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小説
03


ぴちゃん、と前髪から滴るお酒は冷たくて体温を奪われる感じがした


愛想が悪い
前の職場からずっと言われ続けていること

私なりに努力もしてる
改善しようとも思っていた

ただ、もう諦めてしまった
これが私なのだ

怒られるかな、
さっきも少し怒られてしまった
教育係の宮地さんに
言葉はきつかったが
目が怖くなかった
だから少し驚いてしまった


バックルームに置いてあるタオルで濡れた髪の毛を拭く

『酒くさ、』

まつげエクステでよかった
つけまつげとかマスカラだと顔がドロドロになってしまっていただろう

漫画でヒロインを守るためにヒーローの男の子が酒をかけられるシーンがあったけど
実際かけられたらあんなスマートじゃいられない

アルコールの匂いもするし
髪の毛がベタベタするし

伝ってきたお酒が目に入って痛い
タオルで拭いてもしみて涙が出てくる
コンタクトをしているせいで余計涙が出る


そのときガチャッとドアが開く音

「お前なあ…、って大丈夫か?」


『…宮地さん?』

なんだかすこし宮地さんが慌ててる気がした


「あれは、お前が悪いんじゃねーしそんな気にすんな、近くで見てた店長が言ってたんだから大丈夫だって」

そう、励ましてくれてるのだろうか
怒られなかった

『はい…すいません』


「だから…いつまでも泣いてんじゃねえよ」

そう言ってタオルでぐしゃぐしゃ頭を拭いてくれた

あ、宮地さんって身長高いし手大きい
今まであんまり近くに居なかったからわからなかった


でも

『え、と…泣いてないです』


「は?」

『ビール、目にしみて…』


「まぎらわしーな!轢くぞ!」

え、轢く?殺人じゃん…

涙がようやく止まってきた目で宮地さんの顔を見上げようとしたらタオルで見えなくされてしまった


『すいません』


「目、赤えけど」


『コンタクトが痛くて』


「外せば?」

たしかにビール漬けにされたコンタクトをしとくのは目には悪い気がした
ただ洗浄液も換えももってないから外したら見えなくなってしまう


『外したらなんにも見えないんで』

「いいだろ、もう帰るだけだし、あ、店長がオレらもうあがっていいって」

『そうですか』

なら外してしまおうか帰るだけならなんとかなるか


もう目が限界だ

先に男子更衣室に入っていった宮地さん

私も着替えるか、女子更衣室に入り
ワンデーのコンタクトをゴミ箱に捨てた




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