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オリキャラ小説
乗るしかない このビッグウェーブに!
2018.1.04 PM4:27:43 音谷 達仁(おとや たつひと)
日本
東京 秋葉原
大脱荘 203号室

普段この部屋は全く音がしない。
何せ仕事に忙しいからな。響き渡る音とすればサーバーの起動音と
キーボードを叩きまくる音くらいのもの。

それ以外に耳に入る音といえば・・・
同居している未来ちゃんの声・・・

何?アンドロイドと同居って言うのかだと?
笑止! 黙れ下郎! 

おまえら、こんな有名な言葉があるだろうが。

あのさー、「アニメはただの絵」なんて言葉には何の意味もないわけよ。当たり前すぎる。
ただの絵って、そりゃ絵だよ。そんなの誰にでもわかるって。
これは言い換えるとね、例えば友達が彼女の写真を見せてくれたとして、
「これはただのインクの集合だ」と言ってるのと同じなわけよ。
もっと言うと、友達の恋人を指差して、「こいつはただのタンパク質だ」と言ってるのと同じなわけよ。
別に間違ってないよ。写真はインクだし、人間はタンパク質だ。でもそれがなんだっての?
インクだから感情を抱くのは間違いだ、タンパク質だから好きになるのは間違いだ、とでも言うの?
それはちょっとバカすぎるね。バカすぎる。「アニメはただの絵」ってのはそういうのと同じなんだよ。
好きになるのは人格としての、存在としての彼女だろうが。物理的構造なんてどうだっていいんだよ。
そんな当たり前のこともわからないわけ?

コピ文スマソwwwwww
だがつまりそういうことだ。

訳が分からんだと!?
ならばいい、知識としての一環とすらできんksどもにはもはや何も言うまい。

まったく話を脱線させるな!
この世の命運に関わる話をまともに聞けんようになったらいよいよ救いようがないぞ!!

でだな。
未来ちゃんは実は我輩がこの場に来てから初めに製作したものだ。一番な。
彼女を上回る傑作はあれから作ったことはない。

もう2年半?くらい経つから。
幼馴染に近いくらいの付き合いでござるよ。

ご主人様に忠誠を尽くすメイドであるが
ドジったところを心優しいご主人様に助けられ、
そこからそして美少女が一目惚れそして美少女が「助けてくれてありがとう…良かったら結婚して下さい!」

なんて展開を期待していたんだがなwww
・・・もういい 皆まで言うな。

そして来たるべき日には世界征服を狙う悪の組織と手を取り合って戦う・・・

凶弾から彼女をかばって「達仁ぉ!」とか言われたかった。
・・・アレ?今まさにその状況なんじゃね?

だが、我輩は結局未来ちゃんを一人で行かせた。
未来ちゃんはそれを望んでいたのか。
一人で行くことを? もはや今となっては確かめる術もないかもしれん。

とにかく、外の様子を見るべきだ。
長らく放心状態になっていたが、目の前にある小さなモニタに我輩はもう1度目を通した。
moonが破壊されたことで微弱な電磁波を発しており、一時的にクリアルは機能を停止してしまっているようだ。
再起動する必要がある。この程度なら動作もないこと。

プログラムの再起動のためのキーを高速で打ちこんでゆく。
ものの2分とかからず完了した。
後はEnterを押せばクリアルは再び浮遊、撮影を開始する。
我輩は勢いよく右手を左に滑らせ、Enterを押しつつ振りかぶろうとした・・・
しかし、ちょうどEnterキーの上に右手が差し掛かったところで手が動かなくなってしまった。

・・・どうする?これから映る映像によっては死刑宣告もありうるわけだが。
だがやらないといけないんだお。
知る権利&義務がある。

入れなければ。スイッチを。
さもなくば我輩は永久に呪縛に蝕まれる日々を送ることになると断言できる。

神経をすり減らしながら生きていくのはごめんだ。
いやちょっと待て・・・
まるで未来ちゃんが負けるのを前提にしているような物言いではないかさっきからwww
オゥフwwwwwwww うぇwwwwwwwwww

我輩としたことが不覚であったwwwwwww
ちょw おまw
最強のヒューマノイド未来ちゃんが負けるはずがないだろ常考www
ナンバー3とナンバー2がやられたことで我輩もしかして焦ってたとかw オゥフw

実戦データは一つもないんだがな。
何せ1度も戦ったことがないから。

いいだろう。最早我輩には迷いはない。
さあ、逝くぞ・・・!

期待、不安、希望、畏怖、焦燥、
様々な思いを胸に・・・いざ、Enter!!!!!

我輩の気分とは裏腹に軽快な1発のキーの音が部屋に響いた。
一瞬でしかない音であるのになぜか我輩には長く感じられた・・・

ほんの少し画面がチラつき、砂嵐が数秒入って90度回転した世界が映し出される。
当然ながらクリアルは地面に落ちていたようだ。
画面の隅の方にはmoonが煙を上げて横たわっている。

我輩がリモコンを操作すると元の角度に戻った。
浮かび上がり、回転させてアパートの方に視界を向ける。
そこにはもうすでにスーツの男と対峙する未来ちゃんの姿があった。

未来ちゃんは階段の上から侵入者2人を見下ろしている。
当然彼らは未来ちゃんを見上げる形になっている。

外は風が吹いているらしく互いの服がなびき、スーツの男は手で帽子を押さえていた。2人とも険しい表情だ。

何やら口を動かしているが例によって聞き取ることができない・・・
こればかりは音声を聞いておきたいものである。

・・・そうだ!
確か去年作った・・・でもどこにやったか・・・
寒冷地仕様の音声送信装置があったのだが。
受信装置はホコリをかぶってそこにあるのだが、いかんせん送信装置はどこにやったか忘れてしまった・・・
受信装置だけでは当然ながら機能はしない。

まあ仕方あるまい・・・
とりあえずは未来ちゃんの激闘をこの目に焼きつけておくとしよう。

モニターの中ではメガネの女がスーツの男の前に出ようとしていた。
しかし、スーツの男はメガネの女を見ようともせず左手を上げ、彼女を制止した。
彼女は素直にその動作に従い、後ろに下がる。

どうやらスーツの男がやるようだ。
またも左手でレイピアを取り出すと、地面に向けて薙ぎ払った。
風圧で雪が舞い飛ぶ。

それを見て未来ちゃんも負けじと背中から日本刀を取り出し、両手で構えた。

両者にらみ合ったまま動きません・・・と実況中継のようなことを言ってみる。
先に動いたのはスーツの男だった。

4、5分にもわたる長い沈黙だった。
きっかけは多分未来ちゃんがほんの半歩くらい動いたと事だと思われる。
実は我輩よそ見していたからよくわからないんだけども・・・

階段の手すりに飛び乗り、未来ちゃんに向かってその上を走ってゆく。
・・・こんな時期手すりなんて凍りついていると思うのだがよく滑らないな。

と、そんなことよりもスーツの男は手すりからそのまま地面にレイピアを突き立てる形で未来ちゃんに向かって飛び上がった。
ギィン!と金属音が玄関のドアの向こうから聞こえてくる。

未来ちゃんは立ったまま横に体をねじり1回転。そのまま立ち位置をずらし
レイピアを足場に突き刺しているスーツの男に対して回転しつつ刀を振り回した。

スーツの男は隙を突かれたにもかかわらず焦る素振りすら見せない。
それどころかしゃがんだままレイピアを振り上げ、
未来ちゃんの持っている刀を弾く。
あんなに細い剣であるのにあんな芸当ができるとは・・・
普通折れるんじゃね?実力なのか、はたまたあのレイピアにタネがあるのか・・・

片腕を振り上げる姿勢になってしまった未来ちゃんは咄嗟にバックステップで距離を取る。
その間にスーツの男はシルクハットを片手で上げながらゆっくり立ち上がっていた。

未来ちゃんは立ち直らせまいとばかりに走って行き刀での突きを繰り出した。
しかしスーツの男は体を後ろに反り、いとも簡単に避けてしまった。

体を反ったままスーツの男は手すりについているトタン状の天井を支えている柱の一つを後ろ手で掴み、
それを軸にその場で飛び蹴りを放った。

刀で防御し、再度刀を振り回す未来ちゃん。
今度はスライディングで滑りぬけるスーツの男。
滑りぬきつつ足元をレイピアで払うが、未来ちゃんは飛び上がりこれを避けた。

すかさず未来ちゃんはスーツの男を追いかけ、
刀を振り上げる。

スーツの男もしゃがんだ姿勢で未来ちゃんの方へと向き直り、
レイピアで未来ちゃんの振り下ろした刀を受け止めた。
互いに競り合っているようだ。

よく折れないな・・・あのレイピア・・・
おかしいだろ常考。

そんなことを考えているうちに未来ちゃんはレイピアを弾き、刀を振り下ろした。
態勢を崩したスーツの男は間一髪で避けたようだ。チッ

これはかなり見どころのある勝負だなそれにしても。
勝負の神が降臨なさっているのか!?
ヤベッ ちょっと飲み物とお菓子取ってくる。

そう思い我輩が冷蔵庫(フリージング)を開けた時だった。
何かCD−ROMのようなものがフリージングの中に入っていることに気が付いた。
手に取って眺めてみる。なんだこれは?
そもそもがなぜこんなところにある?

んー・・・
? いや違うな・・・

!!
そうだ!これは確か音声送信装置ではないか!?
いつだったか・・・確か冷気耐性を試すためにここに入れておいたような・・・
送信機は犠牲になったのだ・・・
動くか?これ。
いかに寒冷地仕様といえど少なくとも7,8カ月はここに入れっぱなしになっていたんだ。
壊れていてもおかしくないだろう。

円状の送信機のちょうど真ん中にあるボタンを押してみる。
お ついた。
機能面も問題なさそうだ。
我輩すげあwwwww

まあいいだろう。せっかくこうして見つかったんだ。
使わずしてなんとする。

我輩は3年ぶりに玄関ドアの前へと赴いた。
ドアについている郵便受けから送信機を外へと投げた。
これでようやく音声が聞けるなw

ロナコーラを持ってPCの前に戻ってくると、
2人はすでにアパートの下に降りていた。
スーツの男はシルクハットを取り何か話しているようだ。

早速受信機を起動しよう。
送信機の有効範囲は半径10mだ。
上手いこと下に降りてくれたようだし踏んづけられたりはしまい。

ノイズに混ざって声が聞こえてくる。首にかけていたヘッドホンを受信機へとつないだ。

「少しは出来るようだな?私のシルクハットに切れ目を入れるとは」

ズームしてよく見ると白いシルクハットの前面に3cmくらいの切れ目が入っている。
おそらくさっき未来ちゃんが刀を振りおろした時についたんだろう。

「あなたがどんなに強くとも・・・達仁様の元へは行かせませんよ!」

「まあそう焦るな・・・」
スーツの男はシルクハットを取り、あさっての方向へと投げた。
と思ったらどうやらメガネの女の方へと投げたようだ。
両手でシルクハットをキャッチしている。

「難易度を上げよう・・・勝利するのはこの私だ」

そう呟くとスーツの男は懐から小型のナイフのようなものを取りだし、レイピアと反対の手、つまり右手に装備した。
何やらギザギザ上の凹凸がある。

コンバットナイフ・・・?我輩はミリオタではない。
ズームしてみるか・・・

うーむ・・・見れば見るほど妙な形状だ。
片方だけかと思いきや、凹凸は刃の両方にについている。
しかしどこかで見たような希ガス。

画像データとして取り込み、編集ソフトで編集・・・もといプログラムして勝手に切り取らせよう。自分でやってるヒマは今はない。

「そんな小細工、私には通用しませんよぅ?」

日本刀を構えなおした未来ちゃんが呟く。

「ふん、ブラフだな。根拠もないことを」

ブ、ブラフ?なんぞそれ?お前は何を言ってるんだ。
こ、ここはグーグル様に頼ろう・・・
全く今しがた奴のナイフの編集と検索を任せたというのに・・・

えーと・・・

ブラフ。bluff。虚勢やハッタリ。カードゲームなどで場を混乱させるために主に使われる。

要は・・・未来ちゃんの言葉が虚言であると言いたいわけか・・・
こんな言い方する奴がいるか?厨房でも言わねーよそんなことw

「ハッタリかどうか・・・身を持って教えてあげるですぅ!」

「フン、面白い・・・来い」

スーツの男は軽く中に放り投げたナイフを手に取りながら言った。

2人の視線の交差――――

そして2人が地面を蹴って前のめりになったのもほぼ同時だった。
あの時のバトルはアニメを具現化したようなものであったよ・・・マジビビった。
はたから見たら通報もんだったわ。

未来ちゃんが日本刀を振り回せば、スーツの男は姿勢を低くする。
スーツの男がレイピアでの突きを繰りだすと未来ちゃんは頭を後ろに引く。

未来ちゃんが日本刀を振り下ろせばスーツの男は体を横に捻る。
スーツの男がレイピアで薙ぎ払えば未来ちゃんは日本刀で弾き返す。

技と技との応酬だな。ガクブル。あの間には入りたくない。
我輩はつい見入ってしまっていた。手に持ってた空のペットボトルをつい床に落としてしまうほど。

響き渡る金属音、雪を踏む音、風切りさく音。

どれくらい見入っていたかわからん。
・・・があの時は最悪だった。

突如タスクバーからついさっき起動させてほったらかしておいた編集ソフトが全画面で表示されたのだ!
当然、録画画面は全く見えなくなった。

ちょw
テラ邪魔スw

画像検索の結果が映し出されていた。
急いで端に寄せ、下から今もなお激闘を繰り広げる2人の様子が映る。

目の端で検索結果を表示する。
奴が持っていた妙な形状のナイフ。
検索結果は世界中から集まっているようだ。
辞書検索、海外の武器ショップ、類似の画像、レイヤーのブログなんてものまであった。

その支離滅裂な検索結果が一様に表示するもの。


ソードブレイカー


なっ・・・!?

その時、未来ちゃんが機嫌良さそうな声を上げていた。

「ふふん♪ やっぱり私には敵わなかったようですね〜♪」
スーツの男は疲弊しているように見える。

・・・・・・

「ここで降参するなら、見逃してあげないこともないですぅ」

「・・・」
スーツの男は何も言わない。

・・・ろ・・・

「いい度胸ですぅ。それなら望み通りにしてあげますよぅ」

・・・めろ・・・

未来ちゃんは日本刀を両手で持ち、
上段の構えへと移った。

・・・やめろ・・・

「やああああああああ!!」

未来ちゃんはそのままスーツの男へと突進していった。

・・・やめろ。

地面を蹴って小さく飛び上がる。

・・・やめろ!

未来ちゃんは勢いよく日本刀を振り下ろす。

・・・やめろおおおおお!!

その時、スーツの男の口元がぐにゃりと歪んだ。
突如、別人のように体を動かし、未来ちゃんの日本刀を受け流した!

違う。

違うんだ。

奴が持っているのは・・・

ソードブレイカー(Sword Breaker)
武器(刀剣)の一種で普通の刃と櫛状の峰をもつ短剣。 敵の剣を峰の凹凸にかませて折ったり、叩き落としたりするのに使う。

我輩が思っていた通り未来ちゃんの日本刀は根元から折られていた。
折れた刃が舞いあがり回転しながら落ちていった・・・

未来ちゃんは突然の事態にあっけにとられている。
咄嗟に折れた刀を捨てようとするがそんな隙をスーツの男は見逃さなかったようだ。

次の瞬間、未来ちゃんの頭には・・・

未来ちゃんの・・・

頭には・・・

――――――――――――――レイピアが

突き―――――――――――――――

スローモーションに見えた
目を見開いたまま足が崩れ落ちる。
頭からは電脳管がショートして電気を発して。
両手はだらしなく重力が働くまま落ち。
そのまま。

そのまま右を下にして。
倒れ…………た。

倒れた?
最強の自走式メカ、未来ちゃんが?

彼女はピクリとも動かない。
なぜ修復装置が機能しない!?

わかっていた。だが認めたくはなかった。
人間イメージで作ったのだからな。当然彼女のメインCPUは頭にある。
それが破損したのだ。もう・・・

スーツの男は未来ちゃんの頭を貫通したレイピアを抜き取ると、腰にしまいこんだ。

「私の勝ちだな。ゲーム・オーバー
久しぶりに楽しめたよ。見事だった」

スーツの男は胸の前で十字架を切り、
アパートへと踵を返した。

奴は画面の端で見切れている。
メガネの女と会話しているのだろう。

だが、会話内容は耳に入ってこない。
クリアルを動かして奴らの動向を確認する気にもならない。

未来ちゃんが・・・
彼女は前にも似たようなこと言ったような気がするが我輩の相棒ともいえる存在であった・・・

もはや我輩を守る者はいない。
この部屋の仕掛けも未来ちゃんを倒した奴らには無意味だろう。

我輩自らがやるしかないのだ・・・
どうする?
どうしよう?
どうすればいい?

こんな時、隣からのアドバイスがあったものだが・・・

頭がうまく働かない。
クッソ・・・

その時だった。もう動けないはずの未来ちゃんがゆっくりと起き上がり始めたのだ!
逆手で折れた刃の先を握りしめ、ふらつく足で必死に体を支える。

!?

未来ちゃんはゆっくりと奴らに歩み寄って行っているようだ。
も、もういいんだ・・・もういいってのに・・・
お前はよく頑張った・・・これ以上はホントに・・・

「ぜったイに・・・」

思いっきり刃を握っているのか手の平の装甲が損傷している。
そこまでして・・・

奴らは気づいていないようだ。マ、マジで行くのか?
そんな思考で何ができる・・・いや煽りとかじゃなくマジレスでな。

すると未来ちゃんは突然動きが速くなり、半ば倒れこむかのような勢いで、奴らに向かって走り出した!

「うああ嗚呼あゝア!!」

言語機能までも破壊しかけているのか、声にならない奇声が響き渡る。
階段を上ろうとしていた2人もようやく気が付いたようだ。

即座にメガネの女が氷の鞭のようなものを作り出し、
未来ちゃんを縛り上げた。

「こん奈・・・mのぉ・・・!」

未来ちゃんは物ともせず力づくで突き進んでいく。
メガネの女はあまりの力に引っ張られ、氷に足を滑らせてしまったらしく、うつぶせに転倒した。

いいぞ もっとやれ。
しかし現実はそう甘くない・・・

「往生際の悪い奴だ」

再びスーツの男がレイピアを抜いている。

神様ー! どうか未来ちゃんにご慈悲をおおおおおおお!
無駄だった。

折れた刃をやみくもに振り回す未来ちゃんは、
RPGだと2つ目の洞窟あたりにいるザコモンスターのようなもの(我ながらアホなことを言っていると実感した)

あっという間にレイピアの連続切りを食らい、未来ちゃんは再び地に伏してしまった・・・

「た・・・・・ひ・・・・・・」

今度こそ、彼女は動かなくなった。
もう指の一本でさえ、動作しない。

無茶しやがって・・・敬礼・・・!
クッ・・・目から汗が・・・

だが未来ちゃんを倒したからといって奴らは入って来られないはずだ。
あのドアは我輩でなければ開けられない。
破壊することも不可能だ。

そう思って・・・
そう思っていた。
できるわけがない。

光が射した。めったに日光が射さないこの部屋に。
もう日も落ちかけている。夕暮れの光が。

逆光で奴の姿は影しか見えない。
だが、あの男ではない。誰だ?
歩いてくる。入ってくる。

どうして?そんなわけがあるか!
あのドアは・・・
我輩の指紋、掌紋、声紋、網膜など数十もの認識によってのみ開かれるというのに・・・

ドアが閉められた。体の線から察するにメガネの女か?
逆光が消え、元の暗い部屋に目が慣れてきた。
我輩の目の前にいるのは・・・

我・・・輩・・・?

「うぐっ! なんという美青年が目の前にいいいいいい!!
目がぁ!目がぁぁ〜〜!
眩しすぎる!
眼球が焼けるようだ・・・!」

「だめだこいつ・・・はやくなんとかしないと・・・」

悶える我輩を見て入ってきたもう一人の我輩は言い放った。
微妙な沈黙・・・

「・・・なぜ我輩がいる」

悶えてごまかしてみようとしたものの、自分が目の前にいるのはとても奇妙だ。
我輩は我輩じゃないのか?
まさかドッペルゲンガ―!?

・・・ドッペルゲンガーに出会った者は確か・・・

死。

我輩は咄嗟に懐からジャックナイフとスパナ型のスタンガンを取り出していた。

「なんだ・・・何なんだ貴様達わふぁ!?」

口が回らん。情けない限りだ。

「フッ 我輩か?我輩は・・・異端なる才人 音谷 達仁!
この世に生を受けた時から全ては予知されていたことだ・・・」

「ふ・・・ふざけるな!音谷達仁は我輩だ!
断じて貴様などではない!」

「ククク・・・我輩は貴様だ。そして貴様が我輩でもある」

「な・・・何を言っている・・・?」

「こういうことだ。よく見ておくんだなw」

目の前にいる我輩の頭が・・・
な、なんと言えばいい?
ちらつき始めた・・・?

ブレながら、少しずつ変化していく。
その変化した先にあったのは。

もう何度もカメラ越しに見た。
あの。

ス−ツの男だった。


なん・・・だと・・・?

「こうして実際に顔を合わせるのは初めてだろう。
お前は私たちのことを監視してたようだがな」

「き、貴様・・・何者だ・・・!?
名を名乗れ・・・!」

「おっとそうか。自己紹介が遅れたな。
私はA。よろしく」

スーツの男はシルクハットを取り、頭を下げた。
そのシルクハットに未来ちゃんが付けたはずの傷はなかった。

「そっちの貴様は・・・?」

我輩はメガネの女をナイフで指して言った。
部屋の入口に立って今まで一度も開かなかった口が開く。

「アテナです。以後お見知りおきを」

左手の人差し指でメガネを上げながら彼女は言った。

「何が目的だ・・・貴様ら・・・
わ、わわ我輩に・・・何の用だというのだ・・・」

2人に交互にナイフを向ける。
後ずさりしすぎて足元の何かにけっつまづき、
我輩は無残にも尻もちをつく。

自分でもわかるくらいに震えていた。

「少し落ち着け。我々は別にお前を殺そうなどとは考えていない」

「だ、黙れ!我輩の数々の英知の結晶・・・!未来ちゃんをも殺した貴様らを・・・我輩は決して許さんぞ!
深淵なる闇へと堕とし、絶望の輪廻へ送ってやるわ!」

我輩は尻もちをついたまま、ナイフをAと名乗る男へ向かって投げた。
・・・が無駄だった。

アテナとかいう女が素早く動き、ナイフは一瞬で凍らされ、床に転がっていた。

「クソッ!!」

我輩は素早く立ち上がりポケットに忍ばせてあったヴォルテクスキャノンを取り出すが
既に我輩の目の前にはレイピアが突きつけられていた。

「うっ・・・!」

「いいか。我々がここまで来てお前の玩具と
遊んだ理由は一つだ」

「・・・?」

「私ははjoin playersという組織のボス。そのアテナは幹部だ」

「そ、それがなんだというのだ!我輩はこの地に生を受け・・・」

「お前にはこのアテナと同じ幹部、Lucky7の一員となってもらう」

「(゚Д゚)ハァ?」

我輩は呆れたような、ビビったようなそんな声を出していた。

「貴様ら・・・我輩の質問にまだ答えていない
目的はなんなのだ・・・」

「お前が話を遮ったのではないか」

「・・・」

そ、そういえばそうだったような・・・
どうも度重なる混乱で記憶が破綻仕掛けている。

「まあいい。我々の、いや私の目的は一つ」

「・・・」

「融合すること、だ」

「どういう・・・ことだ?」

「お前はその先を知る必要はない」

レイピアの先端が我輩に近づく。
顔が引きつった。もはや後ろは壁だ頭を下げることもできない。

「お前のハッキング、クラッキング能力。
及び生物学、工学、機械学、薬学。
どこでそんな知識を得たのか知らないがお前の能力は最早人間国宝ものだ」

「フ、フン。当然だ。なんたって我輩は・・・」

「NHKにハッキングを仕掛けたのもお前だろう?」

突然の的を射た答えに我輩は息を呑んだ。

「バ、バカな・・・なぜ我輩だと・・・」

もちろんあのハッキングで失敗した要素は何一つない。
どういうことだ・・・!?

「少しタネがあるがな。それは教えられん。
さあ、そろそろ返事を聞かせてもらおう」

「嫌だと言ったら?」

黙り込んだAがアテナに目配せしたかと思うと、
我輩のすぐ隣にあったDVD−BOXが凍りついた。

「わあああああああああああ!!!
僕姉のDVD−BOXβ版がああああああああああああ!!??!?!?」

我輩はひっくり返ってわめきかけたが、Aに制止される。

「そういうことだ。このアパートは丈夫だがさすがにご自慢のコレクションはそうではあるまい」

「わ、わかった!わかったからやめさせろ!」

どっと寿命が縮んだ希ガス。
おのれなんてことを・・・

「もう1度返事を聞こう」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・いいだろう」

我輩に選択肢はなかった。

「どんな理由だろうと、我輩の元にたどり着いた者は今まで誰ひとりとしていない。
その点は評価に値する」

「フッ それは光栄だ」

「だが、言っておくが我輩は断じて働きはせんぞ」

「問題ない。お前のやりたいようにやるだけでいい。
ただし、余計なことをしようものならば・・・」

アテナが再び腕を伸ばそうとしている。

「ああああああああああああああああああああ!!!
わかってるから!それだけはやめろっつーのに!!」

「では、お前にはこれからjoin playersもとい・・・JPSとしての名を名乗ってもらおう」

「誰得」

「とにかく、好きに名乗ればいい」

「ふーむ・・・むむむ・・・
ならば、ヘヴンリィ・マーダーでどうだ!?」

「いいだろう。いまからお前の名はヘブ・・・」

「いや・・・FAIL。悲哀を背負い、憎しみを胸に戦う・・・」

「では、FAILで・・・」

「しかし、切裂竜牙というのも捨てがたい」

「・・・」

「バレット・オブ・デス・・・」

「忌」

「黒の存亡者・・・」

確かかれこれ10分は悩んでいたな。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・もういいだろう」

Aは露骨に不機嫌そうな顔を浮かべた。
まあ当然といえば当然か。

「お前はネット界に君臨している神だ。ネットでもいいだろう?」

「なにをぬかす。そのような名では我輩の力″は抑え込めん」

「・・・・・・・・・・・・・・ネットで決定にしろ。ちょうど本名とも合っている語幹だ」

本名と?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・うおっ マジだったw
オゥフwwwww 初めて気が付いたわwwwwwwww

「ハーッハッハッハ!!いいだろう!その名気に入った!」

「ならば今度こそ決定だな」

「了承」

フッフッフ・・・
ククク・・・ハーッハッハッハッハァ!

殺伐を、絶望を、困惑を、現実に具現せし者!
我が名は・・・異端なる才人! ネット様だ!!

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あきゅろす。
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