【 人間万事塞翁が馬 】
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仕方なく忍足と裏庭を進めば、大きな木の下で気持ちよさそうにジローが寝ていた。
この野郎、やっぱり式をさぼりやがったな。
「あーしゃあないな。次HRやし起こして連れてかなまずいやろ。・・・ホレ、ジロー!起き!!」
忍足がため息をついてしゃがみ込み、ジローを揺さぶる。
当然、全くと言っていいほどに起きる気配はない。
「ジロー!ほら起きや!!」
チッ、そんな生ぬるいやり方でコイツが起きるか!
「オイコラ!ジロー!起きやがれッ!!」
思い切りジローの頭をはたいてやった。
横で忍足が「うわーそりゃめっちゃ痛いで。てゆーか八つ当たりちゃうの?」とかなんとかほざいてやがるが無視だ。
・・・これは断じて八つ当たりなんかじゃあない。
「うんー、いた・・・い、Cー」
「ってまた寝るんかい!」
「起きろっつってんだろ!」
ジローの身体を勢いよく引き起こせばぼんやりと奴は目を開いた。
「んぇ?あれ、あとべじゃん・・・?忍足も・・・」
「やっと起きやがったか」
ジローは眠そうな目をこすりながらキョロキョロと辺りを見回した。
「・・・あれー?」
「どないしたん、ジロー」
「んー、女の子がいたんだけど」
女の子だと?
「何言ってんだ?」
「んーとね、お昼寝しよーと思ってここに来たら、もう女の子がいて。」
二人、と、指で示しながら言う。
「長くて黒い髪の毛で眼鏡した子と、ふわふわした髪の毛のかわEー子だった!
膝枕して寝てたから、俺も一緒に寝てたんだCー。
すごく気持ちよかったんだ!また一緒にお昼寝したい、あ、名前聞いとけばよかったー」
残念、と本当に残念そうな顔を見せるジロー。
「でもよくここにいるって分かったねー?」
「ああ、なんか紙が置いてあって・・・」
「紙ー?」
二人の視線がこちらを向く。そういえばまだ俺の手に・・・
「・・・ぐしゃぐしゃだCー」
文句を言うな。
ジローにそれを渡す。
「Aー!眠り姫だって!何それ!ドコドコ!?」
「アホか」
忍足が呆れた様に呟いた。
へー、と言いながらジローがくるりと紙を裏返した。
「『しんにゅーせーちかいのことば』」
「「!!!!」」
なにこれ?と首を傾げるジローから再び紙を奪い返す。
どう見てもそれは今日読まれるはずだった新入生代表の挨拶原稿だ。
見覚えがある。何を隠そう去年の新入生代表は俺様だった。
もちろんこんなチンケな紙切れどおりに話をした覚えはないがな。
「ってことはやっぱり・・・」
「ああ、面白いことになりそうだな」
忍足と顔を見合わせてニヤリと笑い合う。
不思議そうな顔をしてこちらを見上げるジロー。
その時、残念ながらHR開始を知らせるチャイムが無情にも鳴り響いたのだった。
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(ちょ、HR始まってしもたやんけ!!)
(テメーらがもたもたしてるからだろーが!)
(Aー!!俺のせいって何か違うCー!!)
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〜side 跡部景吾 END〜
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