[通常モード] [URL送信]


長編番外 星に願いを
「あ、見て見て杏樹!
あれって天の川だよね!」

「…そうなんですか?」

「あ、そうか。杏樹はわからないんだっけ…」

ラリー君が外に出てはしゃいでいる。
それを見て首を傾げていると、そういえばアジトのパソコンでテレビ番組の司会の方が、
今日は七夕でどうのこうの話していた気がする。
七夕が何かとその場でタカさん逹に聞くと、
苦笑いをしながら答えてくれた。

「あっちが織り姫で、あっちが彦星!」

「ラリー君、詳しいですね。」

「え?いや…他の人に教わっただけなんだけどね。」

でも凄いです。
そういうと、小さな少年の可愛らしい頬がほんのりと桜色に染まっていった。
照れくさそうにうつむいている。
その様子を見た後、ふと空を見上げると、
視界には沢山の星達が優しく、けれど力強く光り輝いている。
素敵だな、と見つめていたら、近くで悲鳴にも似た喜びの声が上がった。

「び…びっくりした…。どうかしましたか?」

「流れ星だ!願い事三回流れてる間に言わないと!」

そう言って目を瞑って手を祈る時のように合わせる。
流れ星に祈れば、願い事って叶うんでしょうか?
不思議だな、なんて感じつつも、
私も同様に流れ星がもう一度流れた時に、それを見つめながら心の中で願い事を三回唱えた。

「おい、二人共。外はもう暗い、中に入れ。」

「はい。」

「分かったよ、遊星。」

地下鉄からワザワザ私たちのことを気にして見に来てくれた遊星君の後を、ラリー君が追いかける。
そして、急に歩きを止めて私の方を振り返った。

「ねぇ、杏樹。君は一体何をお願いしたの?
 俺は、遊星がジャックに勝てますようにってお願いしたんだ!」

「私ですか?」

私は、とまで言いかけて、口を噤む。
ラリー君が期待したような眼で此方を見ていたけど、ごまかすように頭を少し荒く撫でた。

「わわわ!?・・・何?」

「ふふ、内緒ですよ。言ったら願いが叶わなくなりそうですから。」

「えぇ〜!?じゃあ俺は願いが叶わないって事!?」

「それはどうか分かりませんけれども。」

「えぇ?!」





(どうか、私の無くなった記憶が早く戻って、皆と幸せに暮らせますように。)

[*前へ]

3/3ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!