小説
10
「おう」
待っていてくれたみたいだった
ふとテレビに目線をやると俺の好きなアイドルグループがでていた
しかし俺の推しメンは残念ながら出てなかった
まぁ、推しメンがでてたら俺が見逃すはずがないのだが
『宮地さん、』
ぶおーとドライヤーを当てていると背後から声が聞こえた気がして振り返る
『これ、宮地さん?』
「うあっ」
瞳が指差したのは写真立て
俺の親は家にいない分
何かあるたびに写真を撮る
そして飾る
『 なんか小さいですね、かわいい 』
「あんま見んな、刺すぞ」
『だってこれ、小さいですね』
指さされた写真は小学校の高学年のやつ
中学から急に伸び出したからな
小学生までは常に平均以下だった
そしてこの童顔のせいでよくきよちゃんだとか女扱いされた事もあった
かわいいとはめっきり言われなくなった
こいつは昔から可愛がられたんだろうな
「行くぞ」
『 あ、はい 』
適当に着替えて財布と携帯だけポケットに突っ込んだ
「 あ、お前何できたの? 」
『車です、近くまで送ってもらったんです』
「 そっか、ならよかったわ 」
またこいつに車を出してもらう羽目になるかとおもった
流石にそれはかっこ悪すぎんだろ
キーケースを持って家を出た
瞳を車に乗せエンジンをかける
「さっむ、ファミレスでいいか? 」
『 あ、はい 』
エアコンを強めながら聞いた
あ、やべ、CD入れっぱなしだ
車にいれてある他の曲を流す
ここら辺なら24時間営業のファミレスがあったな
車を走らせ
近くのファミレスに向かう
腹減ったなー、何食うかな
『 宮地さん運転上手ですね 』
「 普通だろ 」
また咳が出てきた
やべ、密閉空間なのにマスクしてねえ
5分もかからずについたファミレス
深夜だからかなりすいている
喫煙席でいいか確認をとって席に座る
「何食うかなー」
かなり腹減った
よく考えれば今日はまだゼリーしか食ってなかった
ただ病み上がりで肉は食いたくねえよな
「 決まったか? 」
『 あ、はい、これにします 』
フレンチトーストを指差した瞳
確かにここのフレンチトーストはうまい
俺も甘いもん食いてえ気がしたがうどんを頼む事にした
「 こんな時間まで付き合わせちまったけど明日とか平気なの? 」
頼んだものが運ばれてくる間、
特にやる事もなくする世間話
タバコを吸いながら何と無く質問してみた
大学はもう春休みだがこいつは大学生では無いのだ
『 はい、明日はもう一個の方のバイトだけなので 』
「掛け持ちしてんのか、なにやってんの?」
『写真館です、こっちは昼間だけなので』
「 へー、写真とってんの? 」
『 私は撮影じゃなくてメイクとかです、後衣装の整理とか 』
「へー、すげえ」
『いえ、アシスタントですから全然』
こいつの事全然しんねーよな、よく考えれば
「高卒で働いてんの?」
『違いますよ、専門はいってました』
「なんの?」
『美容です』
「あー、だからメイクとかやってんのか」
『はい、一応美容師もちょっとやってたんですけど合わなくてやめちゃいました』
「すげえ、かっこいいじゃん」
『いえ、すぐやめちゃったんでなんにもできませんて』
苦笑いをする瞳
確かに美容師は続かない人が多いみたいだしな
「でもメイクやってんならまだ美容すきなの」
『 まあ一応、でも接客は苦手なんで 』
こいつには悪いが思わず納得した
確かにこいつ接客苦手そう
『 まあ私が耐えられなかっただけなんですけどね 』
「髪とか切れんの?」
『切れなくは無いです 』
「じゃあ今度俺の前髪切ってくんね?」
邪魔なんだよな、目に入って
今日休んだ分の代勤とかあってしばらく美容院いけそうにねえし
『いいんですか?』
「 いいからいってんだろ 」
あれ、なんかこいつちょっと嬉しそう
『ありがとうございます、切ります』
「おう、じゃあ明後日何時入り?」
『 17時入りです 』
「俺も、じゃあ明後日な」
早めにいくから、と付け足すと
はい、とじっと目を見ながら返事をした瞳
そして、タイミングよく
注文したメニューが運ばれてきた
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