ヒバリとヒナギク
それは二人が高校二年生の頃の話。
沢田空には気になる人が居た。
いつも一人で本を読んでいる彼…名前を乃木密と言う。
ソラはその乃木密と言うクラスメートの事がやけに気になり、無意識のうちに彼を観察するようになっていた。
何故。
なんの接点もない彼が気になるのか…
フと疑問に思った事もあり、授業中などの時間にそんな事を延々と考えていた事もある。
それもあくまで無意識であり、謎にもソラの意識にはミツの存在がいつもあった。
そうこうして考えた結果、接点が無さ過ぎるから逆に気になるのだとソラは思い至った。
不思議と話してみたいと感じていたのである。
一見大人しそうなのに綺麗に染められた髪の毛や、毎日手に持っている本。
彼は一体何を考えて生きているのか…
とても興味があり、ミツに近付き彼を知りたいという感情が、ソラの心にいつもあった。
そして何時しか、ミツを意識の中に入れる事が当たり前になっている事に気がついたソラ。
『無意識』に気付いた事によって、それは『自らの意識』へと変化した。
そんなソラに訪れた転機。
ある日の席替えで、ソラはミツの真ん前の席になった。
「乃木、これからよろしく!」
席が凄く近い。
こんなに近ければ、彼と話しやすいではないか。
ミツと話す切っ掛けが出来た事が嬉しくて、ソラは満面の笑顔を浮かべる。
そんなソラに比べミツは、俯きがちに「うん」と一言しか返してくれなかった。
あまりにも会話が少ない。
それだけでもその時のソラには十分過ぎるぐらいで、ソラは凄く嬉しかった。
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