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日が傾き、オレンジ色に染まった街中を歩く。

ポツリポツリと明かりを灯し始めた街灯は、まだかろうじて出ている太陽の光を反射している。

店の並ぶ市場に、道を行き交う多くの人。

店内から聞こえる活気ある声と、品定めをしている人々。

会話がそこら中で溢れている程、街はまだ賑わいを見せていた。



「いいねー、この賑やかな感じ!」



隣でハンジがわくわくしたように言った。

彼女の気持ちもよく分かる。

彼女と同様、私もとてもわくわくしていた。

なにせ、街に出たのは本当に久しぶりだった。



「あ、見て見てハンジ! あの店、変な置物いっぱいある!」

「本当だ! よし、ミケに買っていってあげよう」



こうして街を歩くと、世の中は平和だと錯覚してしまう。

それでも、今この時を楽しもうと思い、テンションはだんだんと上がっていった。



「ガキじゃねぇんだ。ギャーギャー騒ぐな」



隣でリヴァイは呆れたように言う。

彼はこの雰囲気に気分が盛り上がったりしないのだろうか。

そんな彼に、まあまあリヴァイ、とハンジが声をかける。



「あなたももっと楽しまないと人生損だよ!」

「いらん世話だな」



明らかにテンションの差があるハンジとリヴァイ。

あまりの差に笑いが込み上げてしまうぐらい、私は気分が高揚しているらしい。



「そうだよリヴァイ、せっかく来てるんだからさぁ…あああハンジ! あの店見て!」

「どれどれ!」



もはやテンションの高い私達に何か言うのを諦めたらしい。

ため息をついて私達の後を歩く彼は、なんだか保護者みたいだった。






しばらくお店を見て歩いていたら、だんだんと私もハンジも落ち着きを取り戻してきた。

そして今、目的の物を買うべく向かっているところだ。

どうやらリヴァイの知っている店があるらしく、行くらしい。


前を歩く二人の会話を耳に入れながら、辺りを見回す。


この辺は洋服や雑貨を売ってる店が多い、とても華々しい通りだった。


元々裕福な家庭ではなかったからお洒落なんてしたことなかったし、訓練兵になってからますますそういった物から遠ざかったため、こういった通りにはあまり来たことがない。


ふと、アクセサリー屋さんに目が留まる。


そういえば、ささやかな女心から開けたピアスホールも、最初に買ったシンプルな物以外はつけていない。


私はきっと、このままお洒落することもなく人生を終えるんだろうな、なんて思っていた時だった。



「でさ、***はどう思う?」



ハンジの問いかけに、視線を前へ戻す。

前にいるハンジとリヴァイはこっちを向き、私の答えを待っていた。



「え……ごめん聞いてなかった。なんだって?」

「今日の飲み会、誰の部屋でやるかって話!」



てっきり、言い出しっぺの私の部屋でやるものと思っていた。

そのため、街に出てくる前に一生懸命掃除したのだ。

私の部屋でいいよ、そう言おうとした矢先だった。

私より早くハンジが口を開く。



「ちなみに私は、リヴァイの部屋はどうかなって思うんだけど」



喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。

ハンジのその言葉に、好奇心が芽生える。



「リヴァイの部屋?」

「そうそう! そういえばちゃんと入ったことなかったなあって思ってさ」

「……うん、いいねそれ! 私もリヴァイの部屋に一票」



結局、好奇心が勝ったことにより、先ほど出そうとした言葉とは別の言葉を発した。

彼の部屋には入ったことがないため、どんな部屋か興味津々だった。

私の意見が二人に届くと、ハンジはこれで決まりだね! と言い、リヴァイはというと……こいつ正気かとでも言いたげな、ものすごくげんなりした表情をしていた。

明らかに不満があるらしい。



「普通ここは言い出したやつの部屋じゃねぇのか」

「私の部屋でもいいけど、リヴァイの部屋の方が確実にきれいだよ」

「掃除はどうした。この前教えただろ」

「ちゃんとしたよ! でもほら、もしリヴァイが気に入らなかったらさ、また掃除からスタートで飲み会できないじゃん」

「……」



そうだそうだ―! とハンジが同意する傍らで、リヴァイは黙り込む。

ちょっと強引だっただろうか。



「……汚すなよ」



長い沈黙の後、一応了承を得られたものの、その規制は厳しいものに感じられた。

飲み会なんて、多少なりとも汚れるに決まっている。

前回の彼の潔癖ぶりから、汚そうものならただじゃ済まないだろう。

これだったら私の部屋の方が伸び伸びできたかな、と思うも、それでもやっぱりリヴァイの部屋はどうなっているのか楽しみで、変更を申し立てることなく二人の後をついていった。













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