむかっているのは職員室と反対方向だ 」
『知ってる』
と、Uターンをして職員室を探す
彼の横を通り過ぎるとき
彼は私の腕をつかんだ
パリパリと彼の手は電流を帯び
爪が黒くなる
「怖い思いをさせてしまって申し訳ない。けど、僕は君に興味がある」
『 ちがう、悪いのは私だから 』
「眼鏡の美少女が悪いわけ無いだろう」
その眼鏡の、という言葉は昨日聞いた
なんなんだ彼は
眼鏡が好きなのか?
「 よって、僕は眼鏡美少女の役に立ちたい。だから手始めに君を職員室に案内しよう 」
なんで、私なんかに関わるんだろう
こんな人、今までいなかったのに
パチンっ、と静電気のような電流が私の心臓に走った
なんだ、今の
彼が掴んでいる腕から
流れて来たのだろうか
空は晴れ渡っていて
浅葱色をしていた
『職員室に、案内してほしいんだけど』
「まかせてくれ」
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