小説
アンパンマングミ
「絶対そうだってー!さっきみえたもん」
「うそー!ショック」
みんなより少し遅く更衣室に入るとざわざわと少し騒がしかった
「 ねえねえ瞳ちゃん 」
「及川くんと付き合ってるの」
唐突に聞かれて
思わず固まりかけた
『いや、ご冗談を』
「なんだー!」
「仲良いのにね」
『仲良くないですよ』
「瞳さんが相手ならまだ諦められたんですけど!」
「それわかるー」
『いや、やめてくださいって』
なんの話だろうか
やめてほしい
「瞳さんってなんで彼氏作らないんですか?」
「モテるくせにずっと1人だよね」
『いやいや、もてないだけですよー』
笑ってごまかすけど
話が嫌な方向にもってかれてしまった
『あははー、えっと、なんの話してたの?』
話を変えよう
もどそう
みんなが騒がしかった理由に戻す
「 そうなんですよ! 」
何がそうなのだろう
「徹くんの首!見た?」
『いや、見てないですけど』
「 徹くんの首筋に歯型があったんだって! 」
『へー』
「それだけ?」
『いや、そうなんだなあって』
歯型か、みんなが騒がしかった理由
「やっぱり彼女いるのかな?」
「瞳さん何か知りませんか?」
『いや、お客さんに絡まれてる時とかは募集中ですとか言ってたけど』
「まああれだけイケメンなら彼女じゃなくてもそういう相手、1人や2人や3人や4人いるよね」
「多い多い」
私にはわからない話だ、
着替え終わったからさっさと帰る事にした
『おつかれさまです』
更衣室からでるとちょうどさっきまでの話の張本人も同時に出てきた
『げ』
「なにそれ」
ごめん口が滑った
言わないけど、と彼をスルーして帰ることにした
「一緒に帰ろうか」
『 遠慮しとく 』
そう言ったのに彼はついてくる
まあ道が同じなんだけど
「お腹すいちゃった」
『 そうだねー 』
「何か怒ってる?」
『なんで』
「冷たい」
『いつ私が優しかったの?』
「んー、俺が酔った時かな」
『 覚えて無いくせに 』
改札を通ると彼も笑ながら改札を通った
いつも、ニコニコしてるんだよね
これもモテる理由か
すぐに来た電車
この時間は空いてて並んで座った
「さっき俺の話してたっしょ?聞こえた」
『してたね、みんなが』
「瞳ちゃんは?」
『してないよ』
「 なんで! 」
したくなかったから
及川くんが苦手だから
『 及川くん彼女いるの? 』
「いないよ」
じゃあさっきから隣でチラチラと見える歯型は[そういう相手]の方か
モテる男はよりどりみどりなんだな
「 なんで? 」
『 みんなが気にしてたから 』
「瞳ちゃんは?」
私は気にしないよ、
そう言いたかったけどちょっと嘘になってしまいそう
この前、少しでも私に付き合ってみようかとか言ったのに
やっぱりあれはただの冗談だったんだなとかそういうこと誰にでも言えるんだなとか考えてる自分が嫌だった
『知らないよ』
「 ざんねん 」
『そこ、赤いって』
首筋を指差していうと彼はどこ?と指さされたところを見ようとする
「どこ?見えない!」
『そこ』
携帯のインカメラを起動して確認し始めた彼
「 あ、アイツ、やりやがった 」
そういう割りには及川くんはなんだか嬉しそうだった
「今、甥っ子来ててさー、やんちゃなんだよね」
赤くなっているところ、見えたから及川くんの中では解決したのだろうか
いきなり甥っ子の話をしだした及川くん
及川くんにとっては歯型なんてその程度の事なのだ
『何歳?』
「 4歳 」
まだ小さいんだ、かわいいだろうな
写メみる?と見せてくれた画面
目がくりくりしてる、及川くんと同じふわふわの髪で
甥っ子と言っていたから男の子だろうけど、女の子みたいにかわいかった
『かわいいね』
「 でしょ!俺、ちょう甘やかしてる 」
お土産にアンパンマングミ買ったんだーとうれしそうに見せてきた
いや、アンパンマングミって
おれちっちゃい頃すきだったんだよねー
わたしもすきだったよ
「それでね、昨日じゃれてたら噛まれた」
『え?』
「 ここ、噛まれた 」
そう言って先ほどの首筋の歯型を指差す及川くん
『 あ、あぁ』
それ、違う話じゃなかったんだ
「 こんなとこに歯型つけるとかありえない」
ありえないとか言う割りにはやっぱり嬉しそうだった
相当、溺愛しているようだ
「機嫌良くないの治った?」
『 え? 』
「瞳ちゃん、怒ってたのこのせい?」
『何言ってるの?』
「あ、やっぱり違うか。そうだったら嬉しいなって思って」
『なんで?』
「 んー?やきもちやいてくれたのかなって 」
なんで、私が及川くんの歯型にやきもちを焼かなければいけないのだ
意味がわからない
『やくわけないじゃん』
「 そっかー 」
アンパンマングミの袋を開けながらいう及川くん
もう一袋あるから平気って
相当お腹すいたんだろうな
オレンジ味のグミ
私にどれがいいか選ばせてくれたからショクパンマンをもらうことにした
『ゆみさんが、及川くんなら彼女いなくても歯型つける人いっぱいいるっていってた』
「なにそれ、いないよ。おれ一途だし」
『 はっ 』
「鼻で笑わないでよ!」
及川くんはドキンちゃんを食べながらそういった
だって、及川くんに一途とか似合わないもん
『彼女、つくらないの?』
「つくらないよ、片想いしてるから」
嘘つき
そう言ってやりたかったけど
電車が駅についてしまった
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