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小説
No.02


誰だ、と言われましても


『えっと…ただの通りすがりの者です』


それ以外の答えは思いつかなかった


「…そうか、家の者ではないのか。驚かせてすまなかった」


『あ…はい』


そういって私の腕を話した


家の者?
なに、この人自分の家の人もわからないの?


『…記憶喪失か何かですか?』


「は?んなわけ無いだろ」


『だって家の者がどうとかって…』


「父が俺を探させてるからな、家の者総出で」


総出でって、
それって
家の者が覚えられないほどたくさんいるってこと?


『なんでですか?』


「俺が家を飛び出してきたからな」


この人の服装から見てもわかるように
これはまさしく

お坊っちゃまの家出だろう…



『そ、そうだったんですか』


これは関わらない方がいい
自分から近づいていってなんだけど関わるのは危険だと察した


お坊っちゃまだったらお金もたくさんあるだろうし
ほっといても死なないだろう


『でも、どうしてこんなところに?』


「侑士のやつ…友達が電話に出なくてな。小銭も切れちまった」


小銭って…なに、公衆電話でかけたの、この人

『携帯は?』


「あーん?そんなもんGPSで居場所がバレるだろう?置いてきたに決まっている」


『そうですか…』

一応考えて家出してきてるんですね、
というか友達が出なかったから行き場を無くしたということだろうか


『携帯、貸しましょうか?』


「本当か!?」


『あ、はい』

それぐらいなら…

ここで会ったのも何かの縁だ
携帯を貸すぐらいどうってこと無い



携帯を差し出すと
番号を押す彼

しばらくコールの後出たのか


「お前なんで電話に出ない!?」


いきなりキレ口調で話し出す


「あーん?俺様に決まっているだろ、今どこにいる?」


俺様とか言ってる人生で初めて見た


「今すぐ帰ってこい、お前の家に泊まる」


うわ、すごい横暴


「お前の家の前のチューリップ公園にいる、何!?そんなにかかるのか!?…わかった、待っている」


そういって電話を切った彼

どうにか通じたようだ
ちなみに友達の彼もこの近くの家みたいだ
電話を受けとる

『お友達、どうでした?』


「飲み会で気付かなかっただと、今から帰るが1時間ほどかかると言われた」


まぁ帰ってくるなら大丈夫だろう
しかし1時間は少し長いな、もう夜も遅いのに


『あ、よかったらこれどうぞ…待ってる間寒いから』


さっき間違えて2本買ってしまったココアを差し出す


「悪いな」


そういってココアを受け取った


どうしよう、この人おいていっていいの?
なんか1時間置き去りのこと知っていておいていくのはかわいそうな気がする


ていうか
お坊っちゃまにコンビニのココアなんて口に合うのだろうか


『あ、ココア…まずくないですか?』


「なぜだ?悪くないと思うが?」


『あ、そうですか、よかった』



というかこの人お金持ちなのになぜ公園なんかで寝ていたのだろう
友達が電話出ないのならホテルでも行けばいいのに


「どうした?…突っ立っていないで座ったらどうだ?」


そういい、ベンチの隣を開けてくれた彼


『あ、すいません』


と、思わず座ってしまったが
あれ、なんで座ってんの
私そろそろ家帰らないと
明日仕事が
あれ、これ流れで一緒に彼の友達待つの?


「ブルガリアヨーグルトじゃねぇの!侑士の家で何度か見たことがあるがこのサイズを見たのは初めてだ!しかもブルーベリー味だと!?」


え、ブルガリアヨーグルトってそんなに魅力的だったの?

侑士、とさっきも言っていた、多分友達だろう
きっと友達の家にあるのは普通のスーパーとかで売っている大きいサイズなんだ
コンビニで売っているのはこれが主流だけどこれを見たことが無いなんて

さすがお坊っちゃま、こわい






『あ、の…』


「なんだ?」


『えっと…友達待たなくても、ホテルとか泊まったらどうですか?』


「カードなんて使ったら居場所がバレるだろう、携帯と一緒だ」



『そ、そうですね』


現金じゃなくてカードなんですか

もうお坊っちゃま怖い!わからない!

ということはこの人今お金持ってないんですね

そう考えるとなんだかかわいそうになってきた


『これ、明日の朝ごはんのつもりでしたがあなたの朝ごはんにしてください』

かわいそうだから明日の朝ごはんのために買ったヨーグルトをあげた



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あきゅろす。
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