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Chemical Wizard
疾い鷹


ユーリはポケットからリストを取り出して、購入した物を確認した。
視線を下ろしていくと、一番下の項目に目が止まった。

「ホグワーツはペットを連れて行けるんですね」

「必要とも思わんがな……欲しいならそこで買える」

特に興味もないまま示された方を向く。

すると、店の中から何かが壊れる音がした。
思わず足を止め、そちらを凝視する。

「……何だ?」

「…………」

スネイプの疑問の声を背中で聞きながら、ユーリはふらりと店に足を踏み入れた。

壁のように積み上げられたケージの間をすり抜け、音がした方を目指す。

「あっ、お客さん、危ない!」

「は……うわっ、と!」

店員の声と共に、何かがユーリの方に飛び込んできた。
思わず受け止めるが、勢いがありすぎて後ろに倒れ込んでしまった。

ユーリの元に突っ込んで来たのは、小型の鷹だった。
ユーリの腕の中で、興奮したように暴れている。

「このっ……落ち着、け!」

翼を傷つけないように気をつけて抑え込んでいると、鷹は落ち着きを取り戻し始めた。
もぞもぞと動きつつも、琥珀色の瞳でユーリをじっと見上げるので、何となく目を逸らせず見つめ返す。
やがて完全に暴れるのをやめた鷹は、甘えるように一声鳴いて、ユーリの顔に擦り寄ってきた。

「……驚いたね。その子は今まで人に体を触らせたことがないんだよ。下手に近づけばたちまち鉤爪の餌食さ」

「……どうした」

ケージの影からスネイプが顔を出した。
ユーリが鷹を抱えて床に座り込んでいるのを見て、不審そうに眉を顰める。

「いやね、その子が逃げ出した鷹を捕まえてくれたんですよ。暴れ者で困ってたんですけどねぇ……」

鷹はユーリに嘴の下を撫でられ、機嫌良さそうに鳴き声を上げる。

「スネイプさん、ホグワーツに鷹は連れて行けますか?」

「……周囲に迷惑をかけなければ、特に罰せられることはない」

「じゃあこの鷹を連れて行きます」

「……好きにしたまえ」

スネイプの言葉で、ユーリはその鷹を購入を決めた。

余談だが、その鷹は長い間売れ残っていたらしく、かなり値引きしてもらえた。




買い物を終えたユーリは、スネイプに送られて家にたどり着いた。
一人でも大丈夫だと主張したが、結局押し切られた。

「スネイプさん、今日は本当にありがとうございました」

「……新学期までにきちんと勉強しておくことですな」

「もちろんですよ」

にこりと微笑んでみせると、スネイプは少々面食らったような表情を見せた。

よく分からずに首をかしげると、やがてスネイプはユーリと同じように挑戦的な笑みを浮かべた。

「期待しておこう」



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あきゅろす。
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