○
昔から。
ソラの周りには、気付けば人が集まっていた。
いわゆる愛されキャラというやつで、自分から行動した事があまりなく、流れに任せて過ごしてきた。
だからなのか、ミツに話し掛けるという簡単な行動が、ソラにとっては意外にも難しいものだったのかもしれない─。
放課後の教室で一人思いに耽る中、視線を感じた。
何気なく扉の方へ視線を向けて見れば、こちらを見つめたまま停止している生徒…
ミツがそこに居た。
「……えッ!?あ、ゴメン!!!」
ガタンという音が教室に響く。
─吃驚した…。
まさか帰宅している筈のミツが居るなど、誰が思うだろうか‥。
動揺して勢い良く立ち上がった拍子に倒れてしまった椅子。
そんなモノなどお構いなしで、ソラはミツに話し掛けた。
「…教室、入らねぇの?」
戸惑いながらもそう言うと、教室に入ってくるミツ。
どんどん近付いてくるミツに、ソラの緊張感が高まった。
「あ、れ?…あの、席……。」
「…っ、」
心底不思議そうな声が聞こえ、そう言えば…とハッとする。
ソラは今までミツの席に座っていた事を、すっかり忘れていた。
「ごめん、…俺、席間違えたかも‥。」
「……そっか。」
そこで倒してしまった椅子の事にも気がつき、急いで元に戻す。
そして何事もなかったかのように装い、自分の席に着席した。
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