○
──次はいつ話し掛けよう。
考えるだけでワクワクして、仲良くなりたい、もっと話してみたい、と何度も思う程だった。
けれども、いざ話し掛けようとなると緊張するもので、なかなか話しかけられない。
「ここ、何て書くか教えて?」
それでもソラは笑顔を浮かべ、思い切って授業中に話しかけてみた。
勿論、とっておきの理由をつけて…
「えっと…ごめん、先生の話聞いてなかったんだよな…。」
「……こ、こは…えっと…」
突然話し掛けられたミツは、戸惑いがちにゆっくりと答えてくれる。
心なしか、ミツの声が震えている気もするが、ちっとも気にならなかった。
何故ならソラ自身も、少し緊張していたからだ。
「ありがとう。」
たった数秒の出来事。
何てことないやり取りなのに、ソラは笑顔を浮かべるだけで精一杯で…
そして自分が上手く笑えているのか、とても不安だった。
次の日、せっかく近い席になれたのだから、今日も頑張って話し掛けよう、と通学中の電車で思考を巡らせていた。
しかし、いざミツを目の前にするとやけに緊張してしまい「明日にしよう」と行動に移せなかった。
それがずっと続き、毎日毎日「明日にしよう」と思っては先延ばしにして、結局はまるで社交辞令のように挨拶をするぐらいしか出来ていなかった。
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