○
─席を間違えた。
果たしてミツはそんな言い訳を信用してくれるのか‥。
一瞬不安に思ったが、ソラの苦しい言い訳を気にとめる様子のないミツに、納得してくれたのだと内心ホッとした。
暫くミツを見つめていると、机の中からプリントを手に取り鞄に直す。
一瞬チラッと見えたプリントは、来週が提出日である大事な書類。
これを取りにわざわざ教室へ戻ってきた事が分かった。
「それ、忘れたんだ。」
「…うん。」
「…凄いな。俺だったらメンドくせぇし、普通に放置するかも。」
そう言ってソラは自然に笑いながら話す。
するとミツの口元が緩んだように見え、はっきりとは分からないが、少しクスリと笑った気がした。
「…なぁ、…座って、少しだけ話さねぇ?」
「‥……えっ、」
「………嫌?」
「…っ嫌じゃない!」
ソラの問い掛けに、普段よりも大きい声で返事を返してくれたミツ。
そんな様子に驚きながらも、ソラは嬉しくて仕方がなかった。
ダメ元で聞いた問い掛けに、まさかこんなに力強い返事を返してくれるなんて…
ソラにしてみればかなり予想外だった。
嬉しくて嬉しくて…また笑みが零れる。
緩む口元を隠す余裕など今のソラにはなかった。
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