小説
作曲
『 あれ、七海さん 』
「こんにちは、瞳さん」
新曲の事で事務所に呼ばれると偶然、七海さんも新曲の事だろうか
事務所にきていた
最初この子がSTA☆RISHの作曲家だと聞いて驚いた
この子の性格とはかけ離れた曲を作ると思ったから
しかし、彼女と話すうちに
芯の強さだとか、音楽が好きな心
音楽は普段内に秘めた彼女自身だという事に気がつく
「 瞳さんも新曲ですか? 」
『 まあそんな感じ、EYEの新曲 』
「 そうなんですか、楽しみです 」
にっこりと笑う彼女
私も音楽で私を表現したい
しかし、私自身を込めた音楽はプロデューサーさんにEYEには合わないと否定されてしまったのだ
『EYEだって、バラード歌ってもいいと思います』
「ダメダメ、彼女の武器はあの明るさと可愛らしさなんだから。彼女に暗い曲は似合わない」
そうすぐに楽譜を返されてしまい多分ここで粘っても無駄だ、と楽譜をしまって部屋から出て行く
ダメだ、そろそろ限界かもしれない
最初だけ、最初だけ我慢すれば
実績が出来たら好きな曲が作れて
好きな曲を歌えると思っていた、
このスタイルをはじめて今年で7年目、
いつもなら、ため息をひとつ吐いて新しいアップテンポの曲を作るだけだった
でも、何故か今日は
彼女にあったからかもしれない
私と同じ、
いや、私と同じだった彼を輝かせている曲を作っている彼女に会ったから
考えないようにしてたけど
心を乱されたようだ
下を向いて、泣きそうな顔を誰にも見られないように足早に歩く
ドン、と衝撃が走って
荷物が散らばった
先ほど没を食らった楽譜も、散らばった
下を向いてたから、人が来ているのに気づかなかった
『すいません、』
ぶつかった衝撃でギリギリまで溜めていた涙がこぼれる
「 すいません、こちらもよそ見をしていたので 」
そう言って楽譜を拾ってくれる男の人
いま一番会いたくなかった人とあってしまった
ボロボロ、と涙は止めようとする意思とは反対にあふれ出す
私が泣いていると気づいて少し彼が動揺しているのがわかる
「え?あ、すいません、どこかお怪我でも?」
『 大丈夫です 』
彼に顔を見られたくない
下を向いたままごちゃごちゃに荷物をバッグに詰め込む
「 あの、これよかったら 」
そう言って下を向いたままの私の視界にハンカチが差し出された
少し迷ってから
『すいません、 』
それを受け取る
散らばった物は拾い終わった、後は楽譜だ
1番近くに落ちていた楽譜に手を伸ばすと
拾うのを手伝ってくれていた彼の手と私の手が重なる
『あ、』
見えなかったから少し驚いて顔を上げてしまう
バチっ、と音がするほどぶつかってしまった私と彼の視線
そして、彼の目が驚きで見開かれるのがわかる
やばい、
とりあえずここから逃げ出したかった
荷物を持って一目散にその場から離れるために駆け出した
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