小説 濃紺 小さい頃からよくわからないものが見えた おばけか それすらもよくわからない 人間だと思ってても豹変して襲って来るものもいる 小さい頃はお兄ちゃんが守ってくれた 俺らは鬼だから 他の人間より周りに注意しなきゃいけない 誰も信じるな、鬼の妖気に当てられた奴らが攻撃してくるぞ けど、 お兄ちゃんは急に消えたのだ わたしを残して だから、自然に覚えたのだ 戦う術を 『ぅぐっ』 日本刀が強い力で弾かれて、尻もちをついた これはもうダメかもしれない 短い人生だった しかし、これで一族の血は途絶える だから、これ以上鬼の呪いを受けた一族が わたしのような人間が生まれなくていいということだ わたし自身はもっと生きたかったけど この歳で死ぬのも きっと呪いのせいだろう 濃紺の空は曇っていて星も見えない ずり落ちかけている眼鏡を上げて わたしには同世代の男の子にしか見えない敵から放たれるであろう攻撃に備えた しかし、 「 ぁっうぁっ 」 と、苦しそうな声が聞こえてうっすらと目を開けた 「 ご…め、すぐ…お、さ…から 」 と、途切れ途切れに話しかけてきた 人間なのか、わからない 「っは、ぼくが、めがねの、美少女をきずつける、わけに…いかない、だ、ろ」 とさっきよりも聞き取れる声で意味のわからない言葉を紡いだ 何?眼鏡? そして、シュー と彼の体から煙がでて 黒くて長い爪が消えていく 人間と違う肌の模様が無くなる 目の黒い光が消えていく 「っはー、」 彼が長い息を吐いてから 「ごめん、もう…落ち着いたから」 と、息を切らしながらも尻もちをついている私に手を差し伸べてきた どういうことだ 人間なのか、それとも人間以外なのか その手を掴んでいいのか 『 あなたは、人間なの? 』 「 違う、半妖だよ 」 『 人間じゃないの? 』 「うん」 人間じゃないと肯定して笑った彼は なんだかさみしそうだった きっと悪いことを聞いてしまったのだ でも、その彼の笑顔がなぜか脳裏に焼き付いて だからか、彼の手を掴んだ しかし、バチンッと電気が走って 彼の手にまた模様が浮かんで 黒く尖った爪になる あぁ、ダメだ 彼には触れない 『 ごめんなさい 』 彼の手を掴まず、そのまま立ち上がった 「…驚いた、」 『なんで、』 「君は僕の手を掴まないと思った、人間じゃない僕の手を」 と、改めて言い直した彼 『人間か人間じゃないかなんて、私にはわからないから 』 弾かれた日本刀の方に手を伸ばして日本刀を封印してブレスレットの形にもどした 「 君は異界士か?」 『 あなたは、私が人間に見えているの?』 私はただの一般人そうでありたいとは思っていた 「あぁ、眼鏡が似合う美少女に見えている」 変わっている 私に触ったらあなたは人間で居られなくなるのに それなのに私のことを人間に見えているといった 「 異界士じゃないのに、妖夢との戦いに慣れているようだね 」 『ようむ?なに?それ』 「妖夢を知らないのか?」 『 あの、おばけみたいなの?』 「 おばけか、まぁそうだな 」 『私はそれを、妖夢を煽ってしまうから、今までいっぱい戦ってきた』 だから、戦いに慣れているのだ 「妖夢を煽る?だからか、僕がこの妖夢を受け入れてから暴走することなんてなかったのに」 そういえば、彼は半妖と言っていた 半分は人間で半分妖夢ということか 『迷惑かけてごめんなさい』 「違う、迷惑かけたのは僕の方だ。急に攻撃してごめん」 違う、それも含めて すべて私のせいなのに 彼が、自分の責任と感じてしまったのが申し訳なくてその場から逃げ出した [*前へ][次へ#] |