2 「霧島 那津、一年です。」 俺は二人に続いて名前を名乗った。 「へぇ、那津っていうんだっ!!っていうか那津って呼んでいい?」 「あ、はい。どうぞお好きに呼んで下さい。」 「うん、そうする!でもその敬語は堅っ苦しくない?」 「いえ、ずっとこの話し方だったので……癖で。」 なわけがない。 俺は元々そんな喋り方じゃないし、敬語なんてほとんど使わないんです。 ………こんな格好だから仕方がないけどね。一応変装だし。 「それより「「「「キャー――――Vv」」」」 まさに耳にキィーン、ってやつ。 な、何?男がキャーって…。此処、男子高だよな?黄色い声ならぬ黄土色? って違う。 さっき二人が騒がれていた理由を聞こうとしたら、いきなり騒がしくなった。叫びのする方を向いてみたら、食堂の入口付近に人だかりができていて、どうやらそこが中心部らしい。 「うわ、お出でなさったよ!!」 「……うっせ。」 祥は人だかりの方を見て目を輝かせ、尚樹は心底嫌そうな顔をしている。 いったい何があるのだろう。食堂の入口は生徒達で一杯で誰が来たのか、姿を見ることも出来ないが、あちこちから「奏様ぁー――!!」だとか「有貴ちゃん可愛いー――!!」なんて聞こえてきた。呼ばれている名前は二つしかないようだから二人か。 「なんだ、奏様に有貴様か。ちぇー。」 「これ以上こんな所にいたくないし帰ろうぜ。行こう、那津。」 「え?あ、はい。」 結局、俺たちは周囲の関心が違う方に向いている隙に食堂を出た。 * 食堂を出た後、二人に自分たちの部屋に行かないかと誘われたが断った。とくに祥は俺のことをもっと知りたいと最後まで部屋に招こうとしていたみたいだが、尚樹が祥を宥め、二人自室へと帰っていった。 尚樹と祥は同室なんだそうだ。 流石に今日一日でいろんなことがありすぎた。 部屋の電気を付けると高瀬君はまだ帰っていないようだった。 風呂、入ろうかな………。 洗面所に行き、鍵を閉めたのを確認してからつけていたウィッグと眼鏡をとった。 現れたのは、長い長い銀灰色の髪。 見慣れた俺がいた。 [*白][黒#] [戻る] |