小説 告白は来年 遊アキ 甘甘 「よしっ!これで完成だわ!」 正方形の箱には真っ赤なリボンでキレイにラッピングしてあり、リボンにはいっている薔薇の刺繍がなんとも彼女らしい。中身はチョコレートケーキ。台所には甘い匂いが満ちており、普段お菓子などつくらないせいか、朝から始めたというのに辺りはすっかり暗くなっていた。 「遊星…喜んでくれるかしら…」 期待と不安を胸に遊星の元へ急いだ。 ガレージにいくと遊星は冷たいガレージでひとり黙々とDホイールの調整をしていた。 「遊星」 控え目に後ろから声をかける 「アキか どうした?」作業を止め、持っていたスパナを置いてアキの方へ振り返った。 「あのね遊星コレなんだけど…」 ケーキを持つ手が少し震えているのは寒さのせいではないだろう。 「…?」 「遊星これチョコレートケーキなんだけど、、受取ってもらえるかしら?」 突然のプレゼントに一瞬驚いた遊星だったが 「あぁ、ありがとうアキ」 とアキに微笑みかけた。 アキは作った甲斐があった。と安堵し、2人で食べましょうと言おうとした時だった 「…しかし俺は甘い物は苦手なんだ…お菓子はクロウや龍亜が好きだからな…きっと喜ぶと想う。気持ちだけ受取っておく。」 …バチンッ! ガレージに十六夜アキのビンタの乾いた音が響いた。 何が起こったのか理解できていない遊星は瞳に涙をためているアキを見て、自分の発言が彼女を怒らせてしまったのだと気付いた。 「アキ…」 アキはチョコレートケーキを持って逃げていった。 「アキ!!」 急いで追いかけたが遊星の視界にはもうアキの姿はなかった。 走りつかれ町のベンチでひとり、ケーキを膝において十六夜アキは座っていた。 さっきからアキの目の前を通ってゆく幸せそうなカップル達が実に妬ましい。 (やってしまった…) 自分はただ遊星と2人きりでケーキを食べたかっただけなのだ、先ほどビンタしたことに後悔ばかりが募った。 はぁ…と出る溜め息は真っ白だ。 急いできたためコートも羽織っていないため思い出した様に身体が震えだした。 (寒い…) 町の時計を見ればもう今日が終わりそうな時間だった。 どうせ今から戻っても間に合いそうもない。 仕方がないから自分で食べてしまおうと渡しそこねたケーキのリボンを悴んだ指先でとくと、ケーキは走ったせいで形が崩れ酷い状態だった。 ケーキを一口サイズに切って口にはこぼうとした瞬間、腕を何者かに捕まれた。 慌てて横を見ると遊星が自分が口にはこぶはずだったケーキを食べていた。 「なっ…遊星ッ!?」 どうしてここにいるのよっ!っと言うがいなや口にはこんだ物を飲込んでからアキの方をむいた 「アキ…さっきはすまなかったな、ジャックに怒られてしまった…バレンタインは女性が男性に愛を込めてチョコレートを贈る日なんだとな。」 遊星の口から改めて言われると恥ずかしい。 「知らなかったのね…遊星?…さっきはごめんなさい…つい、殴ってしまって」 「いや、こちらこそすまないな。」 まるで遊星の青い瞳に捕らわれているように遊星の真剣な瞳から目がはなせない。 「市販だとおもってたんだが、作ったのか?」 「…ええ…悪かったわね、ぐちゃぐちゃで…でも本当はもっとちゃんとしてたのよ!」 誰かさんが走らせるから!と言おうとした時に 「いや…」 「……?」 「髪の毛、これチョコの香りだろ?」 自分では気が付かなかったが朝から作っているせいかチョコレートの匂いが移ってしまったようだ。 遊星が髪に触れただけで身体中に甘い痺れが走る。 「…甘いの苦手なんでしょう?無理に食べないでもいいわよ…」 「いや…甘さ控えてるみたいだし、俺の好きな味だ…それにここじゃ寒いだろう?戻ってから2人で食べよう。」 そういって遊星は自分の上着を無言でアキに羽織らせた。上着からは大好きな遊星の匂いがした。さっきまで落込んでいたのが嘘のように遊星の言葉で凄く幸せな気分になった。 アキがケーキを閉まって立上がろうとすると、遊星が手を差し伸べてきたのでアキは照れながらも遊星と手を繋いだ 。 歩いている途中、見上げると遊星の耳が少し赤くなっていることに気づいた。 「ねぇ遊星」 「なんだ?」 なにか言いかけたアキだったが時計を見るなり笑みを浮かべながら 「なんでもないわ、来年まで内緒。」 と言って繋いでいた手をぎゅっと握った。 「そうか…来年が楽しみだな」 遊星もアキのしなやかな細い手を離さないように握りかえした。 後書き バレンタインデーに間に合わせようとした結果がコレだよ!(2時間半遅れて的な意味とクオリティ的な意味で。) 書いてて凄く恥ずかしくなったのは言うまでもないよ! コレ知り合いに見られたら確実に恥ずかしくて死ねるレベル。 もしくは気持ちよくなっちゃう。 あ、もちろん後者は冗句ですよ。 人に見られて気持ちよくなる遊星とか王道じゃない? ドSなアキさんも書いてみたいね [*前へ][次へ#] |