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緑龍は赤い鈴を鳴らす
人は皆それぞれ辛い過去を背負って生きている
俺達は歌舞伎町から少し離れた場所をとぼとぼと歩いた。

四計塾が見えると庭から何やら煙りが出ていた。

まさか…!?稔丸が!?

俺は直ぐさま四計塾の門を潜り抜ける。

銀時「どうしたんだァ!?」

銀時と桂も雲井の後を追うように走った。

俺は松陽先生の寺子屋は火事になり松陽先生がこの世にいなくなったのを思い出す。

俺は駆け付けた頃には寺が燃えていて銀時の身体はボロボロで泣いていた。

銀時に訳を聞いて見たが銀時はパニックになっていて中々話してはくれなかった…。

銀時達が少し成長した頃に先生を取り戻すと攘夷志士に参加した。

俺も攘夷志士に参加し色んな攘夷志士達と交じりながらも稔丸と一緒に天人を沢山斬った。

松陽先生を助けまたあの幸せな日常が戻って来る事を信じて…。

だが、俺達の思いは届かなかった。

銀時に告げられた…。

銀時「まだ生きてると思って助けに行ったら……死んでた…」

俺と稔丸はそれを聞いて唖然とした。

俺はそれが信じられなくて銀時の胸倉を掴んだ。

龍「嘘だろ…嘘だって言ってくれよ!!うそっ…!!」

高杉に肩を掴まれ怒鳴られた。

高杉「嘘じゃねーよ…!!見たんだァ…松陽先生の首だけが帰って来ただけだ……」

俺はただ鼻水を垂らしながらも声をつまらせて泣く事しか出来なかった……。

自分の無力さに憎んだ…。

高井「ごほっ!ごほっ!そこに居るのは龍男ですか?」

息軒先生は何やら紙を燃やしていたらしい…。

火事じゃなかったのかァア!!
良かった…良かった!

俺は息軒先生に呼ばれ返事をした。

龍「はい!!龍男です!!」

庭全体が煙りだらけで息軒先生の姿が見えなかった。

高井「ごほっ…ごほっ…水持ってきてくれませんか?火を消したいです」

銀時「どんだけ煙ってんだよォオオ!!忍者が持ってるあの煙玉見てェじゃねーか!!」

銀時は華麗な突っ込みをしていたが俺は敢えて無視し井戸水の方へと行った。

銀時(突っ込めよォオオ!!俺泣くからな!?Sは打たれ弱ェんだよ!?)

桂は大声で何やら叫んでいた。

桂「エリザベスぅうう!!お前の出番だァアアアア!!」

門から白い変な物体の奴が出て来て黄色い珈琲豆の口から大量の水を発射した。

桂は当たり前の様に感心してエリザベスを褒める。

桂「さすがエリザベスだ!!」

銀時「何がさすがだよォオオ!!消防車並の水の威力じゃねーか!!怖ェよ!!」

俺は結局井戸水に行かず息軒先生の元へと駆け寄った。

息軒先生の長い髪は濡れていてずぶ濡れだった。

高井「あ〜。濡れちゃいましたねぇ…」

高井息軒(たかいそっけん)…俺が現在通っている四計塾の師だ。

後ろに居る銀時と桂は目を見開きながら息軒先生の顔を見ていた。

そして…銀時が小さく呟いた。

銀時「しょう…よう…先生?」

息軒先生は穏やかににこりと笑う。

高井「龍男と初めて会った時に同じ事言われましたよ。ふふ…私は松陽ではないですよ」

息軒先生の容姿は松陽先生と全く同じで顔も瓜二つだが決定的に違うのは息軒先生は左目には包帯で巻かれている。

息軒先生は幼い頃に疱瘡に掛ってしまい左目が潰れてしまったらしい…だから包帯でそれを隠した。

息軒先生はまぁいいやと顔をして銀時達に近付いて自己紹介をし始めた。

高井「初めまして。高井息軒と申します…宜しくお願いします」

高井息軒は銀時と桂の頭を両手で優しく撫でた。

俺と会った時もそうだった…自己紹介した後、頭を撫でてくれた時を思い出す。

息軒先生は撫でるのを止め銀時と桂の頭を優しくポンポンと叩いて微笑む。

高井「さ…次は貴方達が私に自己紹介をする番ですよ」

銀時達はぽかんと口を開けっ放しにした後我に返った。

銀時「さ…坂田銀時…」

桂「か…桂小太郎です」

銀時と桂は何だかぎごちなく自己紹介を済ませた。

一人だけプラカードで『エリザベスです』と自己紹介していた人が居たけど無視。

高井「私は着替えに行きますね?龍男達は部屋に行って下さい。龍男が案内してくれますから大丈夫ですよ」

息軒先生は小走りに四計塾の中に入った。

雲井は銀時達の顔を見てニヤリと笑う。先に口を開いたのは銀時だった。

銀時「何笑ってんだよテメー!!いやいや…そんなありえる訳ねーよな…な!?ヅラ!?」

桂「な、何で俺に聞くんだ!?ヅラじゃないって言っているだろ!!」

明らかに二人共動揺している。

俺だって最初は目を疑った…松陽先生が生きてるって思うといそいそとしていられないはずだ。

銀時は真剣な眼差しで俺の顔を見てきた…その眼差しは鋭く痛かった。

銀時「訳を聞かせて貰おうじゃねーか?龍男君よォ」

俺はぎくりとしたが平静な振りをして無理矢理笑った。

龍「分かった…先ず部屋に入ろう…」俺はぎごちなく歩き四計塾の家の中に上がり込む。

草履やら靴やら脱いでぺたぺたと廊下を歩き寺子屋の教室に入った。

銀時と桂は懐かしそうな顔で教室内をキョロキョロと見る。

四人で適当にドカッと座った。

銀時「龍男…何でおめェは隅の方に居んの?」

龍「ヅラのシャンプーの匂いが嫌いだからだお前ルックススパーマッチ使ってるだろ…?」

銀時「関係ねェェェだろ!!ルックススパーマッチってどんなシャンプーだ!!んなのどうでもいいんだよォオオオ!!」

桂「ヅラじゃないって言っているだろ!!…ルックススパーマッチナメるなよ?貴様の使っているシャンプーはヅバギか…フッ…臭いな〜」

銀時「うっぜェよ!!こいつ等うっぜェよォオオ!!シャンプーじゃなくて石鹸で頭洗えやお前等!!ハゲんぞ!!坊主になんぞ!!」

外から何やら声が聞こえたので俺は咄嗟に声がする場所にまで行った。

勢い良く襖を開けると息軒先生の周りを囲む奴等が居た。

雲井は裸足のまま赤い鈴の付いた刀を抜き右、左へと振り回す。

風を斬るようにブンブンと振り回すと高井息軒を囲んだ数人がその場から避けた。

雲井は高井息軒を背にし数人の男達に刀を向けた。

高井息軒は雲井の肩を掴み窘める。

高井「龍男!刀を仕舞いなさい…私は大丈夫ですよ!」

一人の男が目の前に出て腰に付いている刀を抜いた。

?「おい龍男…オメェの師(せんせい)が刀仕舞えって言ってるだろォが…仕舞えや」

龍「誰が刀を仕舞うかコノヤロー!!」

銀時「俺の決め台詞取るんじゃねーよォオ!!バッキャロー!!」

こいつ等が何しに来たのか分かっている。

元々はこいつ等と一緒に俺は色んな所で倒幕した同志だった。

だが…こいつ等は…!!

桂「貴様等は甘藷(さつまいも)藩か…?貴様等は幕府側に行ったのではないのか?」

桂はゆったりと教室から出て庭へと足を踏み入れる。

銀時「薩摩芋?何で食いもんを藩の名前に入れたんだよカッコ悪ィ」

甘藷「薩摩芋じゃねーよ!!上の奴が薩摩芋が好きだからそうなったんだよ!!ククク…さすがだな〜桂小太郎さんよォ」

俺はぎりぎりと歯軋りをして相手を鋭い目付きで睨んだ。

元盟友だった甘藷藩の人が何かを思い出した様に口許を歪ませた。


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