小説
09
いよいよミュージカルへの練習の始まりだ
緊張する
とてつも無く緊張する
笹原さんから大量に送られてきた練習着のジャージと胸を隠すようのサポーター
そして、黒いタンクトップが何枚もとボクサーパンツ
後女の子用の髪型のウィッグ
これは経費で落ちたのだろうか
笹原さんの財布が少し心配になる
サポーターについて聞かれたら
あばらが弱いからしていると答えろと言われた
なんだそれ
それは日常的に見られる可能性があると言うことなのだろうか
たしかに、向こうで着替える事もしょっちゅうだろう
練習の初日は緊張のせいか早く着いてしまった
髪を切られて染められ、衣装を着て撮影をした
自分で言うのもなんだが、
完全に男の子で少し複雑な気持ちになった
そして稽古をしている他のメンバーの所に合流となった
緊張するさっきから緊張しすぎて顔が引きつっている
「みんな、少し聞いてくれ!」
たぶん偉い人がパンパンと手を叩いて注目を集めた
やだやだ、怖いよ
「今日から合流すると話してた瞳さんだ、今回がデビュー作でダブルキャストから続けてやって行くことになる、わからないこととか多いだろうがみんな色々教えてあげてくれ」
『瞳です、苗字は無いです。オーディションでも言ったのですが自分はまだ人間としてできていないのでたくさん助けてもらうことになると思います。けど、精一杯取り組むのでどうぞよろしくお願いします』
お願いします、という声と拍手が起こる
もう、始まっているのに今から馴染める自信が無い
そしてすぐに稽古が再開して
今日は見学しているように言われた
今日のメニューと、紙を渡されてそれを見ているともう半分くらいの所まで来ているようだ
皆がポジションに戻り止まっていた音楽が流れはじめた
その瞬間
がらりとかわって
鳥肌がたった
まだ未完成ながら一体感が出始めているダンスを見ると
無理だ、という考えが頭を埋めつくした
無理だ
この中に入っていけない
無理だ
ダンスなんて、ただでさえやったこと無いのにこの中に入ってやっていける自信がない
やだ、無理だ無理だ
と何回も頭の中で繰り返す
曲が終わり
メンバーが半分くらいはける
「じゃあ次青学、第1幕のシーン45行くよ」
青学、私が入る所だ
青学メンバーの事は一応調べてきた
あの人が、本物の不二役の人だ
本物の不二役の人が歌い出してダンスが始まる
渡された資料を見ると
この曲は前の公演でもやっている曲だった
だからだろうか、
さっきより完成していて
さっきよりも私を遠ざけた
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