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Chemical Wizard
But also stimulating
※スネイプ夢
本編とはやや外れたif話
(一応)付き合っている二人
時期不定、5年次か6年次?
バレンタインネタ








「バレンタインの起源はキリスト教の聖職者だと言いますよね」

何の前振りもなく、ユーリはそう切り出した。

「禁止されていた婚姻の儀を行って、それを讃えるのは分からなくもないですが、それが処刑された日であるというのはなかなか狂気じみてると思うんですよ」

今まさにバレンタインの贈り物を持参し、それに添えるための紅茶を入れている奴は、飄々とそう言った。
お互いその手のことを気にするような性質ではないが、雑談として持ち出すには趣味が悪い。

しかし、自分も贈り物として薬草を贈った身であるので、情緒という点では何も言えないのだが。
複雑な心境を無表情の下に沈め、供された紅茶に手をつけた。

当のユーリはというと、スネイプの横に腰掛け、薬草の詰まったガラス瓶を眺めている。
大きく開かれた目は瞬きも忘れたようにガラス瓶を捉え、口元は薄っすらと笑みの形を描いている。
自分も大概だが此奴も相当だな、と考えつつ、自身への贈り物に手を伸ばした。

平たい箱には丸いチョコレートが整然と収まっていた。
日本ではバレンタインにチョコレートを贈る風習があると、スネイプに教えたのは今隣で薬草に夢中になっている奴だ。
それに則った結果の選択なのだろう。

一つを摘まみ、口に入れる。
歯を立てると、表面のチョコレートが砕け、内側の滑らかなチョコレートが口に広がった。
香ばしいカカオの風味と、それを追って広がるシナモンの香り。
想定したほど甘くはなく、後にはほのかな余韻が残った。

「美味い」

「それは良かったです」

隣で微かに笑う気配がした。

一度紅茶で口を潤し、次の一つを口にする。
同じように噛み砕いて、舌先に乗る味が先の物と異なることに気づく。

「ユーリ、これは何だ?」

「トリュフチョコレートです。味はそれぞれで違えてますが」

先の物よりまろやかなチョコレートの味わいに、舌先でじわりと滲む塩味を感じる。
その塩味がチョコレートの甘さを際立たせ、これはこれで悪くない。

次の一つを口に入れる。
濃密なカカオの香りを追うように、舌先がピリリと刺激される。
口内の温度がじわじわと上がり、唐辛子の辛味だと気づいた。

「真っ当な物は作らんのか……いや、駄目だと言うわけではないが」

「それも考えましたが、こちらの方が受けると思いまして……それに」

そこで一度ユーリは息を吸った。
視線を向けると、抱えた膝に頭を預け、スネイプをじっと見るユーリと目が合った。

「甘いだけじゃ、面白くない」

ゆるりと弧を描く目元。
年に見合わず大人びて、時折幼子のように輝く眼差しだ。
それが今、どういう意図をもってか、スネイプへと向けられている。

短い言葉に潜む真意を、自身が正しく受け取っているかは定かではない。
しかし、甘いだけではない、という言葉は、自分たちを表すにふさわしい表現ではないだろうか。

再び正面を向き、次の一つに手を伸ばす。
白く優しい色合いのそれは、意外なほど強いアルコールと、果物のような香りを纏っていた。



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あきゅろす。
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