小説
12
主任って平成生まれやったん?
タバコを吸いに屋上に行った時だ
ちょうど主任もタバコを吸っていた
だから何と無く、この前見てしまった紙の事について話題にした
主任は持っていたタバコをぽろりと落とした
『 なんで知ってるのよ 』
「この前、健康診断の紙に書いてあったやろ?」
『あぁ、あれ』
主任は新しいタバコを取り出し火をつけた
「 なんで前歳聞いた時嘘ついたん? 」
『いいじゃない別に、みんな上司は少しでも歳重ねてた方がいいと思ってるでしょ?』
そう言われて初めて気がつく
俺からしてみれば26も24もお嬢ちゃんだが
宍戸や岳人、
ましてや日吉にとったら
26と24はえらい違いなのだ
『誰にもいっちゃダメよ』
このお嬢ちゃんも必死なんやな
普段からそんなそぶりは一切見せてないと思っていたが
年齢や、このしっかりとした話し方に目線も、
舐められないために必死に作り上げているのかもしれない
ただでさえ現場に女性が入るのを嫌がる古い考えの持ち主だっている
そう考えたら
きつめのメイクも、今吸ってるタバコも
みんなで夕食を食べに行った時のビールだってこの子の好みじゃないのに無理して虚勢を張っているような気もする
まぁ疑いだしたらきりが無いのだが
「どうして主任は刑事になったん?」
『 どうしたのよ、いきなり 』
「主任みたいなのが刑事になるなんて辛い道のりやろ?似合わへんもん」
つい本音が漏れる
すると主任は俺の事をきつく睨んだ
『わかってるわよ、私みたいなのが似合わない事もなめられてる事も運だけで上がってきたって言われてる事も』
「 誰もそこまで言ってへんで? 」
やばい、
主任って俺らが思っている以上に脆いんちゃうやろか
自分を責め続けて
ほんまに、いつ潰れてもおかしくない
そんな主任に今の言葉は失言だった
上手く隠しているつもりでも未だに主任をお嬢ちゃんと見ている事が言葉に現れてしまったのだ
たしかに主任はすごい
カンと運の良さは異常に優れている
まぁそのような第六感的なものだけではなく俺らに見せないだけで必死に捜査しているのだろうが
『 いくら似合わなくても私はあなたの上司だわ 』
「 わかってますよ 」
『 だから、舐められるわけにはいかないのよ 』
あなたたちの上に立つものとしてね、
とつけたされ主任の決意の重さを感じた
主任、がんばってるやん
鑑識の幸村にお嬢ちゃんと言われたら必ず訂正するのも
主任のためだけじゃなかったのだ
『わたしが刑事やってる理由だけど』
「はい、」
『忍足にはまだ言わないわ』
「 なんでや、 」
『舐められたく無いからよ』
その言葉に
はは、と乾いた笑いが零れた
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