大人になるその前に
08
ソファに座っていた徹が立ち上がる。
そして俺の肩を大きな手の平で掴んだ。
「なに言ってるんだ凛太朗!!」
怒りで俺の肩を強く掴んでいるのが分かる。
「ごめん。でも、これは俺自身と隆太の問題だから」
「…っ」
すこし強めに言うと、徹は酷く顔を歪めたが大人しく俺から手を離した。
「……本当に悪いと思ってんのか」
「う、うん。思ってる!」
俺が隆太に視線を戻すと、隆太に犬の耳と尻尾が生えているように見えた。
「しょうがねえな」
「じゃあ凛ちゃっ…!」
「だけど」
「なんであんなことしたのか、約束ってなんのことかを言ったら許してやる」
そう簡単に許すわけがない。
「………分かった」
「おい…!」
徹が止めようとする。
だが俺が睨むと引き下がった。
ごめん、徹。
聞かないと気がすまねえし、モヤモヤしたまんま元通りなんて無理だ。
隆太が口を開く。
「最初は普通にゲームしようと思ってたんだよ?途中で凛ちゃんを見たらTシャツが伸びてくたびれててさ……そしたら隙間からチラチラ見えてたんだ。その…乳首が」
顔がカッと熱くなる。
「なんてとこ見てんだ!!」
「これは俺のせいじゃないよー!…そんでムラッときて我慢できなくて思わず…」
ほんっとコイツは…!
怒りが爆発しそうだが、だが俺にも非があったのは否めない。
百歩譲ってだけど。
グッと堪え話を進める。
「で、約束のほうは?」
そう言うと隆太は「うー」とか「あー」とか意味の分からないことを口に出す。
「言わねえと許さねえから。言っとくけど許さないってことはお前とは顔も合わせないって意味だからな」
少し言いすぎたかもしれない。
だけどこれぐらいが隆太にはかなりの大ダメージだろう。多分。
「…っ、約束っていうのは…『抜け駆けしない』、『凛太朗には言わない』」
隆太は眉を下げながら話を続けた。
「これは昔に徹と俺で決めた約束なんだ。お互い凛太朗に向けてる感情が一緒だって気づいた日からその約束を守ってきた」
「ちょ、ちょっと待て。同じ感情って…」
じゃあ徹も…?
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