大人になるその前に
06
「…俺は許せない。こいつは俺との約束を破ったんだ。」
……約束?なんのことだ。
ずっと黙っている隆太は、自分のことを睨んでいる徹から目を逸らした。
いっそう徹は眉間にシワを寄せた。
「約束ってなんだよ」
二人の顔見たら俺の目を見ていた。
でもそれだけで、俺の質問には答えようとしなかった。
…むかつく。
俺は座りこんでいる隆太に近づいて頬を両手ではさみ、いっそう自分と目線を合わせる。
「約束ってなんだよ。言ってくれねえとわかんねえよ…!」
思わず大きい声を出してしまう。
「凛ちゃん、ごめんね、そんな悲しい顔しないで」
隆太は俺の頭上に手の平を向けた。
「待て。凛太朗に触れるな」
俺の頭を撫でようとしたのだろうか。
だがそれは徹によって止められた。
隆太も今は逆らえないのか、手を床に落とす。
「ちゃんと話してからだ。…自分のことを言うんだ。凛太朗に」
なんのことだ。
俺は目の前にいる隆太に向けてそう目で訴えた。
「…しっかり聞いてね?」
「お、おう」
隆太の珍しく深刻な顔に俺はゴクッと喉を鳴らす。
「俺は凛ちゃんが好き。友達としてじゃなく」
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